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ナレッジ
第2回 解決策(1):意思決定の態勢整備
経営層自ら情報を獲得し、活用する能動的な意思決定態勢の構築
意思決定の態勢整備とは、経営層が全社的な意思決定のため、内部・外部の事業環境変化を迅速かつ容易に把握できる環境を整備することである。そこでは、経営層が報告を基に仮説を立て、自ら能動的に、仮説検証に必要な情報を獲得するスタイルが求められる。
経営の意思決定のあるべき姿
経営層がタイムリーに内部・外部の事業環境変化を把握し、必要に応じて自ら情報を収集して意思決定を行うためには、以下の態勢整備が必要である。
■ 意思決定サイクルの短縮化
定例報告を簡素化し、情報の鮮度を優先するとともに、経営者が仮説検証のために必要なアドホックな情報を取得・分析するためのプロセスや支援体制を整備
■ 適切な意思決定を促す指標の設定
実績に基づく意思決定だけではなく、早期警戒指標(EWI*1)を活用し、予兆に基づく意思決定を実施
■ 経営ダッシュボードの導入
経営層が内部・外部の事業環境変化を素早く理解し、経営層自ら情報を分析できるインフラ環境を整備
意思決定サイクルの短縮化
意思決定サイクルの短縮化に向け、体制、ルール、プロセス、インフラなど態勢整備が必要。たとえば、G-SIBsなどの海外主要金融機関では以下の取り組みを実施している。
■ 定例報告の効率化
定例報告内容を指標に特化し、人手を介すことなく自動作成を実施。経営層にタイムリーな報告ができるとともに、本社各部の業務負荷が軽減され専門的な分析業務に特化することが可能
■ 能動的な意思決定
本社各部からの報告の積み上げだけではなく、経営層自ら初期仮説の検証に必要な情報を収集。必要に応じて企画担当に情報収集や分析を指示し、より精度の高い仮説立案や意思決定を実現
■ 意思決定の支援体制の設置
経営層の仮説検証のために、経営層の要請を受けてアドホックな分析を行う支援体制を整備。経営層が必要とする情報を適時・適切に提供することで経営層の意思決定サイクルの短期化に貢献
図表:意思決定サイクルの短縮化
適切な意思決定を促す指標の設定
経営層が適切に意思決定を行うために、特定領域に特化した指標(KPI)だけではなく、包括的に内部環境を把握する指標(KPI)を選定し、自行・自社状況を包括的にモニタリングする必要がある。たとえば、海外主要金融機関では、信用リスクや流動性リスクに加えて、従業員満足度や離職率など人事に係る指標や、顧客満足度や取引継続年数など顧客に係る指標に取り入れ、コンピテンシー強化に役立てている。
変化が激しい経営環境のなか、できるだけ早くその変化を察知し適用するため、将来的に業績に影響を及ぼす可能性のある指標(EWI)を定義し、モニタリングするケースも増えている。G-SIBsなどの海外主要金融機関では、新興国市場のマクロ景気指標やCPI(消費者物価指数)など様々な外部指標をEWIに設定し、モニタリングしている。また環境の変化をより的確に捉えるため、定期的にEWIを見直し、指標の頻度や先行度、実績への影響度合いを適宜確認している。
経営ダッシュボードの導入
経営層が適時・適切に状況把握するため、 G-SIBsなどの海外主要金融機関では経営ダッシュボードを導入するケースが多い。経営ダッシュボードは、システムと連携することでタイムリーに視認性の高いレポートを提供できる。また、経営層にドリルダウン分析やシミュレーション機能などを提供することで、経営層自らが情報収集や分析を行い、適宜・適切な状況把握を支援する。
意思決定の態勢整備に向けた実施事項
意思決定の態勢整備に向け、まずは自行・自社における方針(グランドデザイン)を整備し、必要な体制、ルール、プロセス、インフラにおける態勢を整備することが重要である。
図表:意思決定の態勢整備に向けた実施事項
*1 EWI : 早期警戒指数(Early Warning Indicator)の略称。環境変化を察知し、迅速に環境変化に対応するために使用する指標
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