Posted: 19 Aug. 2024 5 min. read

Regional Scrum Gathering Tokyo 2024(RSGT2024)参加レポート

国内外のスクラム実践者約600名が参加する大規模イベントへの参加報告

社会の変化が激しくなるにつれ、ビジネスは従来の計画型から適応型・アジャイル手法への移行が求められています。デロイト トーマツ コンサルティング Platform Engineeringチームでは、このようなモノづくりの領域を超えたアジャイル手法の提供を行っています。ここではその手法のひとつである「スクラム」の実践者が集う国際イベント「RSGT2024」に我々のチームが参加しましたので、内容をピックアップして紹介します。

RSGTとは

Regional Scrum Gatheringとは、世界各地のアジャイル/スクラム実践者によって自律的に企画・運営される集いと学びの場です。過去10年間に限っても約30カ国、90回程開催され、基調講演、有志によるセッション、参加者相互の交流などを通じて、スクラムに関する知識を深めることができます。「カンファレンス」や「セミナー」ではなく「Gathering」と銘打ち、その名の通り日々スクラムを実践している参加者同士が集まって交流を行い、語り合う場を提供するという目的を掲げています。

今回我々がゴールドスポンサーとして参加したRegional Scrum Gathering Tokyo(以下RSGT)は、2011年から始まり、今回で13回目の開催となるイベントです。2024年開催の今回は、1/10-12の3日間と前日夜のオンライン前夜祭からなり、3つの基調講演、9つのワークショップ、43枠のセッションが行われました。我々Platform Engineeringチームからは6名のメンバーが参加し、セッションのスピーカー、運営スタッフ、展示ブーススタッフ、セッションの聴講や参加者同士の交流など、各々が積極的な活動を行いました。

 

現地の様子

RSGT2024の基調講演では、Day1にはHeidi, Helfand氏による、適応力の高いチーム作りに関する「Dynamic Reteaming」についての講演、Day2にはMichael, Feathers氏による「Solving The Value Equation」、チームが提供する「価値」についての講演がありました。「Dynamic Reteaming」では安定的なチーム形成が難しい現代社会において、なぜチームの変化が起こるのか、どのようにすれば変化に適応できる柔軟なチーム、組織を作っていくことができるのか、そのために有効な考え方や取り組みの紹介がありました。「Solving The Value Equation」では、価値とは何か、アウトプットや生産性そのものは価値ではなく、できるだけ全てのチームが顧客に対面し、顧客が絶対に必要とするもの、ユーザの欲求を強く満たすものを作ることが大事で、その妨げとなる様々な要素、例えばチームやシステムの大きさからくるコミュニケーションコストの増大、顧客との距離感、システムの複雑性などの課題について語られました。

参加者の公募からなる各セッションでも、開発の現場視点や経営者視点からの事例紹介、実践上のノウハウ共有や学術的な理論に基づいた発表、カジュアルなワークショップなど、それぞれの参加者が様々な立場からスクラムを実践し、垣根を越えて意見を交わす姿が会場の至る所で見られました。改まった講義形式のセッションではなく、各々が皆スクラム実践者として、これまでの活動経験の中で得た成功例や失敗談を生の言葉で語る内容が多いことが印象的でした。

クロージングセッションでは、600名以上の現地参加者が一同に会し、プロダクトの価値や品質に関する「狩野モデル」の提唱者として知られる狩野紀昭先生のセッションに耳を傾けました。「魅力的品質」「あたりまえ品質」といった、プロダクトの品質を考える際に必ず目にする言葉を発案者自らの口から伺うことができ、「品質」という言葉の語源や、はたまたアリストテレス哲学に遡り研究アプローチを行なったエピソードなど、今なお最前線でご活躍される狩野先生の幅広いフィロソフィに触れることができました。

 

「最も使われているツールは?」アンケート調査 

ロビーに設置されたデロイト トーマツのブースでは、アジャイルの最前線で活躍されている多くの方々が日常的に利用しているチーム活動ツールに関するアンケートにご協力いただきました。Atlassian Jira, Redmine, Miro, その他の選択肢からドット投票をしていただき、以下のような結果となりました。

  • Atlassian JIRA 75票
  • Redmine 10票
  • Miro 69票
  • その他 24票

RSGT2024会場に脚を運ぶスクラム実践者の中では、Atlassian JIRAを利用しているチームが多いようです。その他の使用ツールとして、TrelloやBacklogなどを利用しているという声もいただき、多くの方々にチーム内でのツールに対する熱い思いや課題を共有していただきました。Atlassian JIRAに関しては、最も活用されているという実態はあるものの、設定等に複雑な面もあり、十分に活用するためにはさまざまな障壁を感じているという声もあがっていおり、柔軟性を持つツールである一方機能の使いこなしが難しいなどの意見も頂き、今後我々の活動としても色々ヒントを頂きました。また、Atlassian JIRAとMiroを併用しているというチームが非常に多く、プロジェクト管理ツールとオンラインホワイトボードツールを組み合わせての運用が、スクラムチームの現場では定番化しつつあると言えるでしょう。

アンケート調査にご協力いただきました皆様、大変ありがとうございました。アジャイル・スクラム実践者としての生のニーズに多く触れることができました。

 

まとめ

 RSGT2024全体を通じ、今年度はアジャイル・スクラムチームが生み出す価値とはなにか、ということについて言及しているセッションが多いように感じられ、現在注目を集めている最前線のトピックであるという印象を受けました。変化に対するリスクを軽減し、プロダクトの品質を確保して価値を素早く市場に届けるアジャイル開発。そんなアジャイル導入により適したプロジェクト管理手法や、アジャイルを促進させる生産性向上ツールの需要の高まりが感じられる内容となりました。我々の提供するアジャイル・スクラムに関するサービスやツールに関しても、いかに価値ある活動を生み出すことにフォーカスしていけるのか、プロダクトの価値を高めることにどれだけ寄与できるのかが今後注力すべきポイントとなるでしょう。

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小林 恭平/Kyohei Kobayashi

小林 恭平/Kyohei Kobayashi

デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員

アジャイルやリーンスタートアップを基にした新規事業開発、基幹システムリプレイス、全社アジャイル導入、アジャイルコーチングなどを手掛けており、筑波大学でアジャイル開発の非常勤講師を務め、新卒研修の講師も務める。 ソフトウェア開発チームで10年以上システム開発、アジャイルコーチを提供し続けている。 また、近年はその経験を活かし、防災DXにも注力しており、中央省庁から地方自治体における実証実験からシステム導入も手掛けている。 著書に『システムテスト自動化標準ガイド』(共著 : 翔泳社)がある。 関連するサービス・インダストリー ・コアビジネスオペレーションズ   >> オンラインフォームよりお問い合わせ