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グループの豊富な知見を活かしたアシュアランスサービス(保証・アドバイザリー業務)で企業の変革をサポート

シリーズ 監査に進化を 第11回

1968年の創立以来、日本において数多くの企業の監査業務を手がけてきた有限責任監査法人トーマツ。約3,,000名の公認会計士を抱え、監査業務を軸としながら、より高い付加価値を提供する手段として保証業務や、クライアントのビジネスのさらなる成長に寄与する各種アドバイザリー業務を提供している。なぜ今、アシュアランスサービス(保証・アドバイザリー業務)が社会から求められているのか。また、これらを提供するために、公認会計士はどのような経験やスキルを身につけているのか。監査・保証事業本部 アシュアランス事業統括 パートナーの山本大と、監査アドバイザリー事業部 シニアマネジャーの田中亜己子に聞いた。

 

企業が発信している情報を監査の専門家として保証する

外賀:どのような業務を提供しているのか、教えてください。

山本:一つが、企業の発信している情報が正しいかどうかその信頼性を保証する業務、もう一つが会計・監査の専門知見を活かしたアドバイザリー業務の提供です。

まず一つ目の保証業務については、情報の信頼性担保という観点で監査業務に似ていますが、財務情報に限らず、サステナビリティ開示情報やAI・デジタル分野における非財務情報についての保証業務が今後社会から期待されている領域となっています。特に、サステナビリティ開示情報は企業や組織の持続可能性に関するもので、環境的な側面では温室効果ガス排出量など企業の環境負荷や環境への影響に関する開示情報、社会的な側面では人的資本、女性管理職比率など企業の社会的責任や社会的影響に関する開示情報になります。AI・デジタル領域では社会のデジタル化進展に伴う情報の信頼性に係る保証業務などがあります。例えば、ある企業が社内のITシステムを外部のベンダーに依頼したとします。そのベンダーが提供するITシステムに関する信頼性について、生成される情報の信頼性が問題となるため、保証のニーズが生まれます。また、ブロックチェーンやAIなどの新たな技術による情報の生成が今後増えていく中で、生成された情報の信頼性確保についても社会からの期待が高まっています。 

有限責任監査法人トーマツ 監査・保証事業本部 アシュアランス事業統括 パートナー 山本大

 

外賀:なぜ今、保証業務が注目されているのでしょう?

田中:これまで投資家やステークホルダーは、企業を判断する際の指標として主に財務情報に着目してきました。しかし昨今は、単に利益を出しているかということだけではなく、社会的な責任を果たしながら持続的な事業運営を行っているかといったことを見るために、非財務情報の開示も求めるような傾向にあります。

実際、投資家からの要望や期待に応えるために、多くの企業がサステナビリティレポートや統合報告書を作成し、非財務情報を開示しています。中でもサステナビリティ情報は、近年投資家からの開示のニーズが高まっていることから、有価証券報告書においてサステナビリティに関する取り組みを開示することが義務化され、2023年から施行されています。

このように情報開示は義務化されましたが、サステナビリティ情報の信頼性確保に向けた保証基準について、国際的な基準策定が、今まさに進んでいるところです。日本においても、まずは開示の促進からはじまり、将来的には開示情報の信頼性確保についての取り組みが必要となることから、保証を含むその信頼性確保の在り方についても議論が始まっています。

監査・保証業務を入り口にアドバイザリー業務を提供

外賀:二つ目の、アドバイザリー業務について教えてください。

山本:それぞれの業務の細部は異なりますが、我々が持つ会計及び監査における専門的な知見を活かし、企業が抱える課題解決に資するアドバイザリー業務を担うことにより社会からの会計専門家への期待に応えることを目的としています。

有限責任監査法人トーマツ 監査アドバイザリー事業部 シニアマネジャー 田中亜己子

 

田中:J-SOXが良い例ですが、会計基準等のルールは時代とともに変化していきます。また、AIを始めとした新たな技術はもちろん、SaaSサービス等も次々と登場しています。そういったツールやサービスを活用することで、効率化、そしてより高度なガバナンス構築ができます。

一例として、旧来からの経理システムを利用していることにより、データ連携の手間、人手による作業を行うことによる非効率や業務過多、システムのメンテナンスコストの増大等、多くの時間とコストがかかるといったことがあります。このような場合、経理業務の効率化について、ご相談をいただき解決に向けた助言を行っています。

