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第1回 データ利活用における現状課題と解決の方向性

データを活用した意思決定の高度化には包括的な態勢整備が必要

目まぐるしい環境変化に備え、国内金融機関ではデータを活用した意思決定の高度化が求められている。しかし、DWHやBIなど多額の投資が行われているものの、まだ目に見える十分な成果があげられているとは言いがたい。そこで、十分な成果があげられない主な要因を洗い出すとともに、解決策の方向性を示す。

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国内金融機関を取り巻く環境変化

我が国の金融機関は、かつて経験したことのない環境変化のうねりに直面している。
国内の主要金融機関は、バーゼルⅢ*1段階的適用や日銀マイナス金利政策への対応に奔走している。財務体質の健全化を求められる反面で、莫大な制度対応投資を行い、さらに国債利回り圧縮による減益に喘ぐ。加えて、英国の国民投票によるEU離脱決定(Brexit)で世界景気後退懸念が追い打ちをかけるという厳しいかじ取りが続く。

先進的な海外金融機関はデータ利活用を通じた「意思決定」ができる態勢整備で先行している。データ分析の専門部署設置と各部門へのデータ分析人材派遣、データ分析のプロセス標準化、外部データへの分析対象拡張など、「意思決定」に有益なデータを経営層に提供する態勢を急ピッチで構築しているのだ。また、経営層は報告を待つのではなく、能動的に仮説立案・情報収集を行い、適時・適切な「意思決定」を図っている。

図表:外部環境の変化による国内金融機関への影響

日本の金融機関によるデータ利活用

激変する外部環境やG-SIBs*2などの海外主要金融機関の動向を受け、国内の主要金融機関にとって意思決定の高度化が喫緊の課題となっている。しかしながら、多額の資金を投じてDWHやBIを導入し、データ分析の専門部署を設置するなどの取組を行っているが、まだ目に見える十分な成果が表れているとは言い難い。その理由は、一般的に以下のような問題があるためと考えられる。

図表:データ利活用に関する問題と要因

■ 経営層が抱える問題と要因

経営層は、「銀行が持つ様々なデータを駆使した適時・適切な意思決定ができない」という問題を抱えている。背景には、例えば以下のような要因がある。

  • 突発的な事象発生時に迅速な分析ができず、適時に報告が上がってこない
  • 担当者目線で報告が作成されており、指標(KPI)を見ても問題の背景や真因の把握が難しい
  • データ全般に関する組織横断的な統括責任者・部署が不明確

 

■ 企画担当が抱える問題と要因

企画担当は、「意思決定に有用な分析・報告ができない」という問題を抱えている。背景には、例えば以下のような要因がある。

  • 分析・報告については外部機関や子会社の常駐SEに依存しているため、社内人材が育たない
  • スキルを持つ人材が各部に散在し、分析手法も各部各様であるため、ノウハウが蓄積されない
  • 属人的な対応が求められており、不慣れな担当者は報告作成に負荷がかかる
  • データ定義のバラつきによって、報告事項は同一にもかかわらず内容に差異が発生してしまうため、補正・加工などをしてからでないとデータをすぐに利用できない

■ IT担当が抱える問題と要因

IT部門の担当は、「分析・報告に有用なデータ提供ができない」という問題を抱えている。背景には、例えば以下の要因がある。

  • データ補正作業(クレンジング)が自動化されておらず、手作業やマッチングの負担が大きい
  • データ配置・フローがシステム毎の個別最適の状態になっており、一元的に集約・統制できていないため、開発・運用保守にコストがかかりすぎている

包括的な態勢構築

「経営層が抱える問題」「企画担当が抱える問題」「IT部門担当が抱える問題」を解決するためには、(1)「意思決定」、(2)「データ分析」、(3)「データマネジメント」の態勢整備を包括的に行うことが必要である。

 

(1)意思決定 (経営)

「意思決定」に係る態勢整備とは、「経営層が抱える問題」の解決を目的として、主に内外の環境変化を適時・適切に捉え、能動的に経営判断するための体制やプロセスの構築をすることである。具体的には、適切な指標(KPI)設定、意思決定サイクルの短縮化、経営ダッシュボード導入を検討する。

(2)データ分析(企画)

「データ分析」に係る態勢整備とは、「企画担当が抱える問題」の解決を目的として、複雑な事業環境に対して現状把握や将来予想のモデルを通じ、事実を踏まえた意思決定を支援するための体制やインフラを整備することである。具体的には、データ分析の専門部署を設置した上で、データ関連プロセスの全社的な標準化や、SNS・通話記録などの新たなデータの取り込みを検討する。

(3)データマネジメント(IT)

「データマネジメント」に係る態勢整備とは、「IT担当が抱える問題」の解決を目的として、意思決定の質・スピード向上のためのデータ整備を行うことである。具体的には、CDO*3・DMO*4の役割・責任を明確化した上で、開発統制に係る指針・ルール策定やデータアーキテクチャ最適化を検討する。

図表:データ利活用の態勢構築に関する主な整備事項

*1バーゼルⅢ : バーゼル銀行監督委員会が公表した、国際的に業務を展開している銀行の健全性を維持するための新たな自己資本規制。2012年末から段階的に導入し、2019年より完全実施予定
*2 G-SIBs : Global Systemically Important Banksの略称。国際合意に沿って、自己資本比率規制に関する告示に基づき定義されたグローバルなシステム上重要な銀行
*3 CDO : Chief Data Officerの略。データを経営上重要な資産と捉え、データに関する企業全体のガバナンスと有効利用に責任を負い、指揮・統制する最高責任者
*4 DMO : Data Management Organizationの略。CDOを補佐する部署で、企業としてのデータの維持・改善に係る実務や関係者調整を行う組織 

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デロイト トーマツコンサルティング合同会社
前田 清裕 

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