データを起点に、企業変革・社会創造をスタートする~塩野義製薬 × Deloitte Digital座談会~

  • Digital Business Modeling
2022/2/2

「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を作り出す」というビジョンを掲げる塩野義製薬。ビジョンを実現し、さらなる成長を達成するための新中期経営計画「STS2030」やこれからのヘルスケアがどのように変わっていくのか――塩野義製薬株式会社 上席執行役員 医薬事業本部長 畑中 一浩氏からのメッセージと、医薬事業本部 営業企画室 デジタル企画グループ長 大谷 和也氏、医薬事業本部 営業推進室 営業部推進グループ長 山崎 哲弘氏、DX推進本部 データサイエンス部 データエンジニアリンググループ長 渡邉 慶氏、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ライフサイエンス&ヘルスケア 執行役員 Deloitte Digital 西上 慎司、アナリティクス&コグニティブ 執行役員 大平 匡洋による座談会の様子をお届けします。

Executive Message

畑中 一浩氏|Mr. Kazuhiro Hatanaka

塩野義製薬株式会社
上席執行役員 医薬事業本部長

「塩野義製薬では既存事業である医薬品を中心とした病気を治療することだけではなく、未病・予防や予後といった病気のトータルマネジメントができる企業への変革を進めています。今後進めていくHaaS(ヘルスケア・アズ・ア・サービス)という概念だけではなく、既存の事業においても、社内や顧客の情報を戦略にタイムリーに生かすということは非常に重要だと考えています。そのようなデータドリブン経営を実現するためにCDM(Central Data Management)体制や営業DMP(Data Management Platform)を構築し社内に存在する膨大なデータを利活用可能な状況を作ってきました。医薬事業本部では、営業に関わるデータを営業DMPに一元管理し効率的なデータ分析を通じて、医師を中心とした顧客への情報提供の質を向上させ、自社製品の浸透を通じて社会に貢献していきます。今後もMRによる情報提供が中心となることは変わらないでしょうから、データを解釈し効果的にMR活動へ利用していくためにはMRのデータリテラシーの向上は必須になります。また日々の活動データの報告の質を上げていかなければ、分析から得られる示唆も限定的なものになるため、データは経営資源であるという考えの重要性を社内で広めていく、すなわちデータに関する意識変革も重要になると考えています。」

データを起点に、企業変革・社会創造をスタートする~塩野義製薬 × Deloitte Digital座談会~

西上:本日はお忙しい中、ありがとうございます。まずは、自己紹介からお願いします。

渡邉:2021年の7月からDX推進本部 データサイエンス部のデータエンジニアリンググループに所属し、全社のデータ活用基盤の整備を進めています。それまでは開発本部で臨床試験のデータマネジメントなどを行ってきました。

山崎:2020年4月より国内営業7営業部に対して国内予算の達成や将来を見据えた営業体制の構築を推進しています。元々はMR出身で、その他製品戦略部でマーケティングや経営戦略本部・経理財務部ファイナンス企画グループ長として、全社の予算・KPIマネジメントや中期経営計画策定など多岐に亘る仕事を経験してきました。

大谷:元々はMR出身ですが、他本部にてマーケティングやポートフォリオなど、さまざまな業務に携わってきました。現在は、営業企画室のデジタル企画グループに所属しています。営業DMP(Data Management Platform)に携わるほか、分析したデータを活用した業務変革なども検討しています。また、さまざまなデジタルチャネルを使った情報提供戦略の立案にも携わっています。

(左から)塩野義製薬株式会社 医薬事業本部 営業企画室 デジタル企画グループ長 大谷 和也氏、DX推進本部 データサイエンス部 データエンジニアリンググループ長 渡邉 慶氏、医薬事業本部 営業推進室 営業部推進グループ長 山崎 哲弘氏

最近の塩野義製薬の状況について

西上:新型コロナウイルス感染症の治療薬を開発するなど、塩野義製薬の露出が増えていますね。市場の期待も大きいなか、今、社内はどのような状況になっていますか。

渡邉:研究開発の部門は、日々工夫をしながらたくさんの業務をこなしています。私も7月までは臨床試験のデータマネジメントの取り回しをしていましたが、猫の手も借りたいといった状況でした。協力会社とも連携しながら取り組んでいます。

