ナレッジ

4 Faces of CFO

デロイトが提唱するCFO及びCFO組織の役割とは

デロイトの提唱する『4 Faces of CFO』では、CFO及びCFO組織の役割を、「攻め」の役割であるストラテジスト(戦略立案への参画)、カタリスト(戦略実行の推進)、「守り」の役割であるオペレーター(取引処理の実行)、スチュワード(統制環境の整備)、の4つに分類しています。変化の激しい環境下において、企業がその企業価値を向上するためには、CFO及びCFO組織がこれら4つの役割をバランスよく担うことが必要です。

4 Faces of CFO

ストラテジスト(Strategist:戦略立案への参画)

企業および事業戦略の立案は、経営トップや事業ラインのマネジメント層の役割ですが、彼らが戦略を立案する際、シナリオプランニングやシミュレーション、リスク評価などの分析方法を用いて、ファイナンス的視点、時にはタックス的な観点から戦略検証を行い、戦略オプションや意思決定に必要な判断材料を提供し、マネジメントを支援することがストラテジストの役割の1つです。
ファイナンス視点から戦略を検証する際には、事業ラインが自ら立案した戦略に対して持つ「主体的」な見方よりも、より「客観的」な見方をすることが望まれます。勿論これは、戦略に対し過度に「悲観的」、「批判的」な見方をせよと言っているわけではありません。しかしながら、戦略を立案するものは自らの戦略に対し「楽観的」な見方をすることが多いのです。そのため、自らも企業の一員であることには変わりはないが、より第三者的な立ち位置から戦略を俯瞰することが望まれます。この役割を果たすためには、ビジネスや経済環境の変化などの外部情報や過去現在の自社のパフォーマンス情報を収集、分析する能力を「組織的に」保有することが必須要件となります。
ストラテジストとしてのもう1つの重要な役割は、先述のような戦略策定時のサポート的な役割のみならず、ビジネス戦略の実行に必要となる資金を調達・分配するための財務戦略の立案、実行を主導することです。企業および事業の成長ステージやビジネス環境の変化に適した資金調達手段の選択や資本構成、資本コスト水準のあり方を常に検証し、企業価値向上に貢献する「資金ポートフォリオ」を構築していく上で強いリーダーシップを発揮することが期待されています。 

カタリスト (Catalyst:戦略実行の推進)

戦略の実行を推進するカタリストが最初に取り組む役割は、事業ラインなど各組織が戦略を実行していくにあたり、戦略の方向性にあった活動展開を促すよう事業評価指標を設定し、戦略をビジネス現場の活動に落とし込むための年度計画・予算策定プロセスの運営を行い、必要な資源を配分することです。とはいえ、むやみに多過ぎる業績評価指標を設定し、やたらと細部にこだわり、時間ばかりを要する予算を策定することにならないよう注意が必要です。
また、目標の達成に向け、戦略実行組織を継続的にドライブすることも期待されています。そのためには、必要なタイミングで進捗度や当初目標との差異を把握、その発生原因を分析する仕組みを持たなければなりません。さらには、差異を埋め、目標を達成するためのアクションプラン検討にも積極的に関与し、必要があれば、全体最適視点からの経営目標達成に向け資源再配分の提案を行うなど、全社的な調整を率先していくことが期待されます。特に業績が振るわない場合など、殊更に予算統制・牽制面だけを強調し、直に予算の絞込みに走るのではなく、どうすれば目標が達成できるのか、達成の可能性が高まるのかを実行組織と共に考えるなど、戦略立案時とは異なり、主体的且つ前向きな姿勢で戦略に取り組むことが必要です。
カタリストとしての役割を果たしていくためには、ストラテジスト同様、情報の収集、分析などファイナンス関連の高い能力が必要とされるのは勿論のこと、アクションプラン立案や当初計画修正などに際して、ビジネスそのものに関する深い洞察力、さらには、チェンジエージェントとしての役割を遂行していくための調整力や交渉力などの能力を保持していることも同時に求められます。 

オペレーター (Operator:取引処理の実行)

CFO及びCFO組織にとっての基本的な役割です。販売活動、購買活動などの諸活動から流れてくる各種取引伝票を迅速且つ正確に処理し、会計帳簿を作成します。この役割を遂行するにあたっては、業務そのものの「品質」と他部門への「サービスレベル」、そしてこれらに掛かる「コスト」のバランスを常に意識することが重要です。
コストが抑えられれば、品質が悪くてもよい、という類の話ではありません。業務品質、サービスレベルの向上が必要となれば、短期的にはコスト増となるとしても、業務標準化やシェアードサービスセンターを用いた業務集約化など会計業務関連のBPR(Business Process Reengineering )を実施することも重要な役割となります。従って、日常業務を確実にこなす能力に加え、プロジェクト単位での非日常的な業務を遂行する能力も必要とされます。
少し大げさな言い方ではありますが、基本的なこの役割を確実にこなせないようでは、「攻め」の役割であるストラテジスト、カタリストに時間とリソースを割くことはできませんし、すべきではありません。まずは、信頼性の高い基礎情報、サービスを提供することに集中すべきです。 

スチュワード (Steward:統制環境の整備)

米SOX法や内部統制報告制度への対応により、ここ数年最も注目と注力が集まっている役割であり、主な目的としては、企業の有形無形の財産を保全することにあります。例えば、財務報告に関する内部統制やコンプライアンスの観点から、関係関連法規制の動向をモニタリングし、内部統制文書や社内規程などの作成、これらの運用体制の構築により、社内に規律をもたらし、法令順守やリピュテーショナル(企業の「評判」)リスクによる企業価値の毀損を防ぐと同時にオペレーターとして実行した取引処理の結果を基に、タイムリーで正確な財務報告を作成、公表し、株主や投資家など外部ステークホルダーとのリレーションの維持に努めることが要求されます。
適正なコントロールが行われているか否かの最終判断は、財務報告の信頼性の評価を以って行われるのですが、この役割にてコントロールを行う対象は、会計処理=金流に限らず、商流、物流、情報流を含むことから、CFO及びFO組織には会計知識だけでなく、ビジネスの仕組みそのものに関する理解力がこれまで以上に要求されています。また、インベスターリレーションズ(以降、IR)において、外部ステークホルダーに自社の現状と将来の姿、そこに至るまでの戦略を正確に伝えるためには、ビジネス理解力に加え、高いコミュニケーション能力も求められます。
更には、国際会計基準の導入が本格化した場合、企業グループレベルで統一会計ルールの検討、導入に主体的な役割を果たしていく必要があります。 

戦略的課題に向けたCFOの挑戦

日本CFO協会の財務マネジメント・サーベイにおいて、デロイトが提唱するCFO及びCFO組織の役割論『4 Faces of CFO』に沿ってCFOに対し調査を行いました。この結果を踏まえ、CFOがどのような課題を重視し、また将来的にどのような課題に挑戦しようと考えているのか、報告します。なお、本内容は、日本CFO協会発行「CFO FORUM 2010年12月10日号」の一部を抜粋して掲載しています。 

(1.73 MB, PDF)
お役に立ちましたか?