Posted: 01 Nov. 2023 10 min. read

サステナビリティ関連データの効率的な収集により、戦略的活用を促す

ESGソリューションサービスを展開する各社との対談シリーズ

IFRSでのサステナビリティ開示基準や欧州のCSRD/ESRS、SECの気候関連開示規則案の最終化が進む現在、有価証券報告書の開示項目にサステナビリティに関する記載欄が新設されるなど、経営戦略に企業のサステナビリティ対応が求められるようになった。サプライチェーン、Scope3、人権、生物多様性など、サステナビリティ対応の基盤となるESGデータは多岐にわたる。それら非財務情報の収集や分析だけではなく、連結で財務と同じタイミングでかつ制度や内部統制を含む第三者保証が求められる中、テクノロジーの活用は欠かせない。

今回はServiceNow Japan合同会社の中西圭一郎氏と亀山慶人氏にお話をうかがった。

■ServiceNowに注目が集まる
 

中島(デロイト):デロイト トーマツが「ESGデータドリブン経営」というコンセプトを打ち出してからすでに2年程が経過しましたが、現在、企業経営者の皆様は非常に複雑な舵取りを余儀なくされている状況です。地政学的リスクや規制リスクへの対応、バリューチェーン全体を含む社内外の情報連携、短中長期的な時間軸に基づいた戦略、財務/非財務の統合など、様々なトレンドを見極めた上で、経営判断が求められます。また、様々なステークホルダーの意見も考慮しなければならず、おそらく非常に難しい判断を迫られていることでしょう。そういった状況の中、ServiceNowに注目する企業が増えています。

 

中西氏:ServiceNowは、IT領域における運用管理の自動化から始まりましたが、現在は、ServiceNowのプラットフォームを土台とし、クライアントが抱えている様々な課題に貢献できるソリューションを創出・提供しています。

 

中西 圭一郎氏(ServiceNow Japan合同会社 インダストリー・ソリューション・ストラテジー事業本部 製造インダストリーGTM担当ディレクター)
 

ServiceNowを使えば、業務と業務、部門と部門、システムとシステムなどの領域をブリッジし、お互いのコミュニケーションを良くすることができます。それにより、全体のスループットを向上させてサイロ化を解消するという特徴を備えた、とてもユニークなソリューションです。

ServiceNowにはいくつかの重点業界がありますが、その一つがマニュファクチャリングです。私はグローバルのマニュファクチャリングインダストリーソリューションを企画するチームの日本代表を務めております。製造業特有のさまざまな課題がありますが、ServiceNowがあまりアプローチできていなかった課題の一つがESGだと考えています。本日はこのテーマに関して、製造業のお客様が抱いている課題感をお伝えしながらお話できればと思います。

 

亀山氏:私はServiceNow製品部門のESGとIRMのソリューション営業の責任者として、金融、製造、医療、製薬など、幅広く対応しています。

IRM(Integrated Risk Management:統合リスク管理ソリューション)は元々セキュリティオペレーションと一体になっていましたが、2年ほど前にIRMとセキュリティオペレーションを分離しました。ESGのガバナンスについてはIRMでカバーし、Sのところは人事系ソリューションである程度対応しました。Eについては、既存モジュールで対応できていなかったため製品開発に注力してきたというイメージです。

 

 

亀山 慶人氏(ServiceNow Japan合同会社 ソリューションセールス統括本部 リスク&ESG事業部 部長)

中島(デロイト):ISSBでは、今後の課題として①サステナビリティ情報を法廷開示書類に掲載する仕組みを整えること、②気候変動に続くテーマとして、生物多様性や人的資本など、テーマ別の基準を増やすこと、③開示にとどまらず、行動に移して企業価値向上につなげることなどを挙げています。

課題はこれだけではありませんし、業種、業態によっては優先度が異なりますが、これらの情報を財務と同じ連結のバウンダリーで収集しなければなりません。財務諸表と同じ年度を対象に、財務資料と同時の開示が求められます。連結のバウンダリーで、同じタイミングでデータの精度も上げて開示するとなると、テクノロジーの活用が欠かせません。多くの企業はスプレッドシートのバケツリレーでESG情報をグループ内から集めようとしていますが、その方法だと限界があります。テクノロジーの活用が欠かせないということに気づき始めているクライアントも増えています。

そういったクライアントから「どの製品がいいのか」と聞かれることがあります。しかし判断基準や方法が定まっていないため、どの製品を選ぶべきなのか分からないのが実状でしょう。

 

