医療・ヘルスケアの未来を共に作り上げる

  • Digital Business Modeling
2023/2/9
One Passion, More Possibility 想いをひとつに、いのち輝く未来を拓く デロイト トーマツ

デロイト トーマツ コンサルティングのライフサイエンス・ヘルスケアディビジョンでは、「医療・ヘルスケアの未来を共に作り上げる」目的で、4つのCenter Of Excellence(CoE)を立ち上げました。この記事ではCoEの立ち上げの背景やCoEの役割などについて伺いました。

——今回、「医療・ヘルスケアの未来を共に作り上げる」という方針を打ち出し、CoEの立ち上げに至った背景などを教えて頂けますか。

立岡:社会全体として、ライフサイエンス業界およびヘルスケア業界に対する考え方・期待値が大きく変わってきていると考えます。

これまでは「病気を治す」「早く見つける」といった診断・治療行為のみに焦点が当たっていましたが、近年では「心身ともに健全な状態を維持する」「たとえ病気や身体的な不都合があっても、自分で適切にコントロールすることでより充実した人生を送る」といった観点が注目されています。いわゆるウェルビーイングですね。このような、「よりよく充実して生きていきたい」という人々の希望に対してどのような貢献ができるのか、という問いがこの業界に向けられ始めています。

よく知られているように、Apple Watchの心電計測機能が「プログラム医療機器」として正規の医療機器であると認められるなど、デジタル技術が医療と健康管理の壁をなくそうとしています。また、世界保健機関(WHO)は2019年の国際疾患分類の改訂で「老化」を「疾患」だと捉え初めました。「老化」が対処可能な「疾患」として認識されるのは驚きですよね。しかし、実際に、セノリティクス(老化予防)薬などが、ライフサイエンス企業による商業化を見据えた投資・研究の対象として検討され始めています。

従来のライフサイエンス・ヘルスケア業界の定義や射程範囲が大きく拡張されようとしています。

立岡 徹之 | Tetsuyuki Tatsuoka

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ライフサイエンス&ヘルスケア パートナー

岡本:我々は、このように変化が激しいライフサイエンス・ヘルスケア業界に向けてコンサルティングを行っており、健康管理のメソッドや生命科学技術をもつヘルスケアに貢献する企業に対してさまざまなご支援をしています。

これまでのクライアントは製薬企業や医療機器メーカーなどが中心でしたが、業界としての拡張により、最近ではクライアント企業の多様化が進んでおり、さまざまなステークホルダーと協働しています。

この多様化の背景としては、先ほど申し上げた業界として射程範囲の広がりにより、1社だけですべての課題を解決することが難しくなってきていることがあげられます。今後、求められるのは、ウェルビーイングの実現に向けて、異なるテクノロジー領域を得意とする企業群や、バリューチェーンに関連する企業群が、行政や社会全体を巻き込みながらイノベーション・新たな価値創造を行うことです。そのためにも、各ステークホルダーのエンゲージメントが高いエコシステムを形成することが何よりも重要となっています。

デロイトには、世界90カ国にライフサイエンスを専門としているメンバーが在席しています。その中には、製薬業界出身のメンバーだけでなく、医療政策に携わっていたメンバーや元医療関係者、テクノロジーでヘルスケアの変革を起こすような事業活動をしていたメンバーなどが参画しています。変革に必要となる豊富な人材を活用し、世の中を変えていくためのエコスステムの中心を担っていきたいと思っています。

岡本 翔子 | Shoko Okamoto

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ライフサイエンス&ヘルスケア マネジャー

ヘルスケアの未来をともに作り上げる

立岡:世の中を変えていくには一人の力、一つの組織の力だけではできません。みなさんと一緒に新たな世界を目指していく必要があるでしょう。そこで我々は、中期計画で「医療・ヘルスケアの未来を共に作り上げる」というスローガンを掲げました。個々の企業が解決できない課題や社会的な要請に応えるため、官民を巻き込んで業界を動かしていく仕組み作りをリードする活動を展開していきます。

しかし、この活動の目指すところや真意はなかなかイメージしにくいかもしれません。そこで、我々のチームで一つの絵を作ってみました。(冒頭のイメージ図を参照)

この絵に描かれているのは、医療従事者や行政機関、アカデミアなど多様なステークホルダーの皆さんとデロイトがともに「船」に乗っていただき、だれも見たことがないヘルスケアが実現する未来に向けて進んでいるというイメージです。

