Posted: 27 Jan. 2023 5 min. read

若手女性メンバーが取り組む産学連携の教育活動

デロイト トーマツ グループの教育支援事例

デロイト トーマツ グループでは、2018年から都内にある田園調布雙葉学園の高校3年生を対象にした選択授業「プレゼンテーション実習」のサポートを行っています。これは、教育・スキル開発・機会創出の3分野にまたがったデロイト トーマツのグローバルな取り組み「WorldClass」の一環となる教育支援活動で、プロジェクトには同校の出身者をはじめとしたデロイト トーマツの若手女性メンバーが多数参加しています。

2022年度は三菱地所に参画いただき、同社の地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」の併設カフェ「KITASANDO Kissa」のメニュー開発や販促企画を実施。実際に期間限定販売されたほか、最終的にはその売上分析も行い、企画から実行まで一環したPBL(Project Based Learning)を行っています。

きっかけは“面白いことがやりたい”

──本プロジェクトのこれまでの経緯について、全体を統括するDeloitte Digital担当の原さんから簡単にお話しいただけますか。

:デロイト トーマツ グループでは、学生がより深く考え、表現し、世界を切り拓いていけるよう教育支援に取り組んでおり、このプロジェクトもその活動の一環として行っています。ただ、4年前の発足当初は「WorldClass」や「Well-being」といった要素は正直あまり意識しておらず、田園調布雙葉学園の小林先生と「一緒に何か面白いことがやりたいね」という想いでスタートしました。
実際に活動してみると、高校生たちにメリットがあるのはもちろんのこと、授業を行う立場である私たちにとっても大きな意味を持つことが分かりました。Z世代のリアルな消費行動や価値観に触れることで多くの気付きを得ることができ、またそこには仕事や私生活のモチベーションを高めていく効果があったのです。まさにWin-Winな活動であり、今では非常にデロイト トーマツらしい良い取り組みだと実感するようになりました。

メンターとして授業以外のアドバイスも

左から岡本未玲、大坪万恵、リードの原裕之、越智英、加藤安奈
左から岡本未玲、大坪万恵、リードの原裕之、越智英、加藤安奈

──ここからは実際に授業を担当されたみなさんに伺います。まず、プロジェクトはどのように進められたのでしょうか?

越智:4月の授業開始前にまずはどこの企業とどんなテーマで授業を行うかの検討から始まり、メンバー全員で授業全体のカリキュラムを設計しています。各回で使用する資料もメンバー同士で連携を取りながら毎回作成しています。特に私はグループのブランドマーケティングチームに在籍しているので、初回で3C・4P、カスタマージャーニーなどのフレームワークに関する授業を行いました。

大坪:私はカフェ事業とはそもそもどういうものなのか、おしゃれで楽しいだけでなく原価や利益などをどう捉えるべきか、お伝えしました。ここでは普段のプロジェクトワークで身につけたマーケティングの知識が役に立ちました。高校生たちが主体性を持って参加できるよう、ちょっとしたクイズを出したりディスカッションパートを挟んで工夫しました。

岡本:授業では生徒たちがいくつかのグループに分かれ、ディスカッションやワークに取り組んでいきます。各グループに私たちも参加し、彼女たちの悩みや疑問を聞いて一緒に解決していくのがメンターとしての役割です。グループには三菱地所さんからもメンターとして参加いただいたので、生徒たちと三菱地所さんとの架け橋になれるよう、適宜「ここは三菱地所さんに聞いてみよう」などと声をかけていました。

加藤:授業はリアル開催が4割程度、残り6割がリモートでの開催でした。リアルな授業では同じ空気を共有することができるのでとてもやりやすいのですが、リモート授業では生徒たちの反応や熱量が把握しづらく、最初は戸惑いもありました。ただ、回を重ねるごとに慣れていって、リモート授業に対する一定のノウハウを得ることができたのではないかと感じています。今後は地方の学校への横展開もできればと思っています。

──越智さんと岡本さんは田園調布雙葉学園の卒業生でもあるわけですが、OGとしてプロジェクトに参加してみていかがでしたか。

越智:この授業を担当している田園調布雙葉学園の小林先生には在学中とてもお世話になり、先生の情報の授業を受けたり、出場したロボットコンテストではたくさん指導していただきました。卒業して10年経った時にこの取り組みを知り、こうした形で母校に戻ってこれたことがとても嬉しかったです。

学校の後輩である岡本さんとは他の社内イベントで偶然再会して、同じ会社で働いていたことを知りました。このプロジェクトの話をしたところすぐ参画してくれました。OG同士で母校のために活動ができるなんて願ってもないことでしたし、小林先生や母校に少しは恩返しができたかなと思うと感慨深かったです。

岡本:生徒たちとは授業の合間や休み時間に会話をすることも多く、「今って文化祭に向けてこんなことをやっている時期だよね」「あの部活ってここが大変だよね」といった懐かしい話に花を咲かせていました。中には進路やビジネスなどに関する真面目な相談もあり、今の高校生が感じているリアルな不安や悩みにも触れることができました。
私が学生だった頃には、社会人になったOGと会話できる機会はあまり無かったので、生徒たちにとって良い学びや経験になっていたら嬉しいなと感じます。

 

今回のプロジェクトで生徒が考案し、販売されたフード・ドリンクメニュー
今回のプロジェクトで生徒が考案し、販売されたフード・ドリンクメニュー

プロジェクトでは得られない感覚がモチベーションに

──なぜこのプロジェクトに参画しようと思ったのですか?