三沢(デロイト):一つ補足すると、ESGのSとして注目されている領域に、外部モニタリングなどのソリューションがあります。例えば、サプライチェーン。どこかで暴動が発生する、あるいはストライキが起こると、サプライチェーンの分断によって物流が停滞するリスクが発生します。こういったリスクもしっかりモニタリングしなければ財務的な影響が出るため、自然言語解析を用いた多国語対応のリスクマネジメントサービスを提供する新たなソフトウェアサービスが多く市場に出てきています。

 

中島(デロイト):サプライチェーンの見える化と、サステナビリティリスクとの関連性ですね。モニタリングによっていち早く変化を捉えて意志決定に繋げていく、あるいは繋げる必要があるかどうかの判断も必要ですね。

 

中島 史博(有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 ESG統合報告アドバイザリー ディレクター)

 

規制対応としてESG情報を集めるより、企業価値に寄与する経営判断のために、取締役会、部門の評価、製品・サービスの問題も含めて、様々なレイヤーから情報を収集する必要があります。M&Aを行う際のデューデリジェンスの一つの要素にもなりますね。R&Dで注力領域を見極めるときに、このプラットフォームは本当に必要なのか、経営の高度化のために今後どうすべきなのかを判断する材料としても必要です。トリガーとしての開示対応はもちろん考慮しなければなりませんが、そういう側面もぜひ考えていきたいと思います。

 

 

■ServiceNowをコマンドセンターとして活用する

 

中島(デロイト):「サステナビリティ関連データの効率的な収集」だけではなく、それらの戦略的活用が重要です。ただし、まだまだ多くの課題があります。

 

三沢(デロイト):主な課題の中に、「基準・規制が定まっていない」、「まだ規制はムービングターゲットだ」という指摘があります。また、ベンダー側のポジションが定まっておらず、データ収集のシステム化は発展途上であるという意見もあります。こういった現状について、ソリューションベンダーはどう見ていらっしゃるのか、見解をお伺いできますか。

 

三沢 新平(デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社 デジタルガバナンス マネージングディレクター)

 

亀山氏:ServiceNowのESGに対する考えは、開示基準や規制があるから実施するというものではありません。課題例として、それぞれの部門が独自にESGの取り組みを実行しているため、会社全体の非財務情報としてのESG情報が経営に届かないという話があります。各部門や子会社が収集したデータ全体を統括するコマンドセンター(司令塔)に送り溜めていく必要があると思います。我々は、そのコマンドセンターとしてServiceNowを使用してほしいと考えています。

弊社のESG製品では最終的に開示レポートを作成しますが、大株主A向け、大口取引先B向け、その他X向けというように、複数形式で柔軟に作成して開示できます。規制を受けてESGに着手ではなく、今すぐに投資家や取引先向けの目線でESGプロセスの高度化をスタートすることができます。この先、さらに様々な基準や規制が出てくると思われますが、規制対応にとどまらず自主的かつ積極的にESG情報を開示し、投資家、取引先からの信頼を勝ち取っていただきたいと考えております。

 

中西氏:データを収集する際は、自社の各部門のみならず、サプライヤーからも取得する必要があります。しかし、そもそもサプライヤーにデータが無い場合もありますね。また、ビジネス上の理由によって開示できないこともあるでしょう。そういう面では大きな課題が残っています。

これはITの実装技術の話ではなく、どちらかと言うとビジネス的な要件や制約が多分に関係しているので、規制当局が要求している情報開示の粒度と、実際の手段との乖離が非常に大きい。この問題を解決する方法としてITに期待が寄せられています。ただ、単純には解決できない部分もあります。テクノロジーが進歩しても、難しい問題は残りますね。

 

中島(デロイト):個人的には、自動化に対する幻想もあるように思います。確かに連携や自動化ができればいいのですが、接続先が膨大だったり、データの定義そのものが曖昧だったりと様々な問題があり、制度設計が困難になっているのではないでしょうか。そういう中で、ServiceNowのコンセプトやモジュール群の構成、ESGマネジメントなどについてお話しいただければと思います。

 

 

■国内企業は、ESGデータを経営に活かすという発想に至っていない

 

中西氏:お客様と向き合う中で感じるのは、現在は情報開示の要求や法規制が主導しているということです。それに対応するために、現段階ではデータを収集・集計することがモチベーションになっています。しかし、そのデータを経営に生かしていこうという発想の持ち主は極めて少ない。こういうことに取り組まれているお客様の層にもよるとは思いますが、日本はまだまだそういう発想でESGに取り組むステージに到達していないという印象ですね。

 