向かう先には、データドリブンと書かれていますが、デジタルやデータの力を使って患者さんを中心としたウェルビーイングを実現していくことを目指しています。

岡本:この取り組みは、業界でも前向きに捉えられています。

例えば、デロイトは遺伝性血管性浮腫という希少疾患に関するコンソーシアムに参画し、立ち上げを支援しました。これまで、患者数が少ない希少疾患は、医療の対象として見過ごされる傾向にありました。しかし、社会の成熟とともに、総患者数は少ないけれど、それぞれ苦しんでおられる患者の皆さん一人一人にも支援の手を差し伸べることの必要性が認識されてきました。これもウェルビーイング意識の高まりかもしれません。しかし、全国に分散する希少疾患の患者を発見し、適切な治療を提供するには、患者団体、製薬企業、医療従事者、それぞれ個別の対応では限界がありました。各ステークホルダーが連携・情報共有を行う枠組みを作っていく必要があります。そこで、デロイトは、製薬会社を始めとする多くのステークホルダーによる合同での一般社団法人設立や、情報連携を促進するためのテクノロジーの構築を支援しています。希少疾患で苦しむ人を減らすという社会的なウェルビーイングの向上に向けて、各ステークホルダーがエンゲージされた枠組みが出来上がりました。

これはまさに「船」に例えられる事例だと思います。製薬企業の方からも「薬を作るだけではなく、治療を必要とする患者さんに薬を届けることができました。こういった取り組みは製薬業界としてもやっていきたいこと」という声もいただいています。

4つのCenter of Excellence (CoE)を設立

立岡:これまで申し上げてきたような取り組みを我々がリードしていくと考えた場合、チームとしての知見や能力を構築する方法も変えていく必要があるでしょう。クライアントの「企業課題」だけではなく、「社会課題」にまっすぐこたえられるようなThought Leadershipを発揮できるチームとして成長していきたいと考えています。そこで、我々はこれまでの知見や能力を再整理し、今後に向けた活動を行うために、4つのCenter of Excellence(CoE)を設立いたしました。①Innovation、②Customer, Social Engagement 、③Value Chain Transformation、④Global Tech and Transformation です。

岡本:CoEは2022年10月に発足していますが、実はそれ以前から類する活動をしてきました。実際に取り組む中で分野を整理し、4つのCoEとしてまとめたのです。CoEとして整理することで専門性を高め、外部に発信しやすくなります。また、メンバーから見ると、キャリア構築や能力開発の方向性がこれまで以上にクリアになるという利点もあります。

——それぞれのCoEについて簡単に紹介して下さい。

立岡:「Innovation」は、治療からウェルビーイングへと射程を広げるライフサイエンス業界をリードし、今までにはないアプローチ、今までにはないエコシステムから、新しい製品やサービスが生み出されることを支援します。

デロイトの調査では、製薬業界におけるR&Dの生産性が経年的に低下していることが明らかになっています。これは、従来的な疾患ターゲットに対して、自前主義でのアプローチでのR&Dには限界が来ていることを示しています。このCoEではデロイトのネットワークと知見、デジタルのケイパビリティを総動員して、新しい製品・サービス開発をリードしていきたいと考えます。

「Customer, Social Engagement」は、患者を含む社会全体をエンゲージしながら、ウェルビーイングを実現するために活動します。

これまでライフサイエンス業界は、「ドクターにいかに自社の製品の価値を伝えるのか」という、情報をプッシュする発想が強かったように感じています。一方、複雑化していく医療環境の中で自社製品が適正に使用され、提供価値を最大化するためには、ドクターだけでなく患者を中心にさまざまなステークホルダーが積極的にヘルスケアや診断・治療行為に関与できるような活動を行っていく必要があります。つまり、「情報を伝えること」以上に、「ステークホルダーが積極的に情報共有しあえる枠組み」を形成することが重要になります。この変化を推進し、すべてのステークホルダーがやりがいを持って医療に参画できる社会の実現を目指します。

「Value Chain Transformation」は、ヘルスケア業界を大きなバリューチェーンと捉え、治療法を作るところから患者に届けるところまでの流れで発生する多くの変革をサポートします。

CAR-T細胞療法に代表される新規モダリティー薬はこれまでの医薬品流通のパラダイムを大きく変革しておりますし、逆に古くからあるジェネリック薬についても安定供給など新たな流通上の課題が健在化してきます。もちろん、遠隔診療などのデジタル技術による医療行為そのものの変革も各種の医療物資の流通構造を大きく変えるでしょう。

これらの変化に適切に対応し、患者のみなさんの手元に適切な医療物資をお届けするためには、メーカーだけではなく、規制当局も含めてバリューチェーンにかかわるステークホルダー全員が新しい発想で、チャレンジをしていく必要があります。このCoEでは、この変化を促す架け橋になることを目指します。

「Global Tech and Transformation」は、デジタルを含めたテクノロジーを中心に扱うCoEです。

デジタルを上手く使っていくには、企業の中だけで閉じるのではなく、企業を超えた仕組みの構築も不可欠です。特にライフサイエンス業界は、国境をまたがって多様なデータ連携と情報交換がされています。会社がそういった能力を身につけるには、会社自体の変革も必要になります。デロイトでは、大きな変革に耐えうる組織作りや、デジタル体質の会社に変わるための支援を行っていきます。

