産学連携の教育活動をリードする3者が語る“想い” |Our Well-being Blog|Deloitte Japan ブックマークが追加されました
田園調布雙葉学園の高校3年生を対象にした選択授業「プレゼンテーション実習」をテーマに、今回はこの産学連携プロジェクトを先頭に立ってリードしているデロイト トーマツ グループの担当者に、同学園と三菱地所の担当者とともにプロジェクトのきっかけや、そこに込める想いなどを語ってもらいました。
──田園調布雙葉学園で実践している「プレゼンテーション実習」というのは、一般的に高校で行われる授業とどのような違いがあるのでしょうか。
小林:やはり学校外の人と一緒に社会活動に参加できるというのが一番の違いですね。学内ではどうしても生徒同士での活動が中心なので、自分と同じ視野でしか物事を考えられないという傾向が強くなりますが、今回のような社会人とのコラボレーションでは、そうはいきません。お店の新メニューを考える時にも、「こんなのいい感じじゃない?」という感覚的なものだけでなく、「じゃあ原価率はどれぐらいだろう」という現実的な部分まで本気で落とし込まないといけなくなるわけです。
この実習プログラムでは、こうした経験を通して社会の仕組みを身をもって体験できるのが一番の強みです。
(左から)
谷沢 直紀 三菱地所株式会社TOKYO TORCH事業部 企画ユニット ユニットリーダー
2012年よりTOKYO TORCH(東京駅前常盤橋プロジェクト)を担当。常盤橋タワーやTOKYO TORCH Parkの企画・開業実務・運営、アナザー・ジャパンプロジェクト等を担当。
小林 潤一郎 田園調布雙葉学園 中学高等学校情報科主任/事務局次長
システムコンサルタントを経て2001年より現職。生徒が自ら考え、表現していくワークショップ形式の授業を効果的なICTツールを用い展開している。
原 裕之 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社/Deloitte Digital ディレクター
外資系コンサルティング会社を経て現職。デジタルを起点とし業界の枠を超えた新規事業創出プロジェクトや、DX(デジタルトランスフォーメーション)、D2C(EC)案件を数多くリード。
──過去5年にわたってデロイト トーマツは田園調布雙葉学園の高校3年生を対象にした選択授業「プレゼンテーション実習」のサポートを行っていますが、最初のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
小林:当校では、もともと外部組織と連携した取り組みを多数行っていました。ある時、たまたまデロイト トーマツさんのパートナーの方とお話しする機会があり、その時に外部連携の話をしたところ、「そういう取り組みだったら是非一緒にやりたい」と深く共感してくれ、そこからずっとお付き合いが続いています。
原:私自身もとても楽しみながらコラボレーションさせてもらっています。私の参画当初は自分を含め2名で授業を担当していたのですが、「是非やってみたい」と声を上げてくるメンバーがどんどん増えていき、今では若手メンバーが大勢参加してくれています。生徒に近い目線でのアドバイスができる若手メンバーがいるほうが、よりインタラクティブで活発なコミュニケーションができ、生徒と本気で向き合うことができていると実感しています。
小林:単に考えて終わりではなく、実際に意見を述べ、行動し、体験することで“本気度を上げる”というのがプレゼンテーション実習のコンセプトです。外部組織であるデロイト トーマツさんや三菱地所さんがこのコンセプトを理解し共感した上で協力してくださったのは、非常にありがたかったです。
──今回、三菱地所がこの産学連携プロジェクトに参画された理由や想いなどについてお聞かせください。
谷沢:私は東京駅日本橋口前で整備を進めている「TOKYO TORCH(トウキョウトーチ)」街区のプロジェクトを担当しているのですが、これは2027年度に完成すると日本一の高さとなる約390メートルのTorch Towerを中心とした長期に亘る街づくりです。このプロジェクトの一環として、これからの街の担い手となる若い人々との様々な交流事業を展開しており、その中で今回の産学連携プロジェクトのお話をデロイト トーマツさんからお聞きしたのが最初のきっかけでした。その内容を聞いて、“将来にわたって発展していく街をどのようにつくっていくのか”という私たちのテーマとも合致するものと感じ、参画させてもらうことにしました。
