Posted: 28 Jun. 2024 4 min. read

Web3におけるリアルワールドアセット(RWA)の変革

空き家問題解決にもつながるRWAの可能性

近年、デジタル技術の進化とWeb3の台頭により、リアルワールドアセット(Real World Asset:RWA)が注目されている。RWAは従来の資産管理や取引の方法に革命をもたらし、金融市場と周辺産業を大きく変える可能性を秘めている。


リアルワールドアセット(RWA)とは何か?

リアルワールドアセット(RWA)とは、物理的な資産の所有権やその他権利をデジタルトークンに変換したもので、RWAのトークン化はそのプロセスを指す。これにより、資産の一部を小口化して販売・流通するなどが可能となり、多くの人々がこれらの資産にアクセスできるようになる。具体的には不動産、貴金属、コモディティ、芸術品などがトークン化の対象となる。例えば高価な不動産をトークン化し、小口化することで多くの投資家が少額からでも不動産投資に参加できるようになる。また、金や銀などの貴金属もデジタルトークンとして取引され、所有権の証明がブロックチェーン上で行われるため、透明性と信頼性が向上する。

トークン化にはいくつかの重要な利点がある。まず、アクセスと透明性の向上だ。トークン化で従来は大規模な資本が必要だった高価値資産への投資が小口資本でも可能になる。これにより一般の投資家もこれまで手が届かなかった資産に投資できるようになる。さらに、ブロックチェーン技術を利用することで、取引の透明性が確保され、不正行為のリスクが低減する。所有権や取引履歴がすべてブロックチェーン上に記録されるため、いつでも確認でき、信頼性が高まる。

次に流動性の向上である。従来の資産取引は、営業日や取引時間に制約されていたが、ブロックチェーンプラットフォームを利用することで24時間365日取引が可能になる。これにより、投資家はいつでも簡単にグローバルに資産を売買できるようになる。また、専門のマーケットプレイスが増加し、RWAの取引が活発化している。例えば、不動産トークン化プラットフォームの「RealT」や貴金属トークン化プラットフォームの「Troy Gold」などがその一例である。

セキュリティトークンはRWAのトークン化を支える重要な要素の一つである。セキュリティトークンは、従来の金融商品と同様に規制に準拠し、デジタルな有価証券として特定の資産の裏付けのもと取引されるため、安全で信頼性の高い投資手段を提供する。スマートコントラクトを利用することで、取引が自動化され、コスト削減と効率化が図られる。スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で実行される自己実行型の契約であり、条件が満たされると自動的に取引や配当の支払いが行われる仕組みである。例えば、配当の支払い、権利行使、投票などが自動的に実行されるため、管理コストが削減される。

また、セキュリティトークン市場の成長と共に、それらを支える大手企業の動向も注目に値する。金融機関やテクノロジー企業が積極的に関与し、市場のインフラを整備している。海外ではCitiやJPモルガンのような大手金融機関が積極的に参入し、革新的なサービスを提供している。例えばCitiはデジタル資産の取引プラットフォームを構築し、資産のトークン化と取引を支援している。これにより、従来の金融市場に新しい流動性と透明性がもたらされ、投資家の信頼が高まっている。

 

 

地方の空き家問題の解決も?日本での可能性

日本でもRWAのトークン化は大きな可能性を秘めている。例えば空き家問題の解決や地方創生の一環としても、不動産のトークン化が考えられる。地方の空き家をトークン化し、都市部の投資家や地域を支える事業者に提供することで、地方経済の活性化が期待できる。トークン化技術は地域社会の課題解決にも寄与する可能性があるのだ。

Web3技術の進化により、これらのトークン化された資産が現代の金融市場を変革し、より多くの人々に新たな投資機会を提供する日も近い。但し、刻々とグローバルで動向は変化しており解決すべき課題もまだ多く、私たちはその未来を見据えながら、変革を推進していく必要がある。新しいテクノロジーが、いわばリアルの世界と融合しようとしている今、デジタルの知見だけでの変革は困難だ。テクノロジーとビジネスの双方に目を向けて戦略・実行することが肝要だ。

 

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赤星 弘樹/Hiroki Akahoshi

赤星 弘樹/Hiroki Akahoshi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

フィンテック / ブロックチェーン領域リーダー。 金融インダストリーの新事業開発、Fintech活用、デジタル戦略、業務改革、ITガバナンス、組織改革など様々なプロジェクトに従事。金融機関だけでなく、消費者利便の高い異業種サービスが金融機能を組込み提供する組込型金融(Embedded Finance)や、ブロックチェーンをベースとしたWeb3/分散型金融(DeFi)など新たな成長領域に対するグローバル動向調査/分析や事業戦略立案も担当。 また、環境や人権問題などサステナビリティに対する社会的要請の高まりに対応したトレーサビリティ・ブロックチェーンの社会実装に向けた実証実験・本番適用などの支援を手掛けている。 共著に『デジタル起点の金融経営変革』(2021年)、『パワー・オブ・トラスト』(2022年)等、著書・寄稿多数。