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IR・カジノにおける日本の会計論点

統合型リゾート(IR:Integrated Resort)

「特定複合観光施設(IR)」のカジノ施設で行われるゲーミング(カジノ)は日本国内でも、国際財務報告基準(IFRS)でもまだ会計基準が規定されていません。ゲーミング(カジノ)における収益、ジャックポット負債、インセンティブおよびロイヤルティプログラムについて米国基準を基に解説します。

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Ⅰ. ゲーミング(カジノ)は日本国内でも、国際財務報告基準(IFRS)でもまだ会計基準が規定されていない

「特定複合観光施設(IR)」で運営されるカジノ施設で行われるゲーミング(カジノ)は日本において新しい業種・業態であり、日本の会計基準上でゲーミング(カジノ)特有の会計基準や会計慣行は確立されておらず、また、日本で任意適用が認められている国際財務報告基準(IFRS)においても、同様に規定されていません。

日本基準に規定されている全業種に共通の事項については、会計基準や会計慣行に従って会計処理を行いますが、日本基準に規定されていないゲーミング(カジノ)特有の会計処理については、ゲーミング(カジノ)先進国である米国の会計基準を参考に、日本基準において公正妥当と認められる会計処理を行うことになると考えられます。

日本版IRの投資規模は約50億ドルが予想され、日本はマカオに次ぐ世界第2位のゲーミング市場規模になると言われています。
日本のゲーミング(カジノ)における会計基準の早期整備が必要となります。

米国基準では、財務会計基準審議会(FASB)の業種別会計基準としてAccounting Standards Codification(ASC)924 –Entertainment – Casinos、米国公認会計士協会(AICPA)の業種別監査・会計ガイドとしてAudit & Accounting Guide(AAG)–Gaming がそれぞれ公表されており、ゲーミング(カジノ)特有の会計基準が明文化されています。ASC924 – Casinos およびAAG – Gaming に記載されている主な業界特有の会計に関する事項は以下の通りです。

(291KB, PDF)

米国におけるゲーミング(カジノ)特有の会計基準

会計基準ASC 924 -Casinos ガイダンスAudit & Accounting Guide: Gaming
924-10 全般Overall §1業種の概要Industry Overview §7営業ライセンス、プロジェクト開発、及び開店準備・立ち上げコストGaming License, Project Development, and Preopening and Start-Up Costs                                           
924-280セグメント報告Segment Reporting §2範囲と適用性Guide Scope and Applicability §8第三者に対する管理資産Managing Properties for Third Parties
924-405 負債Liabilities §3ゲーム収益及びゲーム関連収益の概要Overview of Gamingand Gaming Related Revenue §9保証Guarantees
924-605 収益認識Revenue Recognition §4ジャックポット負債Jackpot Liabilities §10長期性資産Long-Lived Assets
924-720 その他の費用Other Expenses §5参加契約及び類似の契約Participation and Similar Arrangements §11その他の会計論点Other Accounting Topics
924-740 法人税Income Taxes §6ロイヤルティ及びインセンティブ・プログラムLoyalty and Incentive Programs §12政府系カジノGovernmental Gaming Entities 

出典:Accounting Standards Codification 924 – Entertainment – Casinos, Audit & Accounting Guide– Gaming よりトーマツグループ IR ビジネス・リサーチグループが作成

Ⅱ. ゲーミング(カジノ)における収益

ここでは、カジノ施設で行われるゲーミング(カジノ)における収益と、それに関連してジャックポット負債や、インセンティブおよびロイヤルティプログラムの会計論点について、これらの米国基準を元にご紹介します。

カジノ施設ではテーブルゲーム、スロットマシーン、カードゲーム等様々なゲームが行われます。カジノ施設における収益の獲得活動は、カジノ事業者が顧客とのゲームに参加し、その両者が勝負の結果として金銭またはその他の経済的価値を得たり失ったりする可能性のある活動(カジノ活動)と ゲームには直接参加せず、場を提供しゲームを運営することで、手数料を受け取る活動(カジノ関連活動)に区分されます。カジノ活動にはテーブルゲーム(ブラックジャック、ルーレット、バカラなど)やスロットマシーン、ビンゴなどが含まれます。カジノ関連活動にはポーカーやトーナメントゲームなどが含まれます。

カジノ活動における「総カジノ収益」は、一般的に顧客の賭け金の総額ではなく、賭けを行ったゲームの勝ち負けの差額により算定されます。さらに総カジノ収益は、後述のジャックポット負債の増減やインセンティブによって調整された後、カジノ関連活動の収益が加算され、「純カジノ収益」が算定されます。

Ⅲ.ジャックポット負債

ジャックポットとは、スロットマシーンのようなゲームで顧客が勝った場合に支払われる賞金のことです。さらに、顧客の賭け金のうち一定割合が将来の賞金として累積されるプログレッシブ・ジャックポットと呼ばれるものがあります。企業は将来、累積された賞金を支払う義務を負うため、賞金が累積された期間にわたってジャックポット負債を計上し、賞金が支払われた時点でジャックポット負債を取り崩します。ジャックポット負債の増減は、純カジノ収益を算定する際に加減算されます。

Ⅳ.インセティブおよび ロイヤルティプログラム

インセンティブとは、無料で顧客に提供されるゲームプレイの権利や、現金値引き、コンプリメンタリー(コンプ)と呼ばれる宿泊や飲食のことを指します。

インセンティブプログラムには、会員ステータスに応じた差別化や、マーケティングのために顧客に付与される「差別的インセンティブプログラム」と、ポイント・ロイヤルティプログラムとして顧客に付与される「非差別的インセンティブプログラム」の2種類があります。

前者は、無料プレイなどのインセンティブが顧客に提供されるまで、その義務を負っていないことから、提供された時点で、インセンティブに係る費用の計上を行います。一方後者は、無料プレイなどのインセンティブが顧客に提供される前にその義務を負っているため、提供する義務を負った時点で、収益の繰延べ、あるいはインセンティブに係る費用の即時計上を行います。

IRビジネス・リサーチグループの最新活動

下記IR(統合型リゾート、Integrated Resort)についての海外事例のナレッジを提供している、IRビジネス・リサーチグループの最新の活動をご紹介いたします。

 

【IRビジネス・リサーチグループの最新活動】

>IR実施国の調査報告書~平成27年度 横浜市委託調査
先進的な統合型リゾート導入事例等について情報を収集・集約・整理・分析等を行い、横浜市の取り組みを支援。

>IR整備状況などの調査報告書~平成26年度 東京都委託調査
海外における統合型リゾートに関する調査業務を受託。

>特定複合観光施設区域に関する調査~平成26年度 内閣官房委託調査
海外での先進的な統合型リゾート導入事例等について情報を収集・集約・整理・分析し、統合型リゾートを検討する内閣官房の取り組みを支援。

>書籍『カジノ産業の本質 ~社会経済的コストと可能性の分析~』を監訳(2015年6月発行)
カジノの光と影/IRビジネスを経済の視点から解説。

>『月刊レジャー産業資料』2015年6月号〔特集〕統合型リゾートに執筆
「海外にみるギャンブル依存症対策の枠組み」と題して、有限責任監査法人トーマツ パートナー 仁木 一彦 および マネジャー 西 翼 が執筆。

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