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コーポレートガバナンスにおけるデロイト トーマツ グループの取り組み

組織運営に必要な機能

ガバナンスの構成要素でもある「組織運営に必要な機能」を整理し、各機能について具体的に説明していくことでデロイト トーマツ グループのコーポレート・ガバナンスへの取り組みについて紹介します。

デロイト トーマツ グループのコーポレート・ガバナンスへの取り組み

 デロイト トーマツ グループではコーポレート・ガバナンスの構成要素であり「組織運営に必要な機能」を以下の4つに整理している。

①能動的なリスクマネジメント体制
②有効なエスカレーションプロセス
③人材育成と評価
④迅速かつ網羅的な開示体制

ここでは、各機能について具体的に説明するとともに、デロイト トーマツ グループのGRCフレームワークについても紹介している。

 
能動的なリスクマネジメント体制

 いつの時代も企業を取り巻く環境は変化しているが、近時はその変化のスピードの高まりとそれが与える影響の範囲が拡大している。このため、環境変化への対応力を高めることこそがリスクマネジメントのポイントであるといえる。リスクという言葉がマイナス面だけを彷彿させるようであれば、「能動的な経営システム」と言い換えてもよい。

 環境変化への対応力を2つに分けて考えると、例えば攻めと守りのバランスが考えられる。国内マーケットに依存するだけでは企業成長が容易ではない中で、国内外での新規事業や海外マーケットへの進出を検討することは自然な行動である。全く新しい事業の創出は容易でなく、たとえ創出できたとしても競合企業に勝ち抜くのは容易ではない。また、海外マーケットにおいて既存事業の延長線で行うビジネスには、既存の競合企業だけでなく、新たな競合相手も存在する。さらに、日本企業にとって未開の地でのビジネスは、営業活動をするためのネットワーク、実行するための人材などの経営資源が不足しており、製造原価の削減を目的とした製造機能の移転とは異なる次元での難しさが生じる。新しい製品・サービスを、新しいマーケットで、異なる価値観を有する新しい顧客に販売するには必要なリスクをとっていくことが不可欠だが、新たなチャレンジに成功し、成長していくためには、過去とは比較にならないほどのリスクを取っていかなければならない可能性がある。つまり、「攻め」の姿勢が必須となる。

 一方で、事業部主導での海外進出は、事業部間のノウハウの共有や守りの体制整備などの点でシナジーが働きにくく、結果としてコストが上昇するだけではなく、攻めのスピードを削ぐ可能性もある。コーポレート部門によるサポートについても、そもそも海外進出時にコーポレート部門が能動的に検討に参加していない場合、現地の情報を把握していないだけではなく、把握するための手法すら確立していないこともある。加えて、進出した後のモニタリング体制についても事業部に依存した属人的な対応となり、特に買収した企業については、モニタリング体制の運用以前の問題として、グループとしてのコントロール方針(グループ管理規程等)すら提示できていないことも少なくない。

 各社各様のコントロールを許容することは、事業部でのコントロールやコーポレート部門よるモニタリングの難易度を上げ、その有効性を下げるだけでなく、コストの上昇(効率性の低下)をもたらす。一般に海外企業と日本企業の利益率の差の1つの要因として売上高に対する一般管理費の水準にあるといわれることもうなずける。

 一定規模を超えた企業では、業務の有効性・効率性のいずれについても、コントロールの方針を明確にし、属人的ではなく組織的に運営することが不可欠である。これは久しく、人によるコントロール(属人的なコントロール)を中心としてきた日本企業にとっては、分かっていながらも実行できなかった課題の解決を要求されるものである。(抜粋)

PDFでは以下のポイントを含んだ全文を解説しているので確認いただきたい。

・有効なエスカレーションプロセス
・人材育成と評価
・迅速かつ網羅的な開示体制
・Governance、Risk & Compliance(GRC)フレームワークによる対応

( PDF, 7.5MB )
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