Posted: 09 Dec. 2021 2 min. read

百貨店、顧客・取引先と関係再構築――新たな「場」へ不用品買い取りも

【シリーズ】サステナビリティ経営新トレンド

百貨店を取り巻く環境変化が激しい。新型コロナウイルスがもたらした新たな生活様式への対応やデジタル化だけでなく、サステナビリティの潮流に向き合う時が来ている。「百貨」を提供する場として、地域と共に歩んできた百貨店業界がサステナビリティに取り組む傾向は、大きく3つあると筆者は考える。

第一に、消費者との関係構築における差別化戦略としてのサステナビリティだ。環境価値や社会価値の高い「百貨」を提供することで事業を伸ばすという考えが、この根底にある。例えば丸井グループは2050年に向けたビジョンで、超長期(30年後)では「サーキュラーレベニュー」(循環型サービスによる売り上げ)で小売り全体の50%以上を目指すと定めた。

また、百貨店各社はコロナを契機に、リアルで強みとしていた接客をオンライン上でも行うことを志向している。そこにサステナビリティの観点を上乗せすることも考えられる。

例えば2010年に設立されたD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)のアパレルブランド、米エバーレーンは、製造過程からのサステナビリティ情報を透明性高く提供し、ミレニアル世代の会員数を増やした。このような戦い方を参考にする余地があると考える。

第二に、“場”の再定義だ。地域の主要駅に隣接するなど、アクセス性の高さが強みだった百貨店は、サステナビリティの観点でも重要な場となる。

2021年10月に伊勢丹新宿本店(東京・新宿)は、顧客が不要となった衣料品やバッグ、ジュエリーや骨董品などを買い取る新サービス「アイムグリーン」を本格稼働した。買い取りで現金を手にした顧客の店内の回遊も狙っている。

こうした取り組みはラグジュアリーブランドとの関係性から国内では見送られてきた経緯がある。だが、三越伊勢丹は自社の店舗を、消費者が気軽に「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」を推進する場として再定義に踏み込んだと言える。

値段がつかず、買い取られなかった衣料の一部は、ポリエステルにリサイクルされる。衣料品などを一つ一つ家庭や拠点から収集するにはコストを要するが、三越伊勢丹が回収拠点となり効率化している。静脈物流(廃棄物の還流)の地域拠点としての場への再定義にも取り組んでいると言えるだろう。

第三は、業界外の「異質の知」と共に進めるサプライチェーンの変革だ。脱炭素の推進には自社だけでなく、取引先も含めたカーボンフットプリント(温室効果ガス含有量)の測定・削減が鍵となる。

物流の電気自動車化など「スコープ3」と言われるサプライチェーン全体の排出削減は、当然自社だけでは推進できない。また、扱う商品が「社会正義」へ貢献しているかを担保するには、サプライチェーンの調査・提言を客観的に行う非政府組織(NGO)などの協力も必要だ。

川下では特に金融などと掛け算し、消費者の行動変容を促すことも重要になる。例えば、スウェーデンのスタートアップのDoconomy(ドコノミー)は、商品やサービスの決済情報から二酸化炭素(CO2)排出量を自動計算するクレジットカードを提供する。使用額の上限だけではなく「CO2の上限」を設定しており、日本国内の百貨店も関心を寄せているという。

近年の金融業界は“経済圏”づくりを行っていることから、百貨店との掛け算でサステナブルな経済圏づくりが進む可能性もある。

本稿は日経MJに2021年11月19日掲載された寄稿を一部改訂したものです。

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加藤 彰/Akira Kato

加藤 彰/Akira Kato

デロイト トーマツ グループ シニアマネジャー

モニター デロイトに所属し、国内外の企業をクライアントとした全社改革、中期経営計画立案、Go-to-Market Strategy 等の経営戦略案件に加え、サーキュラーエコノミー、ジェンダー、人権等の社会課題(SDGs)を起点とした長期戦略、グローバルの新規事業戦略立案・実行支援を多数経験。Monitor Deloitte Japan Circular Economy Strategy Co-Leader。『SDGsが問いかける経営の未来』(日本経済出版社)の共著者。九州大学等でSDGs研究/教育にも従事。   関連するサービス: モニター デロイト(ナレッジ・サービス一覧はこちら)