岡本:さまざまなステークホルダーを繋ぎ、最適化していくためのコアになるケイパビリティは、デジタル技術に他なりません。デロイトの付加価値は、デジタルとライフサイエンスの知見をもとにEnd-to-Endでご支援できることです。そのような事例を一つでも増やしていきたいと思って活動しています。

メンバーのキャリアデザインにCoEを活用

立岡:この4つのCoEはそれぞれ関連していますし、連携しています。それぞれが高い山でありながら、それぞれの尾根が連なり、相乗効果による様々な景色をお見せできればと思っています。参画するメンバーも、それぞれが描くキャリアビジョンをもとに複数の選択ができるようにしています。CoEという「箱」に入るのではなく、「タグ」をつけるイメージですね。

コンサルタントはランクが上がって行くにつれ、自分の専門性を決めていく必要がありますが、これだけ業界としての変化が速く、個々のキャリア志向も多様化するなかで、従来の専門志向にも限界が来ていると感じています。そこで、あまり専門性を硬直的に定義するのではなく、自分がやりたいことを見つけて、それを軸に幅をもって進んでいけるようにキャリアモデルや成長のパスを変えていきたいと考えています。山頂にも、尾根の部分にも、いろいろなキャリアが形成できると思います。

岡本:CoEではメンバー自身の知的好奇心も大切にしています。社会にまだ存在していない新しいことに挑戦するには、専門性と共に「興味・関心」が重要です。メンバーの経験とパッションを上手く組み合わせたキャリアを築けるような組織でありたいですね。

キャリア形成を考えるうえでは「Will / Can / Must」というフレームワークが使われます。「Will」は自分がやりたいことや目標、夢。「Can」はできることで、「Must」が社会から求められていること。それら全てが重なるところが自己満足でもなく、やらせでもない、ベストなキャリアの形だという考え方です。

CoEの活動に参加することで自分のプロフェッショナルとしての価値も上がっていきますし、それが結果的にクライアントや社会全体の変革を起こすことになっていくはずです。

メンバーには自身のWillを大事にしながら仕組みを能動的に使い、価値提供に繋げていってほしいですね。

立岡:コンサルタントは「自分で物事を起こす」ということを大切にしているので、そこを極めてほしいですね。デロイトは「思い」を持っている人が味方を得やすい組織ですので、仲間を集めて互いに刺激しあいながら新しい価値を創出したり、自分の夢を進化させたりしていってほしいですね。

岡本:ライフサイエンス・ヘルスケアチームはグローバルのメンバーと関係が近いため、その中から専門家を探すこともできます。グローバルのネットワークにリーチしていけば、強力なサポートを得て、もっと大きな変革を起こすことも可能です。

自ら行動することが、最終的にクライアントや業界のためになるということを、経験していってもらいたいと思っています。

立岡:メンバーそれぞれの可能性を開拓し、高めるためにCoEを使うこともできると考えています。製薬企業や医療機器メーカー、テクノロジー系の他、アカデミアや行政の方など、これまでの経験との親和性が高いところを選んでもらってもいいですし、未知の領域にチャレンジすることもできます。

現在はコンサルティング自体が変革していく時期だと思います。これまでは企業から言われた課題に応えていくという仕事でしたが、我々自身が社会に対して変革を提案していくということが求められ始めています。

これまでよりも起業家精神を持ち新しい価値を考えるような人材が必要とされるでしょう。第三者目線のコンサルタントだけでこの変化を乗り切るのは困難です。そこで新しいメンバーの方に協力頂き、指針を示していきたいと思っています。

——ありがとうございました。この後、シリーズとして、各CoEのリーダーのみなさんのお話をお伺いしたいと思います。

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PROFESSIONAL

  • 立岡 徹之

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
    Life Sciences & Health Care パートナー

    Med-tech業界(医療機器・医療ITソリューション)を中心に、新規事業戦略・プライシング戦略・M&A・グローバルマネジメントなどのプロジェクトを数多く経験している。ニューヨーク事務所駐在時には、日系ヘルスケア企業の北米展開を現地から支援。また、近年ではMed-techの普及や医療業界イノベーションにむけたルール形成など、社会的課題解決に向けた取り組みを行う。AMED『医療機器開発の在り方に関する検討委員会』にて委員を務める。

  • 岡本 翔子

    デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
    Life Sciences & Health Care マネジャー

    ライフサイエンス・ヘルスケア業界を含む様々な領域でのコンサルティングを経験したのち、ライフサイエンス・ヘルスケアディビジョンの組織・人材開発活動を主導。中長期的に目指すべき組織の姿の検討からプロジェクトアサインや研修を通じた個別メンバーの育成支援など、幅広い取り組みを行う。

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