Posted: 12 Oct. 2021 3 min. read

第7回:中核人材の多様性確保

シリーズ:コーポレートガバナンス・コード改訂の要点

本稿は日経産業新聞に2021年8月25日~9月8日まで掲載された寄稿を一部改訂したものです。

日本でダイバーシティーの重要性が提唱されて20年以上がたつにもかかわらず、世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」などでも明らかなように日本の取り組みは主要7カ国(G7)の中で大きく遅れている。コーポレートガバナンス・コードも2015年の策定時から「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」を挙げ、ダイバーシティーが会社の持続的な成長の推進力となり得るとの認識を示していたが、欧米には一段と引き離されている。

こうした状況を背景に、2021年6月のコード改訂では、経営の監督機能を担う取締役会の構成を「役割・責務を果たすため、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性」ある内容にするよう新たに求めている。新型コロナウイルス後の不透明な社会環境を踏まえ、実効性の高い経営の監督を行うには、様々な視点・知見に基づく議論が重要だ。それを実現するには多様性のある取締役の構成の検討と選任が不可欠であることを改訂コードは示している。

また多様性を可視化するツールとして「スキル・マトリックス」の整備・開示を求めたこともガバナンスを前進させる上で有効となるだろう。

取締役会から監督される経営幹部や従業員など執行側の多様性を確保することも企業が利益を出すのに必要な条件だ。すなわち「年齢・国籍・性別・職歴を問わず、多様な人材が活躍」し「イノベーションが促進」される企業であれば、利益を生み出すことができ、中長期的な企業価値が向上する。

これを受け、改訂コードでは管理職など執行の中核人材に対する多様性の確保が追加され、「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである」としている。また中長期的な視点で「多様性確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針」を整え、実施状況と併せて開示することも求めている。

とりわけダイバーシティーの中で遅れているのが女性の活用だ。経団連は2030年までに女性役員比率を30%以上とする目標を掲げているが、2020年時点で達成しているのは、資生堂やローソンなどわずかで、上場企業の女性役員比率は6.2%にとどまる。

この達成には大きな挑戦が欠かせない。米英独仏では2010年時点で女性役員比率は10%台だったが、一定割合の女性役員選任を義務化したクオーター制の導入が企業の自主的な取り組みにも拍車をかけ、2020年時点で英独仏で30%以上、米国で27%と飛躍的に増えた。

加えて2020年の黒人差別問題をきっかけに民族性に関する多様性の議論が進んでいる。米英などでは白人以外の取締役などの選任や一定割合以上の選任を義務付ける制度の検討が進められている。

企業側の自助努力だけに任せていては取り組みが進まないことは海外の事例からも明らかだ。コード改訂を機に日本のダイバーシティーの一段の改善に期待したい。

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