製品とパーパスが直結し、好循環を生む【2022 Global Marketing Trendsスペシャルインタビュー vol.3】
株式会社カオナビ 代表取締役社長 CEO 柳橋 仁機氏

  • Digital Business Modeling
2022/3/31

コロナ禍の過去18か月は、企業やブランドにとって、前例のない複雑かつ不確実な環境をもたらし、顧客とのエンゲージメントの在り方を再構築する必要に迫られた。デロイトグローバルが発行した「2022
Global Marketing Trends」では、7つのマーケティングのキートレンドと共に、こうした環境下でも成長を続ける企業がどのように業界をけん引しているのかを明らかにしている。

本稿では、今年のキートレンドのうち、日本企業・組織が特に重視すべき「パーパス(存在意義)」「人財」「ファーストパーティデータ」「End To Endな顧客体験の提供」について、本レポートのエグゼクティブインタビューにご協力頂いた、タレントマジメントシステムで日本シェアNo1のソフトウェアサービス会社である、株式会社カオナビ 代表取締役社長 CEO 柳橋 仁機氏の見解や自社の取り組みを紹介したい。

  • 出典 ITR「ITR Market View:人材管理市場2021」人材管理市場-ベンター別売上金額シェアで6年連続1位(2015~2020年度予測)

パーパスと製品が直結し、自分ゴトとして社内に浸透

――今年のレポートでは、成長率が高い企業ほどパーパスを(1)従業員の意思決定の指針としている、(2)CSR投資戦略を推進する存在として重視していることが明らかになった。カオナビはどのようなパーパスを掲げて活動しているのか

柳橋:「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」がカオナビのパーパス。日本の就業観は画一的で形式的すぎる。我々はタレントマネジメントシステムの提供を通じ、「組織ではなく、個人の働き方や才能に焦点を当てた考え方を社会に浸透させる」というパーパスを直接実現したいと考えている。

――カオナビではどのようにパーパスが社内に浸透しているのか

柳橋:タレントマネジメントシステム「カオナビ」の商品コンセプトは、パーパスと直結している。製品を通じてパーパスの体現を目指す以上、“製品を提供する我々自身がパーパスを実現できているべき”という考え方になる。従業員の一人ひとりが、パーパスを「自分ごと」として捉えてくれていると感じる。実際、パーパスに共感して入社を決めたという社員も少なくない。

マーケターに必要なのは「因」と「果」を的確に捉え、表現するスキル

――従来クリエイティブな分野と見られていたマーケティングだが、ビッグデータと人工知能などの台頭により、人財の採用において、分析的スキルも重視されていることが明らかになった。
こうした左脳/右脳の複合的スキルに加え、多様なスキルを持つメンバーやハイブリッドな就労環境下での強力なコラボレーションスキルも求められている。
これからのマーケターに求められるスキル・マインドセットについてどのように考えるか。

柳橋:デジタルマーケティングが普及する中で、マーケターが数字に触れる機会が大幅に増えたため、数字を扱うスキルはベーススキルとして必須。このスキルの上に、強力なコラボレーションのスキルセットが必要と考える。
また、製品のマーケットインパクトを理解してもらい、マーケットインパクトから逆算してクリエイティブやコミュニケーションを考えられる人材が望ましい。

成果を出すには、「因果」をきちんと捉えることが必要。どのような製品をどのようにアプローチしたのかという「因」によって、結果である「果」が変わる。つまり、マーケットに対して自分たちが考えていることを伝える力が重要となる。

――こうした複合的なスキルを持つ人財の採用や育成についてどのように考えるか

柳橋:採用市場ではこうした人材は希少であり、自社で育成するしかない。クリエイティブスキルは先天的なものだが、数字的スキルは後天的。クリエイティブスキルやコピーライトのセンスがあるスタッフに、マーケティングについて学ばせる育成プランが必要だと考えている。仕事を任せることで、私自身も育成に関わっていきたい。