山崎:お客様からの質問も増えています。答えられる範囲は限られているのですが、それだけ期待が高いということを肌で感じています。そういった意味では、期待をいただく中で責任感を持って仕事をさせていただけており、本当にありがたいと思っています。

大きく変化する未来のヘルスケアについて

西上:塩野義製薬は「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を作り出す」といったビジョンを掲げていますね。そのビジョンを実現し、さらなる成長を達成するための戦略として、新中期経営計画「STS2030」を発表されました。そこでお聞きしたいのは、「これからのヘルスケアがどう変わっていくのか」ということです。

最近では未来のヘルスケアは「Anytime, Anywhereのキーワードが使われるように、Digital/Technologyの進化によって生活者や患者にとって、医療やヘルスケアが身近な存在になる」というようにヘルスケアの民主化が実現するという人もいます。

さらに、「ウェルビーイング」も注目を集めています。これまでヘルスケア業界は「病気が治る」「病気にならない」というように「病気」を中心に捉え考えてきましたが、肉体的・心理的・社会的・感情的・精神的・経済的に「幸せ」な状態に軸足を置いて考え直そうと言った動きが活発化しています。そういった未来のヘルスケアについて、ご意見を伺えますでしょうか。

西上 慎司 | Shinji Nishigami

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ライフサイエンス&ヘルスケア 執行役員 Deloitte Digital

渡邉:私がいる部署は「DX」を推進していることもあり、「デジタル」を活用した取り組みをしています。2021年7月に新設されたDX推進本部にはデジタルインテリジェンス部(DI部)、データサイエンス部(DS部)、IT&デジタルソリューション部(DXIT部)があり、デジタルヘルスの企画部門であるデジタルインテリジェンス部(DI部)が中心となり、社内コミュニケーションツールで「未来のヘルスケア」や「ウェルビーイング」に関する話題を掲載することで新たな取り組みを考えたり、ディスカッションを促したりしています。またそこで考えられたヘルスケアサービスのデータ活用基盤の構築や分析をDS部で実施し、サービス実現に必要なIT・セキュリティーインフラ構築をDXIT部が担っており、本部内で連携を進めています。また、全社のデータ/IT基盤の構築運用をベースに社内DXも推進しております。

大谷:私の所属する医薬事業本部でも、地域医療の未来を考えることや地域課題解決に向けたMR研修を実施しています。そういった意味では、現場のMRも「未来のヘルスケア」や「ウェルビーイング」について考えるきっかけは増えていると感じています。

西上:塩野義製薬は、STS2030の中でHaaS(ヘルスケア・アズ・ア・サービス)企業になると発表されています。投薬して病気やケガを治すといった従来の取り組みではなく、ヘルスケア領域全体を包括した新しいヘルスケアを模索しているといった印象を受けます。ほかの製薬会社よりも一歩進んだニュースバリューのある取り組みをされていますが、そういったこともDX推進本部が主導してやられているのでしょうか。

渡邉:実は、社内では「先進的な取り組みをしている」と意識していません。学生さんや外部の方とお話しすると「塩野義製薬は、ヘルスケアに注力している製薬業界でも特殊な位置づけだから興味を持っている」と言われることが多いですね。そういった声を聞き、改めて自覚しました。

西上:シオノギカナデさんというバーチャル社員を採用し、YouTubeチャンネルでは歌も歌っていますね。その曲を聞いてみましたが、歌詞を見ていろいろ考えさせられました。こういった取り組みはどうやって実現しているのでしょうか。

大谷:塩野義製薬は従業員の自発的な取り組みを支援する体制が整っています。2019年から「やりたいねん!」というプロジェクトが開始され、社員の「こういうことをやりたい」という声から事業を始めるという活動をしています。シオノギカナデもその1つ。下水中の新型コロナウイルスのRNA量を測定し、その地域の新型コロナウイルスのまん延状況を調査する「下水疫学調査サービス」も、「やりたいねん!」から生まれたサービスです。

西上:新しいことをやりたいと言っても、進めていくことが困難な企業が散見されます。そういうことができる塩野義製薬は素晴らしいですね。

渡邉:ユニークな取り組みという点では、大阪大学と「医療データ科学共同研究講座」も行っています。この取り組みは、レギュラトリーサイエンスへの造詣が深く、データマネジメント業務経験者を有する大阪大学と革新的な新薬の提供を目指している塩野義製薬とが、それぞれの強みを活かしながら共同でリアルワールドデータの活用方法について検討するというものです。こちらはHaaS含め、RWD活用を広く検討するデータサイエンス部と開発業務への応用を検討する医薬開発本部の解析センターが取り組んでいます。

