Posted: 04 Aug. 2020 2 min. read

シナリオプランニングで不確実な未来に備える

【シリーズ】COVID-19とレジリエンス経営

COVID-19後の世界がどのようなものになるのかは不透明である。不確実性が高まる中、企業が戦っていくために必要なシナリオプランニングを解説する。

本稿は「COVID‐19とレジリエンス経営」と題し様々な経営課題を毎回20分で解説する連続Webinarからの抜粋記事です。

 

戦略のベースとなるストラテジック・チョイス・カスケードとZoom in/ Zoom out

シナリオプランニングとは、異なる未来の世界観をいくつか描き、そこに向けた戦略を考えるというアプローチである。グローバルで経営戦略や成長戦略を練る際には、ストラテジック・チョイス・カスケードとZoom in/ Zoom outという2つのフレームワークを取り入れたい。

1つ目のストラテジック・チョイス・カスケードは、5つの要素を関連付けながら進めていく(カスケードダウンして考える)フレームワークである。①目指す将来像の定義、②どこで戦うかの定義、③どのように勝つかの明確化、④必要な組織能力の獲得、⑤必要な経営システム・体制の構築、の順を追って進めるのが基本ではあるものの、先の要素を考える中で前の要素に立ち戻って修正していくことも必要である。

2つ目のフレームワークは、Zoom in/Zoom outである。戦略を考える際には、10年~20年後の未来を見据えた将来像を描き、それに合わせて中期経営計画や実行計画に落とし込むのが通常だが、世の中の動きはますます早くなり、将来像も変化していく。それに合わせ、足元の戦略や実行計画も臨機応変に変える必要がある。つまり、長期のビジョン(Zoom out)と短期の実行計画(Zoom in)の双方の視点が重要である。

最先端のAIを組み合わせた「ダイナミックストラテジーアプローチ」

未来は不確実性があるので、いくつかの世界観(シナリオ)を描き、シナリオが変わったら足元の戦略をアジャストしていく必要がある。「ダイナミックストラテジーアプローチ」では、AIツールを組み合わせて、シナリオをモニタリングした上で戦略のアジャストメントをする。

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まず、自社の業界や自社にとってインパクトの大きい不確実性・ドライバーを洗い出し、優先順位をつけて現状把握をする。次に、一定の不確実性を前提として複数の未来のシナリオモデルを開発し、それぞれの未来で既存戦略がどのような影響を受けるのか検討して、戦略の評価と見直しを進める。

そして、前提となったシナリオがどの方向に進むのかについて継続的にモニタリングする。Zoom in/Zoom outの考え方を用いて、策定したシナリオに照らして実際の世界がどの方向に進んでいるのか、AIベースのツールでシナリオをモニタリングする。未来のシナリオが変わりそうであれば足元の戦略の調整も必要となる。

このような過程から導き出された戦略を実行に移していくのである。

 

重要なのは、どのシナリオが発生するかということではなく、これらの異なるシナリオが起きた時に自社が戦略的にどのように動くべきなのかをあらかじめ考えておくことである。

ビジネスは様々な不確実性に囲まれている。自社に大きなインパクトとなる不確実性を特定してシナリオを描き、それが現実のものとなった時にどのように動くべきなのかを考えておくことが重要である。企業には、シナリオプランニングの考え方を取り入れ、COVID-19後の世界に備えていただきたい。

 

Webinarでは、COVID-19後の世界について、社会、テクノロジー、経済、環境、政治などの分野にはらむ不確定要素を踏まえて、当社が予測する4つのシナリオを提示している。

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中村 真司/Shinji Nakamura

中村 真司/Shinji Nakamura

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

消費財、小売、家電、金融、ヘルスケア領域、総合商社、プライベートエクイティファンドなど幅広い業界に対して20年以上のコンサルティング経験を有する。 シナリオプランニングに基づく全社長期戦略、中期経営計画、海外事業戦略、マーケティング戦略、新規事業開発、M&Aなど、企業の成長にかかわる戦略立案プロジェクトを数多く手がけている。戦略を立案するだけではなく、実行支援、組織能力向上に関するサポートの経験も豊富。 「ベストプラクティスを吹き飛ばせ(Detonate)」(共著:Firstpress)、「両極化時代のデジタル経営」(共著:ダイヤモンド社)等、著書・寄稿多数。 関連サービス ・ モニター デロイト(ナレッジ・サービス一覧はこちら) >> オンラインフォームよりお問い合わせ