Posted: 10 Dec. 2021 5 min. read

基幹システム導入をDXの第一歩にするために

経営トップによるコミットメントとスピード重視のシステム開発思考

経営トップダウンの明確なビジョン無しにはDXの成功は無い。最先端日系グローバル企業の基幹システム導入から学ぶDXと導入のカギとなる“MVP”とは

DX推進の課題となる「2025年の崖」

多くの企業が、デジタル技術を活用しビジネスモデルを変革する「DXの必要性」について理解しているが、既存システムのブラックボックス化や社内の障壁など課題は多く、DX化が進んでいないのが現状だ。

しかしながら、経済産業省が発表した「DXレポート」では、日本企業がこのまま複雑化・ブラックボックス化した旧来のシステムを使用し続けると、2025年に最大で年間12兆円の経済損失や国際競争の遅れが生じる可能性があるとしており、これを「2025年の崖」と呼び警鐘を鳴らしている。

DX推進に必要なIT投資ができずに、旧来のシステムを使い続ける多くの日本企業がこの“崖”から落ちないために、技術的負債が溜まり、不必要な運用や保守にコストがかかりがちな”レガシーシステム”をいよいよ刷新せざるを得ない時期に来ている。多くの課題を乗り越え、この実行を完遂するにあたって重要となるのが、経営トップの明確なビジョンと、注力すべき領域に力点を置いた「スピードGo-live」だ。
 

2021年5月21日に日経BP社が開催した「経営課題解決シンポジウムPREMIUM DX Insight 「2025年の崖」の克服とDX加速」において、デロイト トーマツの北野洋が、アジア5地域の業務標準化・基幹システム再構築を行い、ビジョンの策定から実装まで完遂させたグローバル企業のプロジェクトを例にとりながらDX推進の要について解説した。

なぜ日本企業はDXで遅れをとっているのか
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なぜ日本企業はDXで遅れをとっているのか

現在、欧米企業と比べて日本企業がDXにおいて遅れを取っている事実が強く問題視されている。実際、デロイトがグローバルで実施したアンケート結果からも、日本ではDX先行企業を除き、変革の目的として現行業務の見直しを最優先に考えている企業が最も多いことが明らかとなっている。

 

「これは言い換えれば、テクノロジー先駆者はどんどん未来へと向かって進んでいる一方で、他の多くの日本企業はまだ足下を見ている状態にあるということ。企業変革を目指すDXではなく、コスト削減を目的とした現行業務の見直しにとどまっていたのでは、「DX」は単なる「冠」に終わってしまうだろう」と、北野は訴えた。

DXとはデジタル技術を活用した企業の変革を意味する。その意味では、基幹システムの再構築は変革の大きなチャンスであり、DXの第一歩になり得る重要な機会である。だからこそ、企業の将来を見据えたビジョンや戦略の策定が非常に重要であり、考え方を組織に浸透させてからスタートする必要がある。

「トップダウンの明確なビジョン無しにはDXの成功は無い。中計からブレイクダウンした計画からのスタートではなく、昨今良く見られる現行システムのサポート切れをきっかけとしたシステム更改には特に注意が必要だ。」(北野)

短期でプロジェクトを成功させた企業では、いずれも経営層が常にメッセージを発し、ビジョンの浸透に努めていた事実からもこの重要性が伺えることだろう。

 

基幹システム導入のカギとなる“MVP”

北野が強く提唱したのが、基幹システム導入プロジェクトにおいても「Minimum Viable Product(MVP)」の考え方を適用することだ。MVPとは、最初から100点を目指すのではなく、プロジェクト目標の達成のために欠かせないコア機能から着手しより大きな課題へつなげていく「スピードGo-Live」を目指すアプローチである。

基幹システム導入のカギとなる“MVP”
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その成功例として北野が紹介したのが、デロイト トーマツの支援のもと行われた、日系グローバル企業における基幹システム導入プロジェクトである。エンターテインメント業界の最先端企業である同社では、アジア5地域の業務標準化・基幹システムとしての「SAP S/4HANA」の構築を、わずか約1年半の短期間で達成したのである。

基幹システム導入のカギとなる“MVP”
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このプロジェクトでは、国内外9つのメンバーファームと連携し、各国から専門家をアサインするなど、デロイト トーマツの総合力でプロジェクトを完遂させた。

 

「今回紹介した企業では、この基幹システムの再構築を機に、注力すべき領域に力点を置いてスピードGo Liveを行ったことで、既に次の一手へと移っている。 『2025年の崖』はすべての企業にとって喫緊の課題であり、いますぐ真のDX化に向けて動くことを提言したい。 デロイト トーマツはグローバル コンサルティング ファームの強みを生かし、日本企業のDX実現を構想策定から実装、開発から運用まで End to Endでサポートする」──こう力説して北野はセッションの幕を閉じた。

 

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プロフェッショナル

北野 洋/Hiroshi Kitano

北野 洋/Hiroshi Kitano

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

大手ERPベンダー、コンサルティング会社起業を経て現職。 主に会計領域を専門とし、20年以上に渡り数多くの国内外ERP導入プロジェクトにおいて構想策定から稼働・保守まで一貫してサポートしてきた経験を有する。近年はDigital Transformationをテーマとしたクロスボーダー案件を中心に、大規模基幹システム刷新、それに伴う業務改革支援をリードしている。   関連するサービス: ・ エンタープライズテクノロジー・パフォーマンス >> オンラインフォームよりお問い合わせ