製薬企業が医療実態を示す貴重な情報源となるリアルワールドデータに触れる機会は、あまりありません。この貴重なデータを利活用することで、新薬開発時の臨床試験計画の最適化やエビデンスの構築、安全性監視の高度化など、効率的な薬物評価を実現する可能性があると考えています。

渡邉 慶氏 | Mr. Kei Watanabe

塩野義製薬株式会社 DX推進本部 データサイエンス部
データエンジニアリンググループ長

西上:製薬会社は病気のことに詳しいが、患者のことを知ることは難しい。医療従事者は、病院にいる間の患者のことは知っていても、病院の外にいる患者や生活者のことを深く知ることが難しい。これが顕在ニーズのみならず潜在ニーズを見つけにくくする原因なのではないかといった議論もよく目にします。「医療データ科学共同研究講座」の取り組みは、そういった議論にも一石を投じた事例と理解しました。

大平:製薬会社も医療従事者も専門分野に特化しているため、専門領域以外は見えにくいということだと思います。私もライフサイエンスに携わっている時から「患者ベースで取り組みをしたい」というお話を伺ってきましたが、なかなか実現できませんでした。

データの利活用を進める塩野義製薬

西上:ヘルスケアの未来を語る際に「データ」の利活用は大きなテーマになります。塩野義製薬では「医療データ科学共同研究講座」でデータを利活用されていますね。社内ではどうやって利活用されていますか?

渡邉:社内のデータ活用は、最近始まったばかりです。
これまでは、会計システムや工数管理システムなどの業務システムがサイロ化してしまっていたこともあり、業務領域を跨いだデータ活用が難しい状況でした。

ここ数年、外部から多くの人材を獲得してきた中で「これだけデータがあるのになぜ活用しないのか」という指摘もあり、2019年頃から「社内のデータをもっと活用していこう」という動きが活発になってきました。

各システム内に散在しているデータを集めてCDM(Central Data Management)体制を構築し、可視化することで会計や工数といったデータをダッシュボードで一覧できるようになり、各部署のマネージャーが意思決定や進捗管理に使えるようになっています。

大谷:一方で、営業では「先輩たちの背中を見て育つ」という文化が根強く、過去の営業プロセスや経験、知見などをデータとして蓄積・活用するようになるにはかなりの時間と手間を要しました。

「SFA」(Sales Force Automation)や「CRM」(Customer Relationship Management)などの営業支援システムには多くのデータがあるのに、それらを一括して分析しようとすると膨大な時間がかかり、現実的ではありませんでした。

MR以外でも医師とコミュニケーションする役割の人は多いのですが、それらの活動やデータなどもきちんと管理していかないと「いい営業活動」ができません。そこで、顧客軸でデータを蓄積・分析できる「営業DMP」(Data Management Platform)を構築することになりました。データを一元管理したいという点では、CDMの取り組みの一部分ということができるでしょう。これら複数のチャネルから得られる情報を蓄積しタイムリーに分析することにより、顧客が欲しい情報を欲しいタイミング、欲しいチャネルで届けられるようになり、それが自社製品を多くの患者さんにお役立ていただく近道になると考えています。

大谷 和也氏 | Mr. Kazuya Otani

塩野義製薬株式会社 医薬事業本部 営業企画室
デジタル企画グループ長

大平:ここ数年、ライフサイエンス企業がデータに着目し、新しい取り組みをしていこうという動きが増えています。我々コンサルタントにご依頼いただく内容も、以前は業務を設計したり組織を設計し直したりするといった仕事が多かったのですが、最近は「データ」に軸足が移ったと感じています。製薬企業の場合、特に研究開発や営業マーケティング領域などでデータ分析が活発化していると感じます。

山崎:CDMやDMPといった取り組みで重要なのは、リアルワールドでの活動や様々な事象を定義づけして全てデータにしてまとめていくことだと感じています。そういったデータを蓄積し、さまざまな軸で分析することにより、これまで見えなかった連関などが見えてきますからね。

