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トーマツだから身につく、これからの公認会計士に求められるスキルやマインドセット

シリーズ 監査に進化を 第12回

AIをはじめとする各種デジタルテクノロジーの浸透、人的資本経営の実践、さらなるグローバル化、サステナビリティなどの非財務情報の開示など、ビジネスを取り巻く環境は急激に変化している。このような環境において、これからの監査法人や公認会計士には、どのようなスキルやマインドセットが求められているのだろうか。有限責任監査法人トーマツ 人材本部長の山田円、監査・保証事業本部マネジャーの野村浩太郎、シニアスタッフの荒井友希恵に聞いた。

 

会計の知識をベースに、各種専門スキルが求められるように

外賀:企業を取り巻く環境の変化とともに、監査の業務内容も近年大きく変わってきています。会計士に求められるスキルも変わってきているのでしょうか。

山田:会計監査のベースとなる知識やスキルがあるのは大前提であり、この部分はこれまでと変わりません。一方で、昨今はDXの浸透、グローバル化、サステナビリティをはじめとする非財務情報の開示、地域課題の解決など、企業が取り組むべき課題は多様化しています。私たちもクライアントから幅広い分野の課題解決についてアドバイスが求められるようになっており、会計士にも各分野の専門知識が求められる場面が増えています。

外賀:そういった時代の変化にどのように対応しているのでしょうか。

有限責任監査法人トーマツ 人材本部長 山田円

 

山田:監査法人における価値の源泉は人です。積極的に「人財」に投資し、クライアントからのさまざまな要望に応えていくことが大きな価値となります。そこでトーマツでは多様なスキルを備えた人財を育成する体制を整えてきました。野村さんも人財育成に携わっていますね。

野村:はい、私は2013年にトーマツに入社して以降、監査業務を軸としながらIPO監査にも関わってきました。3年前からは社内の人財育成に関連する業務にも従事しています。思い返すと学生の頃は小学校の先生になりたかったので、今、人財育成業務に関与しているのはちょっとした縁を感じます。

外賀:荒井さんは現在、広島勤務ですね。

荒井:私は2017年にジュニアスタッフとしてトーマツの福岡事務所に入社後、公認会計士の資格を取りました。2021年から広島事務所に移り、製造業の監査業務中心に担当しています。また野村さんと同じようにIPO業務にも携わっています。

もともと海外志向が強く、学生時代にはオーストラリアでワーキングホリデーを経験しました。前職でも海外と日本の子どもたちの交流事業に携わっており、去年はベトナムに出張をさせてもらいました。

今年9月からは2年間シドニーに赴任することが決まりました。IFRS(国際会計基準)の知見を身につけたり、海外の人たちとのネットワークを構築したりと、今からやりたいことがたくさんあり、楽しみです(笑)。

山田:野村さんはスタートアップのIPOから伝統的な大企業まで幅広く手がけ、人財育成にも携わっています。また荒井さんは福岡や広島といった地方からグローバルへと活躍の場を広げています。それぞれ自分の得意な領域を見定め、着実に成長されているように感じます。どの領域に挑戦するかは人それぞれですので、どんなチャレンジにも応えられるよう、さまざまなメニューを取りそろえるのが組織の役割だと考えています。

荒井:周りを見ても、他の領域に積極的に取り組む仲間が多いですね。チャレンジを堂々と公言でき、希望を受け入れてくれるのもトーマツならではの文化だと感じています。入社4~5年で海外に行く人も少なくありません。

有限責任監査法人トーマツ 監査・保証事業本部 公認会計士 野村浩太郎

 

野村:私が入社したとき同じ部署には20名の同期がいましたが、11年経った今、同じ部署に残っている同期は数名しかいません。また、入社時に「将来これがやりたい」と明確なキャリアを描けていて、今現在、実際にその領域に進んだ同期も数名しかいないように思います。ほとんどの同期は、入社後に出会った経験や人に刺激を受け、新たに挑戦したい領域を見つけていったのだと思います。自分が目指したいキャリアを見つけることができる機会が多くあり、またその挑戦を後押ししてくれる文化が、トーマツらしい組織風土だと感じます。

