INTERVIEW
DT弁護士法人 パートナー
伊奈 弘員
現在の仕事内容について教えてください。
間接部門のアウトソース、リーガルマネージメントコンサルティング(LMC)に加え、金融機関向けの法務サービス全般、また最近は金融機関からの紹介に応じ事業承継にまつわる業務も頻繁に行っています。
弁護士になってからの歩み、入社経緯を教えてください。
私がDT弁護士法人に入社したのは2019年です。
それまでは大手外資系法律事務所に約13年間在籍していました。
弁護士法人の活躍の場は、主として何かが発生した時です。企業で何か法律上でのお困りごとが起きた際に、相談に来られます。
そこでしっかり対応することが弁護士の役割でもありますが、これだとどうしても受け身になりがちなので、能動的に動ける弁護士になりたいと考えました。
これまでの経験を活かし、クライアントが法律上での問題に直面する前から伴走し、課題を見つけ、解決策を提示・支援できるのではないかと考え、会計事務所が母体であるDT弁護士法人へ入社しました。
やはりこれまで所属してきた伝統的な法律事務所とは異なり、自身の選択は間違っていなかったと思っています。
DT弁護士法人の強みを教えてください。
DT弁護士法人の強みは、グループ一体でクライアントと向き合えることだと思います。
例えば、他のデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどの調査。以下、「DD」)と分断されがちな法務DDも一体で対応できます。
調査内容には種類があり、組織や財務活動の調査をするビジネスDD、財務内容などからリスクを把握する財務DD、定款や登記事項などの法的なものをチェックする法務DDなどがあります。
財務と法務のDDは異なる点はあるものの、簿外債務・偶発責務の発見という共通の目的が存在するため、売り手企業に開示を要求する資料が重複することがあります。
そのため本来連携していくことが望ましいのですが、財務DDの会計士チームと、法務DDの弁護士チームが同じグループで業務を推進することはまだまだ多くはありません。
結果として、財務DDチームと法務DDチームが異なる見解を示した時、対象の企業経営層側が判断をせざるを得ない場合があります。
もちろん、最終決定は企業の経営層ですが、デロイト トーマツ グループではあらゆる可能性について財務と法務のチームが一体で検討を重ね、練られた案を提示できます。
これは、グループ内で話し合える環境があるからでしょう。
法人が異なるとどうしても遠慮が出てしまい、相談を積み重ねていくことは難しく、そうなると財務と法務の2つから、それぞれの視点を中心とした案が出てきてしまうこともあり、最終的にクライアントを悩ませてしまう懸念が生じます。
ですが同じグループで対応できれば、例えばビジネスDDで企業買収をした後、どのような方向で進めていこうと考えているのか分かります。
それにより法務も同じ視点で見ていくことが可能となりますが、異なる法人などでプロジェクトが推進されると、情報提供や管理はすべてクライアント側が個別実施する必要があり、負担増の可能性も出てきます。
法人の垣根をまたぐことが多いものが、グループの中で完結できる。それにより、例えば財務がある契約の解釈について判断に悩んだ場合、私たち法務側に気軽に聞けたりする。こうした効果がDT弁護士法人の強みです。
今後の展望について伺えますか?
個人的には、家族のこともあり、老人介護問題、女性の雇用創出や、子育て問題などに強い関心があります。自分の働く中で、そのような社会課題の解決に寄与できる機会があれば積極的に関わりたいと思っています。一方で、会社としては私がリードの上進めている取り組みが2つあります。
1つめが法務の間接部門をアウトソースできる取り組みです。
日本の企業は会社が締結している契約書を法務部が全てチェックしているかというと、正直不安なところがあるのが現実ではないでしょうか。
しかし、コーポレートガバナンスの観点からも、ステークホルダーに対する説明責任の面からも、契約書は法務レビューが済んだものだけを締結すべきで、これはアメリカを含め他の先進諸国は行っているあたりまえのことです。
しかし、数が多いレビューを少ない法務部の人員だけではさばききれません。そこで私どもが機械的に行うようなレビューなどの間接部門業務をまるごと引き受けるという取り組みです。
実はデロイトにおいても欧州、特にイギリスでサービスが急激に拡大している分野で、アメリカでもサービスが登場しています。すでに、あるグローバル企業の日本法人に対してもサービスを提供しています。
2つめは、法務部分のコンサルティングサービスです。
海外のデロイトグループではすでにはじまっていますが、リーガルマネージドコンサルティング(LMC)サービスです。
法務部の中の業務改革を含め、リーガル部分をコンサルティングして、その企業に沿ったシステムを提案するといったものになります。
デロイト トーマツ グループには、コンサルタントも多数在籍し、私どもも弁護士としての専門性を持ちながら、同時にコンサルタントの側面でサービスを提案することもあり、ビジネスとリーガルの双方を知った上でサービスを提供できる人材がそろっています。
私は前職までの弁護士としての仕事と、現在の弁護士としての仕事では視野がまったく異なっていると感じており、来た仕事を机で行っていくのではなく、案件スタート時点からフロントメンバーと一緒にクライアントとの会議に参加するのですが、これが本当に面白いです。
起き得るリスクを未然に防ぐこともできますし、セキュリティやプライバシー問題がグローバルで課題になる中、リーガルがビジネスに対して支援できることはますます増えてくるはずです。
私は法務の新しい世界をチームで切り拓き、クライアントのサポートができたらと願っています。
これからも私はクライアントの相談事に向き合い、積極的にチームビルディングを行いながら、日本の法務における新しいサービスを開発し、クライアントに届けていきたいと思っています。
他法人所属者の
コメント
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
MM
伊奈さんがもちろん前に出てくることもありますが、下のマネジャークラスの弁護士にリードさせてDT弁護士法人を組織として成長させようとしているように感じます。
デロイト トーマツの大きな組織の中で、様々な専門性を持つチームとうまく協業できるタイプのように思います。
こちら側からすると、案件の初期段階からリーガルについて伊奈さんたちに聞けば一通り分かるという安心感もあります。
この連携によって、サービスを一体で行うことの付加価値がどんどん生み出せたらと思います。