原:谷沢さんとは最初にお話しした時から意気投合し、ほぼ即決でプロジェクトへの参画を決めていただきました。外部組織との連携プロジェクトは、最初のうちは担当者同士も一定の距離感がある中でスタートし、段々と距離が近づいていくというのが多いのですが、谷沢さんの場合は「面白いですね!ならばこういうことができますよ」とすぐにアイデア出しまでしていただけたので、距離が近づく速度が非常に速く、これはきっとワンチームで新しいことができるなと直感しました。それまでは学期毎に別企業にご協力いただいており、三菱地所さんにも2021年の2学期に “TOKYO TORCHの新しいビルを拠点に海外や地方へどのように情報発信していけば、東京駅もしくは丸の内周辺が活性化するか”というテーマでこのプロジェクトをご一緒していただきました。ただ企画段階で終わらせずもっと実行まで落とし込んだ授業にできないかと考え、2022年はこれまでとは方法を変えて通年の長期プロジェクトにし、商品開発のところまで行うことができました。2年連続でこの産学連携プロジェクトに参画していただいたのは三菱地所さんが初めてですし、是非もう一度ご一緒できれば良いなと心から感じています。
2022年5月にはDeloitte Digital Weekにもデジタルネイティブ世代教育と企業の役目、をテーマに登壇
──今回のコラボレーションを振り返ってみてどのような感想をお持ちでしょうか。
谷沢:田園調布雙葉学園の生徒たちが優秀なのもあるかもしれませんが、高校3年生でも既に考える力は十分に身についているのだということがよく分かりました。私は、地方産品の仕入れ・調達からプロモーション、店舗運営、接客販売といった経営にかかわる全てを一気通貫で大学生たちが手掛ける「アナザージャパン」という取り組みも担当しているのですが、その大学生たちと比較しても、ビジネスを実践する上での思考力に遜色ないと感じています。
プロジェクトの進め方については、三者間で事前に内容をすり合わせた上で生徒たちへ展開していくアプローチを基本方針としていました。この際、デロイト トーマツさんがスケジュールやねらいをしっかりと定めてくれたので、役割分担や授業の進行も非常にスムーズでした。
原:あくまで授業の一貫ではありますが、内容はビジネスとしてしっかり成立するものにしたいという思いがあったので、毎回の授業の目的や最終的な成果にはとてもこだわりました。企画して終わり、ではなく、実際にお客さんへ届けるところまでを経験してもらいたかったのです。
小林: 販売後も、売って終わり、ではなく、売上額や販売数を分析するフェーズが用意されていたのも良かったですよね。商品を注文したお客様がQRコードでアンケートに答えられる仕組みをデロイト トーマツさんが作ってくれたのも非常に効果的で、定量的なデータと定性的なデータ、2つの側面から詳細な分析を行うことができました。
原:そうですね。予想していた顧客層には買ってもらえたのかなど、2種類のデータを使って検証することで、企画内容と実績を比較しながら実際のビジネスシーンさながらの振り返りを行えたのは非常に有意義でした。
──これからこのプロジェクトをどのように展開していきたいと考えていますか。
原:小林先生ともよく話しているのですが、少人数によるプロジェクトベースでの探究授業(プレゼンテーション実習)の“型”はある程度完成したというのが共通見解です。多人数の授業になっても品質を落とすわけにはいかないので、今後はデジタルを活用しつつ新しい仕掛けを作っていきたいと考えています。
谷沢:今以上に連携の輪を広げることで、より多くの仲間をつくっていけると良いですよね。とても意義のある取り組みなので是非これからも一緒に続けていきたいですし、まだまだテーマが広がる余地も大きいので、私自身も楽しみながらその可能性を感じていきたいです。
小林:そうですね。人数だけでなく、生徒のやる気度も大きなポイントとなってくるので、そこを踏まえて最終的な判断をするつもりです。
今は、物事をあまり深く考えなくても生きていける時代だと感じています。ただ見たり聞いたりするだけでは何事も他人事で終わってしまいがちですが、そうではなく、生徒たちにはなるべくいろんなことを自分事にしてほしいという想いがあります。そのためにも、しっかりと自分で考えて表現し、実際に行動できる人間を育てる環境づくりをこれからも続けていきたいです。