働き方を示唆する巨大なデータベース構築を目指す

――サードパーティクッキーが廃止される中、高成長企業はいち早くファーストパーティデータ戦略に移行している。カオナビはもともとファーストパーティデータを活用しているため大きな影響はないということだが、どのようにデータ活用をしているのか

柳橋:そもそも自社プロダクトでしっかりとファーストパーティデータを取得しているためサードパーティーデータ規制による影響はない。プライバシーに配慮しながら、「働き方を示唆する巨大なデータベースを作成する」ことをビジョンにしている。

顧客同士で学びあえるカスタマーサクセスを構想

――多くの企業が、来年以降オンライン/オフラインのハイブリッドな顧客体験(CX:Customer Experience)の提供に向けて投資を拡大し、新たなパートナーシップへの参入を計画している。カオナビでは、どのような取り組みを推進されるのか

柳橋:オンライン/オフラインの両方で顧客体験の高度化を図るべき。現在、顧客同士で学びあえるカスタマーサクセスを構想している。従来はカスタマーサポートが顧客を支援していたが、カスタマーサポートに加えて、カオナビを利用している顧客同士でカオナビの活用方法を学び合う場を、オンライン・オフラインで提供する事を、最近のメインテーマとして取り組んでいる。
新たなチャネルとしては、ARゴーグルを掛けると対象者のスキルが分かる等、将来的にはVR/ARを取り入れたサービスを検討していきたい。

今回のインタビューではカオナビの取り組みの一端を知ることができた。パーパスと製品が直結することで、従業員にもパーパスが浸透し、好循環が生まれている。今後も、同社の取り組みに注目したい。

【インタビュイープロフィール】
株式会社カオナビ 代表取締役社長 CEO 柳橋 仁機氏
アクセンチュアにて教育機関や官公庁の業務改革プロジェクトで業務基盤の整備や大規模データベースの開発業務を担当。その後、アイスタイルにて人事部門責任者として人事関連業務に従事。2008年に当社を設立し、代表取締役に就任。

PROFESSIONAL

  • 宮下 剛/Go Miyashita

    カスタマー・マーケティング リーダー 兼 広告・マーケティング・EC・ブランド リーダー
    デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

    DTCのCRM組織責任者。外資系、総合系コンサルティングファームを経て現職。コンタクトセンターなどの顧客接点変革をはじめ営業力強化、顧客サービス向上といったテーマの戦略立案からオペレーション・組織変革、IT導入変革支援まで幅広い領域に従事し約25年の経験を有する。寄稿、講演等多数実施。

  • 熊見 成浩/Narihiro Kumami

    デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

    外資系コンサルティング会社を経て現職。「マーケティング」領域に専門性を持つ。コンサルティングの特徴として「Latest Marketing(新しいマーケティング)」を掲げ、深い顧客インサイトの理解と、プロダクト&サービス、価格+インセンティブ、コミュニケーション、複合的チャネル(特にデジタルやNew Media)、そしてBrandを統合的に考えることで顧客価値を最大化する。近年は、デジタルトランスフォーメーションやグローバルマーケティングのプロジェクトを多数推進。

  • 森 正弥/Masaya Mori

    デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

    外資系コンサルティング会社、グローバルインターネット企業を経て現職。
    ECや金融における先端技術を活用した新規事業創出、大規模組織マネジメントに従事。世界各国の研究開発を指揮していた経験からDX立案・遂行、ビッグデータ、AI、IoT、5Gのビジネス活用に強みを持つ。CDO直下の1200人規模のDX組織構築・推進の実績を有する。2019年に翻訳AI の開発で日経ディープラーニングビジネス活用アワード 優秀賞を受賞。

    東北大学 特任教授。日本ディープラーニング協会 顧問、企業情報化協会 AI&ロボティクス研究会委員長。過去に、情報処理学会アドバイザリーボード、経済産業省技術開発プロジェクト評価委員、CIO育成委員会委員等を歴任。

    著書に『クラウド大全』(共著:日経BP社)、『ウェブ大変化 パワーシフトの始まり』(近代セールス社)、『大前研一 AI&フィンテック大全』(共著:プレジデント社)がある。

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