加藤:私は高校生の頃、オーストラリアに留学していました。海外の授業は日本と違い、レクチャースタイルよりもディスカッションスタイルが主流です。出されたテーマに対してチームで答えを探していく中で、課題や目的への意識醸成やチームメンバーとの協働を自然に経験することができるので、社会人として本当の意味で役立つスキルが身についていく実感がありました。このプロジェクトは上司から紹介されて知ったのですが、まさに自分が学生時代にした経験を日本でも得られるような取り組みだと感じました。だからこそ私自身も参加することで、高校生たちにインタラクティブな経験を届けるサポートがしたいと思いました。

大坪:私は所属するユニットの会議でこのプロジェクトが紹介されているのを見て興味を持ち、参加を決意しました。通っていた中学校が田園調布雙葉学園に近く親近感を持っていたというのもあるのですが、何より私自身も女子校出身で、当時の自分ができなかったような経験を今の学生たちにしてほしいという想いがあったので参画しました。

──このプロジェクトを通して、普段の業務や生活への影響はありましたか。

越智:卒業生として生徒と同じ目線で考えたり様々なことを共有しつつ、同時に一社会人として生徒の探究をサポートする立場ですが、高校生が思い描くリアルな未来像や、10代の学生たちが持つキラキラした熱意に間近で触れることで、「私ももっと頑張ろう」というモチベーションにつながり、毎回刺激をもらっています。
私はデロイト トーマツで広報業務を担当していますが、所属企業と母校に関する情報発信を行うのは不思議な気がしながら、いつも以上に気持ちが入ってしまいます。

大坪:私たちがたくさんの刺激をもらったのと同じように、幼稚園から高校まで一貫校で長い期間を同じメンバーで過ごす生徒たちにとっても、学外の社会とつながる機会は良い経験なのではと思います。
授業を通して学生視点ではなく一般世間の視点で物事を考える機会も沢山ありました。例えば、授業の中で丸の内のカフェメニューの価格を設定する課題があったのですが、彼女たちのお小遣いだと相場300円ぐらいを想像していたんです。丸の内に位置するカフェの相場はもっと高いとお伝えしたところ金銭感覚の違いにとても驚いたようで、普段のカフェを見る視点も変わったと話していました。
そういった意味では、私たちデロイト トーマツのメンバーにとっても、田園調布雙葉学園の学生たちにとっても、もちろん三菱地所のみなさんにとっても、大きな括りではWell-beingにつながっている活動なのかもしれません。

自主性を育む活動としてさらなる発展を

──この経験を踏まえ、今後挑戦したいことや目指すものがあれば教えてください。

加藤:まずは来年度以降も是非このプロジェクトに参加していきたいですね。私は2021年度から参加していますが、授業の内容は毎年アップデートを続けています。前年度の気づきや反省点を活かしながら、このプロジェクトをもっと大きく、三者にとってより有意義な活動になるよう育てていけたら良いなと思います。
また、デロイト トーマツでは他にも教育支援プロジェクトがいくつか立ち上がってきています。今回の活動から得たノウハウを活かせる部分もあると思うので、そちらにも積極的に参加していきたいと考えています。

岡本:私もこのプロジェクトへは今後も継続的に参加していきたいなと思っています。来年度以降、どんな企業とどんなコラボレーションをして、生徒たちにどんな体験やスキルを届けるのか。メンバー全員でよく話し合いながら決めていきたいですね。
私は(田園調布雙葉学園の)OGですが、大切な母校と卒業後も関わりを持てるスキームがあるとは正直思っていませんでした。滅多にある機会ではないと思うので、たとえ働く場所や立場が変わったとしてもこのつながりは無くさず大切にしていきたいですね。

大坪:今年度はカフェのメニュー開発がテーマということもあって、私自身、普段プロジェクトワークで関わっている分野とは全く異なる領域への挑戦でした。プロジェクト以外での社外との関わりは刺激や学びが多く、その重要性をあらためて実感します。
だからこそ、今後は自分のプロジェクトだけにすべての時間を割くのではなく、他のプロジェクトにかかわる時間も持てるようにしていきたいです。社外や専門領域外とのつながりを持つことも、自分自身のステップアップのために大切なのだと考えるようになりました。

 最終発表は新東京ビルにあるDeloitte Tohmatsu Innovation Parkで行われた

最終発表は新東京ビルにあるDeloitte Tohmatsu Innovation Parkで行われた

──最後に、みなさんの話を聞いてプロジェクト統括者の原さんから感想とこれからの抱負などをお願いします。

:この活動はボランタリーなので、プロジェクトで忙しい時は無理をせず、他の仲間に頼ってよい自由度の高い取り組みです。拘束力が無いことが大きな特徴ですが、プロジェクトの後半になると、みんなが自主的に自分の役割を果たしてくれるようになり、自然と授業が回っていくようになりました。このプロジェクトにはこうした主体性を育て、普段の業務や生活の中でポジティブな作用を与える力があると信じています。これはデロイト トーマツの理念や風土にも通ずるものであり、グループの強みにもつながる取り組みだと思うので、今以上に広く、深く、展開していけると良いなと思っています。

デロイト トーマツ グループのWell-being(ウェルビーイング)