中島(デロイト):実際、我々も開示対応がきっかけでプロジェクトが始まっています。その中で課題になったのは、開示対応のみならず戦略的活用をどう進めていくかについて取締役会や執行側の高いレイヤーで議論していく必要があるということ。その結果を受けて、会社の理念・価値観やリスク・機会の評価と、将来の収益との相関をどう見ていくのか。また、それらのストーリーをどのように構成し、どこに中長期的な目標を設定するのか。さらにどの情報を報告し、誰の責任でPDCAを回しているのかなどをじっくり検討する必要があるでしょう。

 

亀山氏:営業の立場で日本の多くの現場で聞くのは、「さまざまなESG情報を統一的に収集・集計し、開示しなければならないは理解しているが、私の部署の範疇外で、今の私のKPIではない」「私の担当は如何にGHG(温室効果ガス)スコープ3のカテゴリー何番を収集するかだ」など、足元の課題だけをみた話をよく耳にします。おそらくそれが故、個別課題解決ができるポイント的なツールを選んでいるのが実態となっている理解です。各部門や子会社から出てきたバラバラな測定基準のESG情報をサステナビリティ部門がマニュアルで取りまとめているのですが、統合的かつリアルタイムなで分析可能なESG情報ではないため、経営の意思決定に活用できておらず、また説明責任の所在を即座に確認できない状態になっているのではないかと考えています。今のままでは重大事故の発生時などは何も知らされていないCFOやCEOの方が責任を取らされる構図になるのではないかと危惧しております。

上記の仮説が正しいとすると、我々のソリューションは「次」のステージとしてご活用いただけると考えています。つまり、現在お使いいただいている様々なESGソリューションと相互接続することで、自動でデータを収集し、取り込んだ様々なESGデータを弊社ソリューション内で自動集計し、自動集計されたデータを事前定義したダッシュボードや開示レポートの各項目に事前紐付けしておくことで、リアルタイムに様々な切り口でESG情報を可視化することが可能となります。さらに各ESGメトリック(測定基準)のオーナーと全体プログラムを管理するESGプログラム管理者を明確化することができます。今お使いいただいているツールやプロセスをそのまま残していただいた上で、ServiceNowESGをご利用いただければ、経営意思決定の支援ツールとしてのESGコマンドセンターとして、また様々なレポートの基盤としてご利用いただくことが可能となります。

 

 

■CSRDへの取り組みが重要に

 

亀山氏:弊社では新製品が市場投入される前に自社で新製品を利用するというポリシーがあります。GRI, SASB, TCFD, UNSGDSなどの自主開示基準はすでにグローバルインパクトレポート上で対照表を公開し、製品としても市場投入されていますが、CSRDに関しましても、弊社内で利用しているものを製品としてマーケットに供給しています。

 

中島(デロイト):日本企業もCSRD対応に取り組まなければなりません。我々は、それを支援しています。この機会に、日本が主導して連結でCSRDに対応する動きをグローバルで展開していこうという考え方もありますが、実際に立ち上がりを見ると、国内と欧米の組織との間に違いを感じます。

 

亀山氏:欧米はトップが決めたらすぐに実施するという意思決定モデルが多く、日本では数ヶ月や数年をかけて意思決定をするという文化や思想の違いが出ているのではないでしょうか。

 

三沢(デロイト):CSRDについてもお話を伺う機会がありますが、ヨーロッパはスモールスタートが多いですよね。スプレッドシートでスタートするというケースもあります。今後、日本も含めて2028年あたりにグローバル対応が始まるとすると、暫定対応したものが二重投資にならないのか、スプレッドシートでスタートしたものは今後も使えるのか、何かに切り替えなければならないタイミングはどこなのかなど、悩んでいるクライアントに対してアドバイスはありますか。

 

亀山氏:前述しました通り、現在は各部門や子社が個別課題のところだけにフォーカスしている組織体制となっていると思います。理想的には個別メトリック(測定基準)のオーナーの上にESG  プログラム管理者を配置したコマンドセンターを構成することが理想です。コマンドセンターがないと意思決定がバラバラとなり、経営層とバインドできず、経営問題になりかねません。スモールスタートでもよいので、ESGコマンドセンターとしてのプラットフォームの基礎を作ることが重要であると考えます。

 

(図:ServiceNow Japan合同会社様ご提供)


以前のServiceNowは、Platform機能しか提供していませんでした。ただプラットフォーム機能だけでは全く売れなかったため、IT Service ManagementというITTLベストプラクティスの箱を作りました。それが大ヒットし、その後様々なベストプラクティスベースの標準製品が投入され、現在ではESGまで拡張し、グローバルベストプラクティスベースの標準製品として世界中でご利用をいただいております。

 

