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AI事業者ガイドライン – 解説
注目あつまるガイドラインについて解説!
2024年4月19日に発行された「AI事業者ガイドライン」※1は、今まで総務省や経済産業省でそれぞれ発行していたAIリスク対策に係る文書群を集約する画期的なガイドラインです。2023年12月に案として公表された際には、1ヶ月間募集されたパブリックコメントにて数千件ものコメントが寄せられるなど、非常に注目を集めました。本記事では、その「AI事業者ガイドライン」の本編※2の概要をご紹介します。
※1 総務省:「AI事業者ガイドライン」掲載ページ
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ai_network/02ryutsu20_04000019.html
経済産業省:AI事業者ガイドライン(第1.0版)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/20240419_report.html
※2 AI事業者ガイドラインには「本編」と「別添(付属資料)」があり、本記事では「本編」を取り上げています。「別添(付属資料)」は別記事で解説する予定です。
AI事業者ガイドラインとは
総務省と経済産業省が作成した、AI事業者の具体的な行動へとつながるよう想定されたAI事業者向けのガイドラインです。「本編」と「別添」に分かれた2つの文書にてAI事業者のガバナンスを解説しており、「本編」では、AI事業者にとってAIの便益を最大化するために重要な「どのような社会を目指すのか(基本理念=why)」や「どのような取組を行うか(指針=what)」 が示されています。また、「別添」では、「具体的にどのようなアプローチで取り組むか(実践=how)」が示されています。
このガイドラインは、広島AIプロセスの指針に従って作成されていることはもちろん、各省庁にて作成されていた既存の複数のガイドラインを束ね、さらに諸外国の動向や新技術の台頭を踏まえて作成されています。事業部門や管理部門での利活用や統制の実務にも踏み込んでいる点からも、広範囲の論点をカバーしていると言うことができるでしょう。
AI事業者ガイドラインの対象者
ガイドラインでは、AI事業における登場人物を3つ定義しています。AIシステムを開発する事業者(AIを研究開発する事業者を含む)である「AI開発者」、AIシステムをアプリケーション、製品、プロセス等に組み込んだサービスとして様々な利用者に提供する事業者である「AI提供者」、事業活動においてAIシステム又はAIサービスを利用する事業者である「AI利用者」です。
そのほか、事業活動以外でAIを利用する者である「業務外利用者」、AI活用の学習用等のデータを提供する特定の法人や個人である「データ提供者」はガイドラインの対象外となります。
上記「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」には、具体的に誰が該当するのでしょうか。この判断は、ユースケースを軸に考えるとよいでしょう。まずは、AIを用いたユースケースを特定し内容を理解します。次に、そのユースケースに関わるステークホルダーを洗い出します。最後に、ステークホルダーの中で自分の位置を当てはめることで、主体を特定することが可能です。
さらなる理解のために、既存のAIシステムや生成AIを題材に「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の例を見てみましょう。注意が必要なのは、例にもある通り、ユースケースによっては立場が複数に及ぶことがあることです。見落としを防ぐためには、自部門の視点だけでなく、業務外利用者を含むステークホルダー全体を考えることが重要です。
AI事業者ガイドラインの要求事項
対象者の区分が分かったところで、ガイドラインの要求事項を見ていきましょう。ガイドラインは章単位で対象が決まっており、自分が該当する箇所を中心に理解する必要があります。本記事では、全員が共通して参照すべき第2部から「C. 共通の指針」「D. 高度なAIシステムに関係する事業者に共通の指針」「E. AIガバナンスの構築」の3つを取り上げて解説します。
C. 共通の指針
これまで国内外の様々な原則やガイドラインで語られてきた、世の中で概ね共通認識のある概念を10の指針として再構成しています。各種文書によって表現も様々でしたが、類似性のある要素等を加味してまとめられたものと考えられます。
人間中心や安全性、公平性などのAIガバナンスの要素はもちろん、教育やイノベーションといった利活用の側面もある指針となっています。
D. 高度なAIシステムに関係する事業者に共通の指針
高度なAIシステムとは、広島AIプロセスにおいて「最先端の基盤モデル及び生成AIシステムを含む、最も高度なAIシステムを指す」ものと定義されています。例えば直近では生成AIが含まれるほか、将来にわたって開発される新しいAIシステムもこの定義の対象となります。
AI開発者に向けた指針と思われがちですが、AI提供者やAI利用者にとってもリスク低減や利活用促進に向けて果たすべき役割が記載されています。
E. AIガバナンスの構築
AIガバナンスの構築は、「アジャイル・ガバナンス」の考え方に基づいたサイクルが記載されています。アジャイル・ガバナンスとは、不確実性の増加する社会において、事前に正しいルールや責任の所在を定めておくことが困難であるため、失敗を許容しつつ、ガバナンスの仕組みを迅速にアップデートし続けるガバナンスモデルのことです。
経済産業省の「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」をベースに構成されており、ガイドラインの別添(付属資料)に詳細な説明や実践例が記載されています。
デロイト トーマツが考える、AI事業者ガイドラインを前にしたAIガバナンスの方法
AI事業者ガイドラインで触れられている通り、AI利活用の促進とガバナンスは同時に進めるものですが、その実施方法は多岐にわたり、企業ごとに最適な方法が異なるため、その実行は容易ではありません。
デロイト トーマツではこの難しい課題に対し、「実践」、「連携」、「反映」の三点を重視し、AIガバナンスの高度化に取り組んでいます。
詳しくはAIガバナンス – 生成AI時代に求められる信頼できるAIの実現の道筋をご覧ください。
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