Posted: 24 Nov. 2020 3 min. read

これからのプロフェッショナルに求められる「仕事の流儀」とは

“Future-proof your business”

最近仕事上の英語での会話やプレゼンテーションの中で、”Future-proof your supply chains” とか、”Future-proof your IT infrastructure” といった具合に、”Future-proof” という言葉を動詞として使用するのを頻繁に耳にするようになった。

コロナショックを経て世の中の変化がますます加速し、不確実性が増大する中で、ビジネスも個人も立ち止まっているとあっという間に「時代遅れ」の存在になってしまいかねない。ひょっとすると、そんな潜在的な緊張感に根差した集合意識のようなもののあらわれなのかもしれない。

そう言えば、海外のデロイトでも、デジタル・トランスフォーメーション(dX)の本質をクライアントに説明する際に、 “Future-proof your business”という言葉を使っている。単なるテクノロジーやシステムの導入・利活用の域を越えて、不確かで不連続な未来の変化にも耐えうるビジネスの未来を構想し、それに即して事業モデルの抜本的な変革を推進することにこそdXの本質があるという意味だ。裏を返せば、dXと言う以上は、それくらいの意識で変革に取り組まないと、とてもFuture-proofとは言い切れず、時代の変化の荒波に呑み込まれて消え去る運命にあることを覚悟せよということでもある。

実はこれは、クライアントだけではなく、私たちのようなプロフェッショナルサービスファームにとっても重大な課題に他ならない。むしろ、従来一人ひとりの専門性や経験に依存する部分が比較的多かったプロフェッショナルサービスの分野においてこそ、抜本的な事業モデルの変革が待ったなしと言っても過言ではない。 

AEB: デジタルアセットを付加価値としたプロフェッショナルサービス

では、”Future-proof our business” を確かなものにする上で、私たちプロフェッショナルは自分たちの仕事のあり方、価値創出のあり方を、デジタル・テクノロジーも絡めながらどのように変革させていくことが求められているのだろうか。こうした議論の中で、最近私が決まって口にするキーワードのひとつが、”AEB” すなわち、”Asset-enabled Business” である。

AEBとは、従来プロフェッショナルが人手をかけて提供していた専門的な知見やサービスを可能な限りデジタル・アセット化し、アセットを使ってクライアントに関わる課題を速やかに分析して可視化するとともに、それに基づきプロフェッショナルが様々なアドバイザリーや助言を提供することを可能にするものだ。デジタル・アセットとプロフェッショナルの専門性を組み合わせることで、より高い付加価値をさらに効率的・効果的に提供することを目指すものである。

デロイト トーマツのAEBの拠点の一つである、“dX Garage”。

なぜ今AEBなのか?

では、なぜ今、AEBなのか?次の3つのポイントが何よりも重要だ。

第一に、アセット化を通じて、これまで限られた範囲のメンバーしかアクセスできなかった専門的な知見、分析ツール、ソリューションなどを、より多くのメンバーが活用できるようになることで、サービスの「横展開」が一気に加速することだ。さらに、様々な知見やノウハウのアセット化が進めば進むほど、多様な専門性をつなぎ合わせ、より大局的な視点からの提案や課題解決を進めやすくなる。

第二に、クライアントが求めるより高いスピード感への対応だ。デジタル化の進展の中で、クライアントは希望する変革の実現に一層のスピード感を求めるようになってきている。専門的な知見やソリューションをアセット化することを通じて、クライアントに対していち早くタンジブルな(目に見える)成果を示すことが何よりも重要なのだ。その際、アジャイル開発の手法を採り入れることで、絶えず変化するクライアントのニーズや課題に、スピーディー且つフレキシブルに対応していくことが必要条件になる。

第三に、クライアントの変革に伴走することが可能になることだ。クライアントに対して “Future-proof your business” と言う以上、今後プロフェッショナルは、一時的な助言・アドバイザリーの提供を越えて、戦略構想から変革実行、さらにその先の成果の刈り取りまで、End-to-Endでクライアントの変革ジャーニーに伴走することが求められるようになっていく。アセットを媒介にして継続的にクライアントとデータを共有し、成果を出すところまで徹底的に寄り添って 伴走することで、初めてクライアントにとっての「真の変革パートナー」になることができるのだ。

今から20年近く前、私がまだ新人コンサルタントだったころ、4週間ほぼ缶詰になって、あるクライアント企業のすべての工場/工程における在庫のデータを拾い集めて分析するという仕事をしたことがあった。当時はそれ自体でひとつの立派なプロジェクトだったのだが、今ならデジタル・アセットを使えば、同じことをものの数分で一気に分析してチャート化までできるようになっている。今から20年後、私たちプロフェッショナルの仕事はどのように変貌を遂げているだろうか?エキサイティングな未来を思い描きながら、Future-proof our businessにつながるAEBの可能性を貪欲に追求していきたいと思う。

プロフェッショナル

佐瀬 真人/Masato Sase

佐瀬 真人/Masato Sase

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 代表執行役社長

2000年4月トーマツ コンサルティング株式会社(現 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社)入社。自動車業界を始めとする製造業を中心に事業戦略立案、マーケティング戦略立案、技術戦略立案、組織・プロセス設計に関するコンサルティングに従事。デロイト トーマツ グループ、デロイト トウシュ トーマツ リミテッド アジア太平洋地域のAutomotive(自動車)セクターリーダー、DTC最高戦略責任者(CSO)を歴任。2019年6月より現職。 デロイト トーマツ コンサルティング(DTC)30周年を機に、DTCの経済価値と社会価値の「相乗的増大」を目指す「DTC Value経営」を掲げ、コンサルティング業界の未来に向けリードする。 >> オンラインフォームよりお問い合わせ