実効性の高い分析結果を得るには、正確なデータが不可欠ですが、そこで大変苦労しています。人によって入力データにばらつきがあったりすると、正確に分析できなくなります。そのためMRの活動を具体的に定義し、必要な入力ができるような工夫をしています。

大谷:現在は、MRがドクターとどういった会話をしたのか、どういったリアクションだったのかといったデータを蓄積しています。顧客に対する定量的な活動データのみならず定性的なデータも蓄積しています。また、ドクターがどういった状況にあるのかを可視化することで、我々の薬剤をどれくらい処方しようと考えているのかといった意向も確認できるようになっています。

山崎:そこで、リアルとデジタルという軸と、双方向コミュニケーション、単方向コミュニケーションの軸で4象限に分け、どういった活動を組み合わせたときに顧客ステージが上がりやすいのかといったことを分析しようとしています。データを蓄積して分析することで、どういった情報を届けるとどういった結果になるのかということが、ステージ毎にある程度分かってくるはず。すでに膨大なデータが集まってきており、少しずつ傾向が見えてきている状態です。

山崎 哲弘氏|Mr. Tetsuhiro Yamasaki

塩野義製薬株式会社 医薬事業本部 営業推進室
営業部推進グループ長

大谷:一方で課題もあります。いままでデータを有効に活用できていなかった組織であるため、データをハンドリングできる人材が少ない。そのあたりはDX推進本部にサポートいただき、データサイエンスの知識やデータを触るノウハウなどを組織として吸収し成長できる取り組みを進めています。

またデータが経営資源になるという意識も希薄です。自分たちが報告しているデータがどのように活用されるのかを理解し、それらを活用することが自分たちのメリットにも繋がるのだということを実感してもらえれば、こういった課題は一気にクリアできると考えています。

MRには双方向のコミュニケーション能力が求められる

西上:最近、オムニチャネルという言葉が良く使われますが、さまざまな情報チャネルで顧客に情報を届けようといったコンセプトを実践しています。そういった中で、未来のMRはどういった活動になっていくのでしょうか。

大谷:過去のMRは認知度を高めるため、製品名をリマインドする活動が多くありました。今後は、そういった一方通行のコミュニケーションは、デジタルチャネルに置き換わりMRがする仕事ではなくなっていくと思います。これからは、コンサルテーションも含めた双方向のコミュニケーションが求められるようになるはずです。そうすると、顧客に必要とされる存在になっていくと思います。

ドクターの中には全てデジタルで情報を提供してほしいといったニーズも一定数はあると思いますが、人を介して情報を提供して欲しい、MRと情報交換したいというニーズも一定以上いるということが分かっています。特に開業医の先生方の場合、そういった傾向が顕著です。

山崎:MRがドクターと共にディスカッションやコンサルティングを行い、よりよい課題解決に結びつけられるようになる。そのためのサポートをデジタルで行うことができると考えています。そのためには、デジタルやデータの利活用が必須です。そういった意味では、MRは情報をアウトプットするこれまでの機能から、顧客課題やニーズをデータとして収集する機能、また得られたデータを自分自身の顧客に合わせて解釈し有効活用する。それができれば今後も顧客から必要とされる重要な存在であり続けると考えています。

西上:なるほど。たしかにMRはメッセンジャーではなく、必要な情報を取得する「キャプチャー」の機能も併せ持つ存在になっていくのでしょうね。医療現場のことを一番知っているMRが、潜在・顕在ニーズをR&Dにフィードバックする循環型の研究開発モデルみたいなものも、これから作られていくかもしれません。

大谷:数年前までは、R&Dにフィードバックしても製品化まで5年、10年と長い時間がかかり、循環型研究開発モデルを構築するは困難な状況でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、現場のニーズがすぐに反映されて研究開発を行う事例が生まれました。

現場の情報を収集し、R&Dにフィードバックするということが、これまで以上に価値があると見なされる状況になる可能性があると思っています。

山崎:製品改良などにもMRの情報が役立つと思っています。実際の現場から聞こえてくる医療従事者や患者さんの声をいち早くフィードバックし、迅速にサイクルを回すことで、改善の速度も向上していきます。そういったことにもMRが十分活躍できると思います。