中島(デロイト):日本も今は遅れているかもしれませんが、いずれ次の段階に進むとしたら、どのような戦略を描いているのか、また、我々と共にできることがあるとしたらどのようなことなのか、何かお考えがございましたらお聞かせください。

 

亀山氏:2020年から2022年にかけて、ServiceNowのマテリアルトピックは変わってきています。最新では、廃棄物や水などの順位はすでに目標を達成していることもあり、あまり高くなく、どちらかと言うとコーポレートガバナンス、事業継続性、データプライバシー、多様性などが高くなっています。マテリアルトピックは我々だけではなく、様々な外部ステークホルダーと一緒に決めています。

弊社ではIRMによるガバナンス強化、TPRM(サードパーティーリスク管理)による社外事業者のリスク管理など他のServiceNow製品を使い、ESGデータを利活用して自動収集しています。これらの製品はそれぞれに別の用途があり、ESG専用に作られたものではありません。そのため、これらのツールとESGソリューションの間に中間テーブルを作成し、ESG管理に必要なデータをそこに置いて必要な情報を欲しい形で取得しています。また、ServiceNowストアにある外部の様々なESGツールなども活用できるようにしています。
 

(図:ServiceNow Japan合同会社様ご提供)



この仕組みで得られた各種ESGデータは、グローバルインパクトレポートなどで開示しています。同様に人事系情報では、弊社のHRSDだけではなく、コミュニティエンゲージメントやボランティアワークのソリューションのデータも利活用しています。

どうすればESGデータ自動的に取得できるのか。収集したデータを経営分析にどう活用し、シナリオをどう評価するのか。欧米では多くの企業がこういったイメージを持っていますが、日本企業はまだまだそこまで至っていない印象です。ぜひデロイト トーマツ様の知見をもって、データドリブン経営を目指す日本企業様がすでにもっているアセットを如何にフル活用して、ESG経営を進めていくべきなのかについての啓発活動を進めていただきたいです。

 

中西氏:まさにこれが我々が感じている課題感です。ESGの中の限られた部分にしかフォーカスされておらず、手段や目的に集中してしまうという印象がありますね。

 

中島(デロイト):どういうスキルがあればこのようなシステム構成が描けるのか、データの流れやレポーティング機能、ダッシュボードなどを誰が設計できるのかについて、必要なスキルやコンピテンシーや組織設計も含めて考えていかないといけません。

 

中西氏:情報システム部門でも、全体が見えている人は意外と少ないですね。エンタープライズアーキテクチャという観点で会社全体を見ることができる人はあまり見かけません。

ソリューションベンダーの中には、包括的なソリューションを持ち、ガバナンスが効いた仕組みがあっても垂直統合というケースもあります。当社のソリューションは、基本的に他社が作っているサードパーティーの仕組みとの共存関係を前提にして作られています。他のベンダーのソリューションとも調和させて最終的にガバナンスをとっていきましょうという考え方です。会社としての戦略の違い、哲学の違いでしょう。

 

三沢(デロイト):そうなると、たとえばカーボンアカウンティングについては外部のツールで計算し、結果のデータをESGマネージメントソリューションに流し込むといった使い方になりますか。

 

亀山氏:ServiceNowの思想は、現在すでに使っているツールがあればそのまま使い続けていただいて、持ってないところは入れていただく。そういう形が一番フィットします。グローバルのカーボンアカウンティングツールはたくさんありますが、その内の4〜5社はすでにServiceNowストアに入っていますし、ストアになくてもデータの連携は可能です。

一部繰り返しになりますが、データ収集を自動化する仕組みについては、自社のツールを使用する、ServiceNow クリエイターワークフローから作成する、ストアから取得する、外部データをCSVなどで投入する4つの方法があります。CSRD/ESRS管理策につきましては、現在XMLで開示していますが、近くストアから取得できる予定です。CSRD/ESRSの開示基準に紐づく測定基準定義もコンテンツとして準備をすすめていますので、ユーザー目線で見るとCSRD対応が非常に楽になると思います。

 

中島(デロイト):TNFDは9月に最終確定する予定ですが、どのように実装されるのでしょうか。

 

亀山氏:TNFDの管理策につきましては、現時点でコンテンツとして用意していません。今後のロードマップとなります。但し、お客様側でTNFDの管理策をお持ちの場合は、容易にESGソリューションにインポートが可能となります。開示対応としましては、その他のフレームワークと同じように管理策と測定基準定義を紐づけることで管理が可能となります。

