お知らせ

第97回ITS研究会において2件の研究発表を行い、奨励発表賞を受賞しました

デロイト トーマツ サイバーセキュリティ先端研究所(DT-ARLCS)

2024年5月15日から5月17日にかけて第97回高度交通システムとスマートコミュニティ(ITS)研究会 が沖縄で開催され、当研究所の研究員が2件の研究成果を発表し、内1件が奨励発表賞を受賞しました。研究会において、当研究所の研究員である櫻井 悠次が “Cyber Physical Car: デジタルツインを活用した自動運転向け開発基盤の構築に向けた検討” と題した研究論文について発表しました。また、当研究所の研究員である野本 一輝が “Overpass: セキュリティ評価のための自動運転プラットフォームの提案と評価” と題した研究論文を発表し、奨励発表賞を受賞しました。

研究成果の発表

2024年5月

Cyber Physical Car: デジタルツインを活用した自動運転向け開発基盤の構築に向けた検討

学会・研究会:第199回マルチメディア通信と分散処理・第111回モバイルコンピューティングと新社会システム・第97回高度交通システムとスマートコミュニティ合同研究発表会
著者:櫻井 悠次 (DTCY), 野本 一輝 (DTCY/早稲田大学), 鈴木 将吾, 野村 健太, 高田 雄太, 熊谷 裕志, 神薗 雅紀 (DTCY)
https://sites.google.com/sig-its.ipsj.or.jp/its/conference-event/program_current(外部サイト)

論文概要

自動運転は、昨今の交通社会が抱える様々な課題解決に不可欠な技術として関心が高まっている。日々発生するヒューマンエラーに起因する交通事故や交通渋滞といった問題の改善に向け、多くの企業・組織が自動運転技術の開発に取り組んでいる。自動運転技術の開発や検証では、実車両を使用すると多大なコストが発生するため、シミュレーション環境を利用した手法が多数提案されている。一方で、シミュレーション環境では実世界の環境を忠実に再現することが困難であることから、その検証精度に限界がある。そこで本研究では、デジタルツインを活用した自動運転向けの検証プラットフォームの構築を目指す。デジタルツインを活用することで、シミュレーション環境と実世界の環境の乖離を抑えた上で、低コストかつ柔軟性の高い検証が可能となる。本稿では自動運転の検証プラットフォームを構築する第一歩として、インターネット経由でラジコンを操作可能なシステム: Cyber Physical Car を開発する。本システムが検証プラットフォームの一部として利用可能であることを検証するため、遠隔操作の安定性とリアルタイム性を評価する。評価の結果、本システムは高い安定性とリアルタイム性で遠隔操作や映像伝送が可能であることを確認した。ドライバから操作情報を入力してから、ラジコンが動作するまでの遅延は、38 ミリ秒であった。またラジコンに設置されたWebカメラとドライバが閲覧する映像との間の遅延は約 200 ミリ秒であった。

 

Overpass: セキュリティ評価のための自動運転プラットフォームの提案と評価

学会・研究会:第199回マルチメディア通信と分散処理・第111回モバイルコンピューティングと新社会システム・第97回高度交通システムとスマートコミュニティ合同研究発表会
著者:野本 一輝 (早稲田大学/DTCY), 鶴岡 豪, 小林 竜之輔, 田中 優奈(早稲田大学), 森 達哉 (早稲田大学/NICT/理研AIP)
https://sites.google.com/sig-its.ipsj.or.jp/its/conference-event/program_current(外部サイト)
【奨励発表賞を受賞】

論文概要

自動運転システムは、Adversarial Example (AE) 攻撃に代表される悪意ある第三者による攻撃に脆弱であることが広く知られている。これに対して、オープンソースの自動運転システムを用いた、多くの評価研究がなされている。しかし、これらの研究の多くは、自動運転システムのセンシングから認識、経路計画、制御に至るまでの End–to–End (E2E) の評価を行えていない。センシングや認識までの評価では、自動運転システムに対する攻撃の本当のリスクを正しく評価できないことが指摘されている。十分な E2E 評価が行われない理由として、市販車両に採用される自動運転システムとオープンソースシステムとして実装される自動運転システムとの間にあるギャップが挙げられる。市販車両の自動運転システムは、主にカメラ画像を用いて交通標識を認識し、車両の制御や運転支援を行う。一方、代表的なオープンソースの自動運転システムでは LiDAR センサや事前に記録された道路情報が主に使用され、カメラによる認識は補助的な役割に留まっている。また、市販車両への攻撃評価には実車両を用いる必要があり、十分な評価は困難である。これらの課題に対処するため、本研究では、セキュリティ評価のための自動運転プラットフォーム Overpass の提案と評価を行う。本稿では、カメラ画像に基づく自動運転システムを開発し、シ ミュレーションを用いてシステムの妥当性の評価を行った。システムは、3 つの構成要素 1. 停止標識認識、2. 距離推定、3. 車両制御から構成される。システム全体の E2E 評価実験を通して、提案システムは 約 0.5 [m] 以下の停止誤差で車両を正確に停止させられることを確かめた。さらに、停止標識に対する AE 攻撃が自動運転システムに与える影響について、E2E 評価を行った結果、物体検出器に対する攻撃成功率とシステム全体の攻撃成功率に大きな差があることを明らかにし、E2E 評価の重要性を示した。今後は、車線中央維持機能、衝突回避機能、先行車追従機能の開発を進めるとともに、シミュレーションや実車両を用いた評価環境を整備することで、自動運転システムの包括的なセキュリティ評価を実現し、安全な自動運転の実現を目指す。

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