Posted: 16 Feb. 2023 3 min. read

製造業界におけるデジタルツイン・インダストリアルメタバースのビジネス活用

 デジタルツイン・インダストリアルメタバースとは

皆さん、デジタルツインやインダストリアルメタバースという言葉をご存じでしょうか。

デジタルツイン(Digital Twin:デジタル空間の双子)はその名の通り、現実世界にある物理的な物体から様々なデータを収集し、それらをデジタル空間上に再現する技術を意味します。更にデジタルツインでは、収集されたデータをAI・機械学習に通し、その学習結果をデジタル空間に還元してシミュレーションすることで、これまで予測できなかった事象の因果関係や法則を導き出し、現実の世界で将来起こりうる現象を事前にデジタル空間で予測・分析・モデル化することが可能となります。

一方、インダストリアルメタバース(Industrial Metaverse)はデジタルツインの技術とメタバースの技術を掛け合わせ、デジタルツインで再現されたデジタル空間上にアバターとして複数のユーザーが入り込むことができ、距離・時間等の物理制約を超えた効果的な働き方/トレーニングが実現可能となります。

ビジネス活用

デジタルツイン・インダストリアルメタバースは、製造業・自動車・小売・エネルギー・物流など、様々な業界で活用されつつあります。本稿においては、今最もデジタルツイン・インダストリアルメタバースに対しての取り組みが加速している製造業でのビジネス活用についてクローズアップします。

製造業においては、製品・工程・サービスのそれぞれでデジタルツイン・インダストリアルメタバースを活用することができると考えられております。

1.  製品においては、製品自体やエンジニアリングによって設計された部品を上流から下流まで連結して製品のデジタルモデルを作成します。さらに、物理的距離が離れている技術者同士がアバターを介して同じ空間に入り込み、要件定義からコンセプト開発・機器検証までをデジタル空間で行うことにより、現実空間よりも効率的且つ低コストにコンカレントな製造を実現します。

2.  工程においては、製造設備・工程・関連業務従事者のデジタルモデルを作成し、効率的な設備配置や工程の設計・人の最適配置を行うことで、コストに対する費用対効果の最大化が期待できます。

3.  サービスにおいては、製品の性能・構成・サービスデータを基にした現場での製品のデジタルモデルを作成し、特定の機器の故障や生産能力低下を予測し、パーツ手配・修理までの保守スケジュールをスムーズに計画することが可能となります。これにより、ユーザーに対してはシームレスなサービスを提供することができ、機器故障による生産性の低下などを抑制することが可能となります。

 

デロイトにおけるデジタルツイン・インダストリアルメタバースの取り組み

デジタルツイン・インダストリアルメタバースの実現は、単に技術だけを抑えていれば実現できるものではありません。間違った課題認識や適切でない技術の選定により、かけたコストに見合う効果を得ることができないこともあります。

デロイトは長年、世界中の様々な業界のクライアントをサポートしてきた実績があり、それぞれの業界の持つ大小さまざまな課題を経営から現場レベルで解決してきました。加えて、それぞれの業務プロセスや、ITシステム・先端技術に詳しい専門家を取り揃えており、これらを掛け合わせることで、クライアントの抱える課題・達成したいゴールをアシストするために最適なデジタルツイン・インダストリアルメタバースの実現を支援します。

先端技術の専門家は、社内だけではなく社外とも連携を進めてケイパビリティの充足・拡大を進めており、直近では2022年より米Nvidia社とデロイトのグローバルによるPartnershipを締結しました1。これにより、同社のOmniverseやAIソリューションとデロイトの持つ業務プロセス・ITシステム導入・先端技術などの専門的ノウハウを掛け合わせることで、グローバル・日本におけるデジタルツイン・インダストリアルメタバースの実現を強く推進します。

1 出所:Deloitte US Press Release "NVIDIA and Deloitte to Bring New Services Built on NVIDIA AI and Omniverse Platforms"

 

【執筆者】

デロイト トーマツ コンサルティング マネジャー
長縄 賢典

製造業向け基幹システムの設計・構築・導入を経て、2018年よりXRやエッジセンサーなどのデジタルソリューションを専門としたコンサルタントとして活動。
新規事業の構想策定~PoC推進~ソリューション開発~業務導入まで対応可能。
現在は製造業・自動車業界向けのXRソリューション開発、インダストリアルメタバースの構想策定に従事。