Posted: 15 Apr. 2021 3 min. read

グレート・リセット時代に誤魔化しが効かなくなる“サーキュラーエコノミーごっこ”

「サーキュラーエコノミー“ごっこ”」とは

ダボス会議で掲げられた「グレート・リセット」には多くの意味が込められているが、特に注目すべき点は、ステークホルダー資本主義への移行に深く関わるテーマとして、サステナビリティの重要性を明示したことだろう。今回のコロナ禍の一要因でもある大量生産・大量消費を前提とするリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの転換は菅総理大臣が掲げる脱炭素との親和性も高いこともあり、急激に進んでいる。

そのような流れを受けて、2021年は、これまでの企業による「サーキュラーエコノミー“ごっこ”」を、投資家の目から見ても成長戦略の観点から見ても「グレート・リセット」しないといけないタイミングであるように見える。

「サーキュラーエコノミー“ごっこ”」の最たる例は、今まで行ってきた取り組みを発信するに際して、SDGの12番目のロゴと並べ「サーキュラーエコノミーにも寄与します」と伝えることである。(申し訳程度に、他のSDGsとの関連性に言及するケースも同様だ。)また、長期ビジョンとしてマテリアリティ(解くべき社会課題)の一つにサーキュラーエコノミーの実現を掲げるものの、実は社名を落とすと競合他社が行っているものと代わり映えが無いレベルの取り組みであれば、それも“ごっこ”であろう。具体の事業でも、いわゆるリサイクルやシェアリングの一本足打法に依存していたり、自社の取り組みのみに閉じていたりするケースも、一般的に“ごっこ”に該当する可能性がある。(もちろん、現時点では着手したばかりなので、“ごっこ”を脱する成長戦略があるケースも多いはずだ。)



サーキュラーエコノミーによる競争優位性

そもそも、元来ユニリーバ、ウォルマート等のCSV先進企業はサステナビリティをコストではなく投資として位置づけ、一足早い市場形成や、競争の締め出しを通じたシェア拡大等、差別化を通じて競争優位性を高めることに成功してきた。(後述するLOOPにもその兆しが見られる。)

また、ロンドン・ビジネス・スクールの研究によると、世界の4,000社のデータを分析した結果、大多数の業界では2012年から2019年の8年間にESG施策の類似化が進んだという。ハーバード・ビジネス・スクールのジョージ・セラフェイム教授は、これを「各社が横並びの取り組みをする傾向が進み、(マイケル・ポーター教授が『戦略の本質』でも取り上げた)差別化に失敗している」と評している。

これらを先述の状況に当てはめて考えると、「サーキュラーエコノミー“ごっこ”」の「グレート・リセット」の必要性は、いわゆる「SDGsウォッシング」として非難されるリスクの回避にあるのではなく、“ごっこ”から脱却できなければ差別化に失敗し、競合に出し抜かれるであろうことへの警鐘として受け止めるべきなのではないだろうか。

つまり、ここ数年で盛り上がったサーキュラーエコノミーも、人並みレベルで取り組むだけでは競争優位につながらない時代になると言えるだろう。
 

事実、デロイトがグローバルで支援し、筆者をはじめとしたモニター デロイト もアジアの事務局を務めたSitra(フィンランドの半官半民ファンド)の“39 inspiring solutions from around the globe(39の世界を変えるサーキュラーエコノミーソリューション)”等をはじめとしたサーキュラーエコノミーの先進企業を見てみると、まさに“脱ごっこ”だと捉えることができる。表彰された企業群のビジネスモデルをみると、「サーキュラーエコノミーのみならず複数の社会課題を解く(即ちは、複数の顧客課題を解くことにより収益源を複数確保しシナジーも効かせる)」、「デジタルのソリューションとしてUI/UXを徹底的に磨き上げること、でユーザーの粘着度を高めGAFAやBATHに対抗する経済圏を形成する」、「今までの世界観に対するアンチテーゼを明瞭とした大義(パーパス)を掲げることで、ビジネスパートナーや従業員を熱狂させる」、「市場創造やシェア拡大のためのルールシェイピングを仕掛ける」、「単純なシェアリングのようなものではなく“Deep Tech”の研究開発に投資する」等、複数の工夫を組み合わせられている。他社による模倣可能性を下げることで、独自の圧倒的な競争優位を構築する狙いが込められていることは明らかだ。

 

LOOPの事例が示すこと

例えば、日本に上陸したLOOPの事例を見ても、従来からルールシェイピングを仕掛けることが得意なサステナビリティ先進企業が川上から川下まで名を連ね、容器回収のタイミングで消費者接点を確保することで顧客を囲い込み、ブランディング等を鑑みても打倒Amazonを目指している戦略が透けて見える。(これに対抗する形か、Amazonもサーキュラーエコノミーに力を入れているように思える。)

従来から先進的だと言われているユニリーバ、ウォルマート、パタゴニア、IKEA等のサーキュラーエコノミー先進企業も、過去数年、場合によっては10年以上前から進めてきた競争優位性の確保のための種まきが、徐々に点と点が結びつくことで、大きく花開き始めている。もし、今行っている事業が“ごっこ”と評される可能性を少しでも感じるようであれば、自らの活動を「グレート・リセット」と好機と捉えなおし、改めてどのように競争優位性を築きながら、リニアエコノミーから脱却するか真剣に考えるべきタイミングかもしれない。

 

≫ カーボンニュートラル時代に大きく変わるサーキュラーエコノミーの形

D-NNOVATIONスペシャルサイト

社会課題の解決に向けたプロフェッショナルたちの物語や視点を発信しています

プロフェッショナル

加藤 彰/Akira Kato

加藤 彰/Akira Kato

デロイト トーマツ グループ マネジャー

モニター デロイトに所属し、国内外の企業をクライアントとした全社改革、中期経営計画立案、Go-to-Market Strategy 等の経営戦略案件に加え、サーキュラーエコノミー、ジェンダー、人権等の社会課題(SDGs)を起点とした長期戦略、グローバルの新規事業戦略立案・実行支援を多数経験。Monitor Deloitte Japan Circular Economy Strategy Co-Leader。『SDGsが問いかける経営の未来』(日本経済出版社)の共著者。九州大学等でSDGs研究/教育にも従事。   関連するサービス: モニター デロイト(ナレッジ・サービス一覧はこちら)