トーマツに連綿と受け継がれる、チャレンジのDNA

外賀:ビジネスを取り巻く環境が急激に変化し、幅広い分野の課題解決についてアドバイスが求められるようになる中、多様なスキルを備えた人財育成を図るため、新しい領域へのチャレンジを積極的に後押しする環境がトーマツにはあるということですね。

山田:トーマツの創業者である等松農夫蔵先生が提唱した「当監査法人の基本構想」は、現在もトーマツにとって大切なビジョンです。その中のひとつに「努力研鑽を積むことは、生涯の努めである」という言葉があり、私はこれがまさにトーマツの組織風土を示していると思っています。会計士のベーススキルも、常に学ばなければ陳腐化していきますし、常に時代に合わせて学ばなければなりません。この言葉は、変化が激しい現在社会にも通ずる普遍的なメッセージではないでしょうか。

監査業務はデスクワークだと捉える人がいますが、そうではありません。「監査(Audit)」という言葉の語源は、ラテン語で“聴く”という意味を持つ「auditus」です。クライアントとの対話を通じて相手の言葉を正確に聞き、自分の言葉で正しく伝えるコミュニケーション力こそが、会計士に求められるスキルの本質なのです。

野村:「聴く・伝える」ことの大切さは日々現場でも感じています。何気ない会話の中でクライアント自身も気が付いていないような課題を発見し、わかりやすい言葉にして伝えていくことで、将来起こりうる問題を未然に防いでいく、そんな現場でのやり取りを何度も見てきました。このような役割を担うことができるのも、会計士の魅力のひとつと感じています。

山田:等松農夫蔵先生は「個我を脱却して大乗に附く」という理念も提唱され、私はこれを「個を尊重しながらもお互いをリスペクトする」という意味だと捉えています。先の努力研鑽と同様、トーマツに連綿と受け継がれているDNAのようなものだと言えるでしょう。

荒井:トーマツにはこれまでのキャリアはもちろん、持っている知識や文化的背景などが異なる、多様な人財が働いています。お互いをリスペクトするという共通認識があるからこそ、皆が前向きに仕事に臨めるのだと実感しています。

野村:私が入社した頃と比べても、多様化はますます進んでいると感じます。人財育成の業務を通じて後輩のバックグラウンドを聞く機会も多いですが、最近聞いた中でも、学生時代に地震の研究をしていたり、レーザーについて学んでいたりと、会計監査とは全く違う専門性の高い領域に取り組んでいた方々も多くいて、大変驚きました。

また、先日開催した新人研修では「関与クライアントのビジネス・強みを2分間で発表する」というワークショップを実施しました。従前は「自社物流網の強み」や「研究開発への投資」などビジネスモデルに直結する単語が挙がることが多かったのですが、今回は「サステナブル」「人権問題」「脱炭素」といった単語も挙がり、より多様な社会になっていることを感じました。

有限責任監査法人トーマツ 監査・保証事業本部 公認会計士 荒井友希恵

多種多様なスキルが身につく環境や制度が充実

外賀:クライアントニーズの変化に応えようと、多種多様な人財がお互いをリスペクトしながら、努力研鑽を積んでいる旨お話いただきましたが、興味を持った分野へチャレンジする上で、どのような制度や環境があるか説明いただけますか。

荒井:例えば、日々の困りごとやこれからやってみたいこと、キャリアパスなどについて先輩メンバーや上長に相談できる「アセッサー制度」があります。すべてのメンバーにアセッサーと呼ばれる先輩社員・職員が付き、面談を通じて中長期的なキャリア形成についてアドバイスをもらうことができます。加えて年に一度、改めて自分が進みたいキャリアを申告する、自己申告制度も用意されています。

専門領域ごとに実際に携わっている、これから携わってみたいなど興味を持っている人などが一同に集まるコミュニティや「人財プール」の存在も大きいですね。人財プールに参加していると、関連する情報の共有や勉強会、相談会などのインビテーションが届きます。私は「グローバル人財プール」に登録していますが、英語の勉強会の案内が届きます。

外賀:それは良いですね。人財プールへの参加に、資格や試験のようなものはありますか?

