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欧州の企業サステナビリティ報告指令に基づくダブル・マテリアリティ評価についての解説

#DeloitteESGNow— EUの企業サステナビリティ報告指令に基づくダブル・マテリアリティ評価についての解説

このHeads upでは、EUの企業サステナビリティ報告指令(CSRD)の下でダブル・マテリアリティ評価を実行するための可能なアプローチと、企業が考慮したいさまざまな要因について解説します。

背景

2023年7月31日、欧州委員会は欧州サステナビリティ報告基準 (ESRS) を採択しました。欧州財務報告諮問グループ (EFRAG) によって起草されたこの基準は、欧州連合 (EU) 企業サステナビリティ報告指令 (CSRD)の適用対象企業に補足的なガイダンスを提供するものです。

CSRDとESRSは、インパクトマテリアリティと財務マテリアリティからなる「ダブル・マテリアリティ」の概念を導入しており、ダブル・マテリアリティの評価は、企業がサステナビリティ報告に必要な開示を決定する上で重要なステップです。

CSRDに基づく重要性を評価するために、企業は、事業活動に関連する重要な影響、リスク、機会(IRO)および関連するサステナビリティ事項に関する情報を特定します。

このHeads Upでは、CSRDの下でダブル・マテリアリティ評価を実行するための可能なアプローチと、企業が考慮したいさまざまな要因について解説します。

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ダブル・マテリアリティとは

CSRDは、企業はインパクトの観点または財務の観点から、あるいはその両方の観点からも、重要なサステナビリティ事項を開示すべきであると説明しています。

重要なサステナビリティ事項には、重要なIROが関連付けられ、ESRS ではIROの用語を次のように説明しています。

  • 影響(I):インパクトマテリアリティ評価を通じて特定される、企業の事業に関連する正および負のサステナビリティ関連の影響。
  • リスク(R)と機会(O):財務マテリアリティ評価を通じて特定される、天然資源、人的資源および社会資源への依存に由来するものを含む、企業のサステナビリティ関連の財務上のリスクと機会。

ダブル・マテリアリティ評価

企業がダブル・マテリアリティ評価プロセスおよび関連する内部統制を開発する際に考慮することができる4つの一般的なステップがあります。

  • ステップ1:事業活動(バリューチェーン内の事業活動を含む)を特定する。
  • ステップ2:事業活動に関連する重要な影響、リスク、機会(IRO)を特定する。
  • ステップ3:どのIROが重要であるかを決定する。
  • ステップ4:結論付け、文書化する。

SEC気候規則および国際サステナビリティ基準審議会基準との相互作用

SEC気候規則

ESRSに基づく報告義務を負う企業は、SECに対しても報告義務を負う場合があります。ESRSの財務マテリアリティに関するガイダンスとSECのマテリアリティの定義は異なりますが、基礎となる概念の多くは概ね類似しており、多くの場合、重複しています。しかし、ESRSにおけるダブル・マテリアリティ・アプローチでは、影響の観点から重要となり得る事項の開示がさらに求められています。登録企業が、SEC報告の目的で開示する事項を再評価することにつながるかもしれません(影響の観点からのみ重要と看做される事項を除く)。

国際サステナビリティ基準審議会基準

2024年5月2日、EFRAGと国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、相互運用ガイダンス(interoperability guidance)を共同で公表しました。このガイダンスは「ISSB基準とESRSの両方を適用する企業にとって、複雑さ、断片化および重複を減らす」ことを目的としています。EFRAGおよびISSBは、財務マテリアリティの観点からガイダンスが一致していると述べていますが、ESRSに基づくダブル・マテリアリティ・アプローチでは、企業は影響の観点から重要となりうる追加的な事項を開示することが求められます。さらに、ESRSは、IFRS S1号およびS2号で現在カバーされている事項に追加的なサステナビリティ事項を評価することを企業に要求しています。企業は、いずれかの基準に従って報告していると主張するために、両方の基準のすべての要求事項に準拠する必要があります。

全文はPDF(日本語仮訳)を参照ください。また、原文(英語)は“Heads Up — #DeloitteESGNow — Unpacking the Double Materiality Assessment Under the E.U. Corporate Sustainability Reporting Directive (iasplus.com)”をご覧ください。

サステナビリティ開示・保証の規制動向

日本・ヨーロッパ・南北アメリカ・アジアパシフィックにおけるサステナビリティ開示・保証の規制に関する最新動向を取りまとめています。

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