ナレッジ

なぜ、いまデロイト トーマツが「危機管理センター」を始めたのか?――「危機管理センター」の現場から――

クライシスマネジメントメールマガジン 第63号

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーでは、6月1日に企業の予期せぬ有事をワンストップでサポートする危機管理センターを開設しました。

ニュースリリース:デロイト トーマツ、企業の予期せぬ有事をワンストップでサポートする危機管理センターを開設
 

デロイト トーマツが日本で危機管理分野に大きく踏み出したのは、東日本大震災にまつわる各種のご支援がきっかけでした。当時こうしたプロジェクトの中心にいたメンバーは口々に「とにかく必死だった」と振り返るほど、当社においては全社を挙げて一心に対応した非常に大きな取り組みでした。その後、震災とはまた異なる新たな危機、すなわち新型コロナウイルス感染症の世界的流行においても各種の支援をさせていただきましたが、この時に、ファームとして社会全体にかかわる危機に対してどう取り組むかといった方向性が内外に示されたと感じています。
こういった、社会全体を取り巻く危機以外にも、デロイト トーマツには企業活動を営む中で直面する様々なインシデントの通報やお問い合わせが日々寄せられています。その全てを紹介するのは一晩あっても難しいところですが、例えばこんな内容です。

「つい先ほど代表取締役が逮捕された」
「店舗に爆破予告を受けている」
「サイバーアタックを受けて、すべてのシステムが動かない」
「品質基準に満たない製品を出荷してしまった」


こうしたショッキングなお問い合わせをいただいていますが、危機管理分野が通常のお問い合わせと大きく異なるのは、クライアント側の目論見や具体的な依頼内容がなかなか伝わってこないことにあります。そして、クライアントの側でも、はっとそのことに気づいて、「すみません。うちの会社こういうことに慣れていなくて……」と申し訳なさそうにされます。
通報を受ける側としては、クライアント側で危機対応に知見を有しているかどうかは、じつはあまり重要ではありません。あらゆる会社は定款に示された内容を実現するために最適化されているはずですので、「取締役の逮捕」に精通しているとか、「爆破予告」へ対応する仕組みを整えている会社のほうが極めて稀だと言えます。
なお、危機の発生原因さえわかれば、必要となる専門性を予測することができますので、上記の通報は、いずれも発生原因について一定の認識があるという意味では、十分と言えないまでも、まずは動き出せるはずの内容と言えます。

一方で、こちらが戸惑うのは、「実は、10日ほど前のことなのですが……」のように、一定の時間が経ってからの通報です。会社にまつわるあらゆる危機において、初動対応をどう行ったかがその後の対応の巧拙に大きく影響します。おおむね、発生後3日から1週間ほどがゴールデンタイムとされており、その間に会社がどれだけ状況を把握し、体制を整え、意思決定を行ったかが極めて重要です。
多くの場合、初動の重要性に関してはクライアント側でも認識されていることがほとんどなのですが、詳しく事情を聴いてみると、「どこに問合わせをしたら良いかわからなかった」「契約がない中で、こういった通報を受けてもらえるかどうか判断がつかなかった」といった意見をいただくことがあります。

私たちは、これまで積み重ねてきた危機対応支援についてどう強化していくか、あるいはクライアントの声にどう応えていくかについて、グループ内で議論を重ねてきました。
「危機管理センター」は、プロフェッショナル同士の連携を高めるとともに、通報、問い合わせ先を一本化し、事前の契約の有無にかかわらず活用できる窓口として設立したものです。
今後、皆様からのご意見をいただきさらなるサービスの向上を図っていく所存ですが、皆様の経営判断の一助となれば幸いです。

デロイト トーマツでは、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーの中のフォレンジック&クライシスマネジメントサービスというユニットが危機対応の初動とマネジメントを担当し、百名程度が在籍しています。その後、対応が本格化してくると、弁護士法人や監査法人、サイバー専門会社といった、各種専門性に合致したグループファームのプロフェッショナルを巻き込んで取り組んでいます。デロイト トーマツには国内で2万人弱、グローバルで42万人ほどのプロフェッショナルが在籍していますが、発生した危機の内容によって、アサインする専門家も変わってきます。
なお、7月31日には「危機管理センター」に関するウェビナー公開を予定しています。下記ページや本メルマガ等で告知していきますので、ぜひご参加ください。

■危機管理センターhttps://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/solutions/frs/crisis-management-center.html

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
フォレンジック & クライシスマネジメントサービス
中島 祐輔(パートナー 統括)
清水 亮(マネージングディレクター)

お役に立ちましたか?