山田:特にありません。「やってみたい」「興味がある」という気持ちがまずは大事だと考えているためです。例えばグローバル人財プールであれば、現時点で語学スキルが低い人であっても参加可能です。

人財プールの数は、領域の数だけあります。特に最近はサステナブル領域、テクノロジー領域で多くの専門人財が求められています。人財プールは人財のキャリアを後押しする場としてだけではなく、組織としてプロジェクトに人財をアサインする際のマッチングの場としても機能しています。

荒井:今回シドニー行きが決まったのも、グローバル人財プールに登録していたからだと思っています。

野村:私もグローバル人財プールに参加しています。ほかにIPO人財プールにも参加していましたし、現在は同じセクター内で知見を共有するセクター活動にも参加しています。デロイト トーマツ グループ全体を横断して設けられているコミュニティもあり、興味を強みに変えていくことができる基盤になっていると感じています。

 

トーマツだから30年以上、興味を持って仕事にチャレンジし続けられた

外賀:最後に改めて、トーマツならではの組織風土や会計士の魅力について聞かせてください。

山田:最近はプロジェクトへの参加を、公募する取り組みもはじめました。私は人材本部長として、積極的にこのようなチャレンジや異動ができる環境を整えていきたいと思っています。

一方で、実は自分自身はこれまで異動したことがありません。というのも、異動しなくても幅広い案件に携わることができる環境も整っているからです。実際、自分のキャリアを振り返っても、国内にいながら海外プロジェクトや企業再生案件などに数多く関わってきました。

私たちはトーマツだけで約8,000名、デロイト トーマツ グループで約2万名、グローバルまで含めると約45万名という規模の組織規模を誇ります。当然、そこには多様な業務やプロジェクトがあり、チャレンジしたいという自分の意思があれば、異動の有無に関係なく関わっていくことができます。このような環境だったからこそ、私は30年以上も毎日興味を失うことなく仕事に臨んでこられたのだと思います。

 

荒井:広島事務所にも、広島にいながら東京のプロジェクトに参加しているメンバーがいます。どのような環境にあっても多様なプロジェクトやメンバーと関わりあうことができる、それがトーマツの組織風土であり、魅力だと思います。

野村:入社時、トーマツには明るく元気なメンバーが多いと感じたのを覚えています。せっかく働くなら前向きで元気な組織の方が成長できると思って、トーマツを選びました。入社後も、失敗しても前向きに挑戦する元気な同僚のお陰で、自分も成長できたなと思っています。

山田:トーマツには、野村さんのように高い志を持つ多様な人財が集まっています。様々な領域に興味を持ち、その中で個の強みを活かし活躍する方が多いため、その期待に応えるための施策の立案や推進にやりがいを感じています。

私はこれまで、上司や同僚などまわりの方々と、すばらしい環境のおかげで充実したキャリアを歩むことができました。ですから、次はこれからを担う若い方々が日々を楽しみながら成長できるような環境や制度をさらに整備していくことで、トーマツという組織に恩返しをしていきたいと考えています。

 

外賀: 野村さんや荒井さんが関心のある領域へ積極的にチャレンジされていることを楽しそうにお話されているのを聞くと、トーマツがいかに人財を重視し、多種多様なスキルが身につく環境や制度の整備、後押しする文化醸成に取り組み続けているかを再確認できました。実践を通して習得した知識や経験が深まることで個人のやりがいが更に高まり、より積極的に挑戦し、様々な分野の専門性を合わせ持つ会計士が増え、個人はもちろん組織としても企業の期待変化に応え続ける。このマインドと行動変革こそが、Innovationに繋がると感じました。本日は、ありがとうございました。

 

所属・役職は公開当時(2024年7月)のものです。

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