西上:製薬業界でマーケットインの考え方が浸透しづらいのは、研究・開発などに時間がかかる部分が大きいからなのかもしれません。その状況が大きく変わってきた今、患者中心の取り組みもできるようになるかもしれませんね。

山崎:そのためにはMR自身も成長していく必要があるでしょう。短期でフィードバックできる環境になりつつありますが、やはり3年先、5年先を見据えてディスカッションしていかなければならない。また、ドクターからヒアリングした話をそのまま伝言するのではなく、自分なりに解釈し、必要に応じて本社や研究開発部門に挙げるといったことを考えなければいけない。そうでなければ組織は成長しないし、業務も回らないと思います。

大平:今回、塩野義製薬が構築したDMPのプロジェクトは、とても実効性が高いと感じました。顧客ステージを定義し、MRから得た情報をデータとして蓄積したほか、オウンドメディアへのアクセス履歴などを取得し、新しいチャレンジをしながらも実用性の高いデータ分析基盤になっていると思います。

その一方で、AIの適応などはまだこれからといった印象を受けました。現状、AIは業務に適応することが多いため、業務効率化といったテーマで語られることが多いのですが、AIやデータを利活用することで社会的な利益に貢献していくこともできます。そういった高い視点を持って取り組まれると、データの利活用の幅が更に広がっていき、塩野義製薬が目指す未来のヘルスケアの実現に近づいていくのではないかと感じました。

大平 匡洋 | Masahiro Ohira

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
アナリティクス&コグニティブ 執行役員

山崎:我々は製薬会社なので「病気」を中心に捉えてしまいがちですが、「人」を中心に考えると、人生の中で病気になっている時間はほんの一部。だからこそ、病気になっていない時間にも「薬」以外の方法を含めて、どう幸福感を提供できるのかといったことにも取り組んでいきたいですね。そのためには、全社のデータを連携し、利活用する必要があると思います。

たとえば、ウエアラブルデバイスから取得した健常時のデータを利活用することで疾患発症の傾向を把握することができるかもしれませんし、認知行動療法などと薬を組み合わせることで、その人に合った最適な治療パッケージが提案できる可能性が広がっていくと思います。

渡邉:私も健康管理に何かしら貢献できる会社になっていくといいなと思います。治療だけではなく、他のステージでも貢献していきたいですね。最近はワクチン事業なども開始しており、親戚や知人からも期待されていることを肌で感じています。社会に貢献できていることはとても嬉しいですし、実感も湧いている。だからこそ、より多くの人たちに貢献できるサービスやヘルスケアの提供ができる会社になっていきたいですね。

塩野義製薬はこれまでずっと創薬を中心にビジネスを展開していたため、デジタルの活用やデジタルを起点とした新しいヘルスケアの関わり方という部分で課題があります。これまでやったことがない領域なので、社内にケイパビリティがない部分もまだまだ多いというのが正直なところです。

Deloitte Digitalのようなさまざまな業界での知見は、当社にとってもとても有益ですし、我々と伴走していただける心強い存在だと感じています。未来のヘルスケアを私たちと一緒に作り上げて頂ければと思います。

大平:お話しをお聞きし、皆さんが感じている課題や希望は、あらゆる製薬会社が持っている課題や希望と同じだと感じました。そういった夢を実現できるようなご支援をしていきたいですね。

たとえば、製薬業界と他業界のデータをつなげることで社会貢献できることはあると思っています。業界の垣根を低くすることで、これまでできなかった未来を切り拓くことができるでしょう。

――貴重なお話をありがとうございました。

PROFESSIONAL

  • 大平 匡洋

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 アナリティクス & コグニティブ 執行役員

    外資系コンサルティング、外資系医療機器メーカーを経て現職。製薬、医療機器メーカーを中心に経営戦略立案、業務改革、ITシステム導入まで幅広いコンサルティング業務に従事。現在は全ての業種に対してデータ分析コンサルティングを提供する組織であるアナリティクス&コグニティブをリード

  • 西上 慎司

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ライフサイエンス & ヘルスケア 執行役員

    民間シンクタンクを経て現職。製薬、医療機器メーカーを中心に、マネジメント変革、グローバル組織設計、デジタル戦略・組織構築などのプロジェクトを手掛ける。ヘルスケアの未来像を描いた「データドリヴン・ライフブリリアンス」の監修など、講演・寄稿多数。

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