Posted: 17 Dec. 2021 3 min. read

「メタバース×NFT」は日本のチャンス。その展望とは

フェイスブックが社名をMeta(メタ)に変更し、メタバースを事業の柱にすると発表してから、世界中でメタバースの議論や投資が活発化している。

一般的にメタバースとはオンライン上に構築された仮想空間と定義されており、ユーザーはアバターを作ってその空間に入り、他ユーザーとのコミュニケーションを楽しんだり、メタバース内のコンテンツで遊んだりすることができる。

こういった空間は「あつまれどうぶつの森」や「フォートナイト」といったゲームでも実現されており、以前から存在しているとも言える。しかし、昨今は新たにブロックチェーンやNFTを活用したメタバースに注目が集まっている。フェイスブックのメタバース製品責任者のビシャル・シャー(Vishal Shah)氏は「人々はNFTのような限定版のデジタルオブジェクトを簡単に販売し、自分のデジタルスペースに展示して、次の人に安全に転売できるようにもなる」と展望を述べている。

もっとも、昨今盛り上がるメタバースの議論の中では、既にメタバースはゲームで実現されている、バーチャルな世界は視覚と聴覚だけで没入感や手触り感がない、などの批判的な意見も見られる。
これらは確かにそのような側面もあるが、メタバース×NFTについての考察が見られない。恐らくNFTを実際に所有したりゲームで使った体験をしたことが無い人が多く、イメージが湧いていないと感じているため、ここでゲーム×NFTやメタバース×NFTについて考えたい。


ゲーム×NFT
2021年に入り、アート作品を表章したNFTやデジタルアートNFTに高額な価格がついたことより、NFTがバズワード的に世界中で広がった。

NFTを利用したゲームはNFTゲームやブロックチェーンゲームと呼称されており、急速に国外で市場を伸ばしている。
国内でも数年前からいくつかタイトルが出ているが、まだ市場規模は小さく、現状は既存のゲーム市場に遠く及んでいない。
しかし、海外ではAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)というブロックチェーンゲームのユーザー数が飛躍的に増加しており、2021年8月にはDAU(1日のアクティブユーザー数)が100万人を超えたと発表された。
Axie InfinityはプレイすることでAXSやSLP等の暗号資産を獲得することが可能であり、この仕組みは“PlayToEarn”と呼ばれている。暗号資産をBinance等の海外の暗号資産取引所で売買することで、市場価格にも左右されるが、一日2~3時間のプレイで月に数万円程度を稼ぐことが可能と言われている。Axie Infinityにはフィリピンやベネズエラのユーザーが多い。フィリピンの平均月収は約5万円であり、生計を立てる手段となるからだ。また、eスポーツとも異なる特殊な技術は必要としないゲームであると認知されている。
このようなNFT独自の体験を広くユーザーに認知することができればNFTゲームは普及していき、全世界で約20兆円あるゲーム市場を一部置き換える可能性は高い。
Axie Infinityの成功事例を基に多くの企業がNFTゲームの市場に参入しており、今後ますます市場は発展していくだろう。


メタバース×NFT
冒頭でメタバースの一般的な定義には少し触れたが、メタバース×NFTの世界観についてはイメージできていない人が多いと感じるため、メタバースでNFTや暗号資産を使うことにより可能になったことについて触れていきたい。

・NFTの売買により法定通貨・暗号資産を得ることが可能
メタバース内の土地やアイテム、アバターなどをNFT化することで、ユーザー同士でゲーム内外のマーケットプレイスを利用してNFTを法定通貨、暗号資産建てで売買ができる。
例えば、Decentaraland(ディセントラランド)というブロックチェーンを利用したVRプラットフォームでは、土地やアイテムがNFT化されており、Decentraland内のマーケットプレイス上で独自トークン“MANA”を用いて売買ができる。またOpenseaなどの外部のマーケットプレイスに持ち出すことも可能であり、イーサリアムなどの他の暗号資産で売買することも可能である。

・NFTの相互利用が可能
再びDecentralandの事例であるが、Decentralandは複数のNFTゲームと提携しており、一部のNFTをDecentaraland上で表示することが可能となっている。

今後、より多くのNFTの相互利用の事例が増えてくると予想しており、国内の有名ゲームタイトルを例に出すと、ドラゴンクエストの伝説の剣をファイナルファンタジーの世界で使用することもNFTを使えば可能である(攻撃力などのパラメーターはゲーム会社で設定する)

・固有性の証明が可能
NFTには識別子が付いており、唯一無二または個数を限定してトークンを発行することが可能であり、ブロックチェーンの技術特性により改ざんや複製が不可能である。
このNFTの特性により、ゲーム内のキャラクターやアイテム、バーチャル空間の土地に固有の価値を持たせられるようになった。


上記3点はそれぞれNFTや暗号資産を利用することによって、メタバース上で新しい価値や体験を生み出している。
日本が得意とするゲーム・マンガ・アニメなどの領域は世界に誇れるコンテンツであり、世界的に有名なIPを保有している企業が多いが、これらのコンテンツはNFTと親和性が高い。
日本はブロックチェーン・暗号資産の分野で世界から後れてしまっているが、次なる潮流であるメタバースやNFTでビジネスチャンスを掴んでいきたい。

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プロフェッショナル

赤星 弘樹/Hiroki Akahoshi

赤星 弘樹/Hiroki Akahoshi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

フィンテック / ブロックチェーン領域リーダー。 金融インダストリーの新事業開発、Fintech活用、デジタル戦略、業務改革、ITガバナンス、組織改革など様々なプロジェクトに従事。金融機関だけでなく、消費者利便の高い異業種サービスが金融機能を組込み提供する組込型金融(Embedded Finance)や、ブロックチェーンをベースとしたWeb3/分散型金融(DeFi)など新たな成長領域に対するグローバル動向調査/分析や事業戦略立案も担当。 また、環境や人権問題などサステナビリティに対する社会的要請の高まりに対応したトレーサビリティ・ブロックチェーンの社会実装に向けた実証実験・本番適用などの支援を手掛けている。 共著に『デジタル起点の金融経営変革』(2021年)、『パワー・オブ・トラスト』(2022年)等、著書・寄稿多数。

川口 知宏/Tomohiro Kawaguchi

川口 知宏/Tomohiro Kawaguchi

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

デロイト トーマツ コンサルティング所属。外資系人事・組織コンサルティング会社の東京・マニラオフィスを経て現職。ブロックチェーン/Web3.0領域のコンサルティング及びプロダクト企画・開発に従事。金融、製造、電力、エンターテインメント等、様々な業界におけるブロックチェーン技術活用のための事業戦略立案、実証実験、商用化プロセスの支援実績多数。海外メンバーファームや有力テック企業等、グローバルリレーションを活かしたサービス提供をリードし、海外事情にも精通している。INSEAD MBA、米国アクチュアリー会正会員。