山本:最近は、経理要員等の確保が難しく人材不足に悩まれている企業から、経理業務のDX、効率化、高度化についての助言の依頼をいただくことが増えているように感じています。それだけ企業を取り巻く環境も変化しており、対応方法もデジタル化をはじめ多様化、複雑化しているのだと思います。

監査人として、監査クライアントからこういった課題解決についても相談を受けることがありますが、独立性のルールを厳格に守った上で、提供可能な助言指導のみを行っています。我々は監査や保証業務の独立性を厳格に管理する専門部署を持っており、業務を提供する際に、必ずその部署からの承認を受けることが必要です。トーマツ自体の内部統制を厳しくすることで、我々が提供する業務の品質と独立性を毀損しない体制を構築しているのです。

 

保証・アドバイザリー業務を経験することで公認会計士としてのキャリアが広がる

外賀:公認会計士として、アドバイザリー業務を行うことについてはどのように捉えていますか。

田中:会計士が専門家としての知見を活かしアドバイザリー業務を行うのは、いたって自然な流れだと捉えています。私自身、以前は監査業務だけに従事していましたが、海外赴任をきっかけにより幅広い仕事を経験し、アドバイザリー業務にも携わるようになりました。

現在は、監査アドバイザリー事業部全体の戦略を担う業務にも関与しており、アドバイザリー業務の割合が全業務の6割ほどを占めています。

外賀:保証業務やアドバイザリー業務も経験することで、公認会計士として新たな経験や身につくスキルも多そうですね。

山本:企業が開示している情報の内容を正しく理解するには、企業のビジネスについてより広く深く理解するスキルが求められると考えています。

そして、企業とディスカッションを重ねることで課題抽出ならびに、課題解決に向けたアイデアを見つけるような力が自然と身についていくと考えています。これはアドバイザリー業務にとっても重要ですが、監査業務においてもとても重要になります。特に、サステナビリティやデジタル対応等、企業を取り巻く環境の激しい現況においては、公認会計士としてスキルを磨き、社会からの期待に応えていくことが求められています。

田中:監査業務では、会計基準や内部統制のルールに準拠しているかどうかを検証する業務が多くなりがちです。一方、アドバイザリー業務では、サステナビリティやDXといった様々な領域における課題解決のためのソリューションを導き出すスキルが求められます。監査は企業の健康診断に例えられることがありますが、アドバイザリー業務は、健康かどうかを診断するだけでなく、より良く生活するためにはどんなことが必要なのか提案し伴走していく。そのようなスキルが求められます。

より良いソリューションを導き出すためのポイントは、引き出しをいかに多く持っているかではないでしょうか。実際、アドバイザリー事業部で活躍しているメンバーを見ると、好奇心旺盛でリレーションの構築が得意な方が多いですね。そしてこれはデロイト トーマツ グループの強みですが、多様なバックグラウンドを持っているメンバーが多く在籍していますので、所属に関係なくコミュニケーションを重ねることで、自分の知識の引き出しが自然と増えていきます。

山本:デロイト トーマツ グループでは、個人はもちろんですが、それぞれのチームが専門性をより磨き、業務レベルの向上を図っています。また、インダストリー活動を通じて、コンサルティング等の各ビジネスのプロフェッショナルが頻繁なコミュニケーション重ねているため、ビジネス間の垣根を超えた知見が生まれ蓄積されています。このような組織体制や環境を持つことこそが、デロイト トーマツ グループの強みだと捉えており、クライアントの価値提供につながっています。

一方で、新しいことに挑戦するために個人が研鑽を積むことのできる環境も整っています。

田中:eラーニングのような座学はもちろん、先進的な知見を持つメンバーを講師に招いた最新事例の共有やディスカッション、ケーススタディなど、実践的なスキルを磨くことのできる各種プログラムも充実しています。

そして各人が学びたいことや挑戦を後押ししてくれる文化も、トーマツならではだと思います。実際、私は海外赴任、アドバイザリー業務と自らが関心のある領域をこれまで経験することができたおかげで、公認会計士としてのキャリアの幅が広がっていると感じています。

外賀:社会や企業が直面する課題が複雑にかつ拡大し続ける中、会計・監査の専門性を活かし、新しい領域の保証やアドバイザリー業務を提供している実体験について、貴重なお話を伺うことができました。

より高い付加価値を提供できるよう、会計士が多くの引き出しを持ち、多岐にわたる専門家の知見・ノウハウとデジタル・AI活用を組み合わせたAudit Innovationを推進していきたいと思います。本日は、ありがとうございました。

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