Posted: 09 Apr. 2021 3 min. read

第19回:新時代に向けてリセット

シリーズ:DX時代のサイバー対策

連載ではこれからの企業経営におけるサイバーセキュリティーの重要性について技術的な視点にとどまらず、政治、経済、社会的な観点から説明してきた。最終回はセキュリティーの今後を考察する。

 

「グレート・リセット」。これは2021年のダボス会議のテーマである。新型コロナウイルス禍を乗り越え、より公正で持続可能かつレジリエンスのある未来を作るため、経済・社会システムの基盤を緊急に構築し、ポストコロナのニューノーマルを見据えて、あらゆる側面で世界を創り直すこと、つまり「グレート・リセット」が必要と提唱している。

ニューノーマルとして考えられることは多数ある。政治的には米中の二極化構造はより鮮明化し、サイバーセキュリティー関連の規制はより厳しくなるだろう。社会的には衛生、プライバシー、働き方、移動などに関する考え方が変わる。

それらの大きな変化を支えるのが、デジタル技術の進展だ。オンラインでの会合や非接触式の決済など、あらゆる分野・業界でデジタル化が一段と加速する。WEFも「グレート・リセット」の方向の一つとして、「第四次産業革命のイノベーションを活用した上で、公共の利益の課題に取り組むこと」としている。

結果として、世界の課題を解決するためにデジタル技術の活用が進み、新しい市場が次々と生まれてくる。デジタル化・DXをリードできる企業が、その新市場を獲得できるようになる。

ポストコロナ時代ではデジタル技術は今以上に社会に必要不可欠なものになり、その分サイバーセキュリティーの重要性は今までと違う次元まで高まることが推察される。それが、サイバーセキュリティーにおける「グレート・リセット」の一つの方向性になると考えられる。

日本経済の「グレート・リセット」においては、サイバーセキュリティーに対する考え方を根底から変革する必要がある。企業経営では、「守りから攻めと守りへ」「ITアジェンダから経営アジェンダへ」「コストから投資へ」「個社の取り組みからエコシステム全体の取り組みへ」などが、サイバーセキュリティーを「グレート・リセット」するうえでの基本的な考え方となる。サイバーセキュリティーを企業競争力の向上の手段、経営の重要課題として捉える時代が来ている。

連載からこのヒントを見つけてほしい。そして新時代に向けたサイバーセキュリティーの在り方についての議論が深まることを期待する。

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本稿は2021年1月21日に日経産業新聞に掲載された「戦略フォーサイト:DX時代のサイバー対策(20)新時代に向けてリセット」を一部改訂したものです。

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