TNFD開示対応とは少しずれますが、コマンドセンターとしてのIRMを利用すれば、TNFD関連のマテリアルトピックやターゲットに紐づいたポリシーの策定やリスク管理できます。たとえば弊社の場合、「データセンターを建てるときにはこういう建材を使わなければならない」などのポリシーがあります。そのようなポリシー策定のワークフローや、データセンターのオーナーにはポリシーの宣誓やポリシーに紐づくコントロールの証明活動のフローをIRMで実施し、その結果をESG開示レポートやIRに反映させることができます。監査については内部監査、外部監査、SOXにも対応しているので、監査エンゲージメントでESG監査と連携し、リソースを貼ることもできます。リスク管理(特定・評価・対応)も同様にマテリアリティやターゲットに紐づけて、ESGコマンドセンターとしての管理が可能です。

TNFDに限らず、ESG関連のデータ収集には手動入力パターンと自動収集パターンがあり、現在何かシステムを使っているところはそのシステムからデータを自動取得し、システムがないところではESGのワークフローで手動入力し、それらのデータを様々な粒度で集計して最終的には開示レポートとして作成することが可能です。
 

(対談の様子)

 

中島(デロイト):ありがとうございます。御社の特徴について理解が深まり、各企業様にご案内できるのではと思いました。

 

三沢(デロイト):最後に、最終的な目標についてお話をお聞かせください。日本企業は、GHGの計算をする、人的資本のデータを集めるなど局所的なところに目がいっていて、今後は視座を高めていく必要があると考えますが、その先に行くために動いていかなければなりません。ぜひ、日本企業に向けた御社のメッセージ、バリュープロポジションなどをお話しください。

 

中西氏:目指すべき考え方についてお話ししますと、最初のポイントはルールを理解することです。日本のSSBJなどもありますが、基本的にESG関連は海外でルールが作られ、それが日本に持ち込まれます。これを正しく理解しておかないと、どうやって企業オペレーションを回していけばいいのかということがわからなくなります。土台として、ルールを正しく理解できる人材を育てていく必要があるでしょう。

決められたルールに基づいて組織とルールをデザインする段階で、おそらく既存の日本企業の枠組みのままでは対応できなくなります。組織とルールを新しくデザインし直さなければなりません。一過性の取り組みではなく、継続的な取り組みとしてやっていかなければならないので、まずはそこをきちんと形にし、それから徐々に経営にインパクトを与えていく。それがESGの根幹の形と考えます。

 

亀山氏:優秀な学生がESG関連の部署に入社した後、何百・何千ものESGデータをマニュアルで入力し、いくつものスプレッドシートからデータを転記し、データをマニュアルで集計して、データが来ないところにはメールや電話で督促をして……では、双方にとってあまりにもったいないと思います。人間がやらなくてもできるところは自動化し、優秀な人材には如何に測定基準をクリアできるかなどの生産性の高い活動にシフトしてほしいというのが私の考えです。

 

中島(デロイト):それがDXの本質であり、サスナビリティにも繋がりますよね。我々も監査法人として、デロイト トーマツのグローバルネットワークを使って動向を把握し、ルールの理解を促しています。去年から今年にかけてセミナーも多数開催し、組織とプロセスの構築や業務及び組織の設計、業務フローへ展開、システム要件の定義、ベンダー選定に加え、それらを使ってどうモニタリング&ローリングしていくのか、リスクマネジメントやガバナンスをどう高度化するのかなどについて支援しています。今後、皆様と一緒にさまざまな取り組みを進めていきたいと思いました。

 

中島・三沢(デロイト):ありがとうございました。

(左から、三沢、中島、中西氏、亀山氏)

プロフェッショナル

三沢 新平/Shimpei Misawa

三沢 新平/Shimpei Misawa

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー マネージングディレクター

コンサルティングファームおよび外資系ソフトウェア会社にて、デジタルトランスフォーメーション戦略、ビジネスモデル設計、デジタルマニュファクチャリング構想・設計、スマートファクトリー構想・設計、温室効果ガス(GHG)排出量削減を中心としたサステナビリティ戦略などをテーマに、自動車業界および製造業のお客様を中心にビジネス戦略を支えるDXコンサルティング業務に幅広く従事。 デロイト トーマツ グループに入社後は、デジタルガバナンスのマネージングダイレクターとして、自動車・製造業向けに複雑化・不安定化が増すサプライチェーンxサステナビリティxデジタル領域のリスクアドバイザリー関連サービスを提供。

中島 史博/Fumihiro Nakajima

中島 史博/Fumihiro Nakajima

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー マネージングディレクター

有限責任監査法人トーマツ所属。外資系大手コンサルティング会社、サステナビリティコンサルティング会社を経て現職。サステナビリティ経営や脱炭素戦略の策定、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)対応及び気候変動シナリオ分析などに従事。