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ナレッジ
グローバル リスクマネジメント サーベイ第12版
動く標的:不確実性の中のリスクとレジリエンスへの再フォーカス
COVID-19が金融機関に与える影響や景気後退、労働慣行の変化は、リスク管理に幅広い影響を及ぼしてきました。 今後、リスク管理はどのように対応し、どこへ向かうのでしょうか。
エグゼクティブ・サマリー
2020年、COVID-19が引き起こした国際的な公衆衛生上の危機に世界が対応を迫られる中、金融機関のリスク管理は、今の人々の生涯において知る限り最も大規模かつ広範な困難に直面しました。ウイルス拡散を抑制しようと政府、企業、消費者が講じたさまざまな措置によって、急激な景気後退と広範な社会的影響が引き起こされました。年末までにいくつかのワクチンの臨床試験で有望な結果が発表されたものの、感染者数と入院患者数は再び急激な増加に転じました。2021年そしてそれ以降の見通しは、COVID-19の感染拡大を抑制できるかどうかに大きく左右されることから、現時点では依然として不透明です。
デロイトによるリスクマネジメントサーベイは、2020年3月から9月にかけて、世界がパンデミックに襲われた未曾有の時期に実施されました。金融機関にとって今後2年間に最も重要性が高まるトレンドは何かという問いに対し、回答者が最も多く挙げたのは、現在の局面と密接に結び付いている問題、すなわち世界金融危機(48%)と世界的パンデミック(42%)の二つでした。
パンデミックによる環境の変化によって、多くの重要な問題、特に非財務リスクを効果的に管理することの重要性が高まっています。
- 金融機関が急に従業員に在宅勤務を命じたため、オペレーショナルレジリエンスプランは実際の場面でストレステストを受けることとなりました。
- ここ数年深刻化していたサイバーセキュリティの問題は、コロナ禍で一段と大きくなっています。従業員が金融機関のファイアウォール外のデバイスを使って仕事をするため、サイバー攻撃を受けやすくなっていることがその一因です。
- 従業員による顧客との会話に、不適切な行為や規制要件の不遵守を特定するために設計された人工知能(AI)や自然言語処理技術(NL)が適用されない可能性があるため、コンダクトリスクとコンプライアンスリスクは高まる可能性があります。
- リスク意識の高い企業風土は、コンダクトリスクを管理する上で重要な要素ですが、従業員がリモート勤務の場合にはその実現が難しくなります。金融機関は、オフィスや社外で同僚に直接会ったことがない従業員を新しく雇用する際に、いかにしてコミュニティの感覚を作り出し企業文化や価値観を生み出すのかについて、検討する必要があります。
- もう一つの懸念事項はイノベーションです。金融機関は、オンライン勤務が長期化する中でも、イノベーションについていくことができるでしょうか?金融機関は、オンラインのイノベーションラボのケースなど、着手段階が特に難しく、異なるスキルが必要とされる場合があることを認識した上で、新しいアプローチを探求する必要があるでしょう。
- 環境(気候を含む)・社会・企業統治(ガバナンス)リスク(ESG)は、2020年に一段と注目を集めました。人種的正義や平等性の向上を支持するデモが広く行われ、企業のより広範な社会的責任に対する関心が高まりました。
COVID-19はまた、金融機関に直接的な財務的影響を及ぼしています。経済活動の縮小によってリテール顧客と法人顧客双方の信用リスクが大幅に高まり、多くの金融機関が信用基準の厳格化という形でそれに対処しました。また、顧客データの不正使用、未完了の作業への請求、不正な第三者との癒着といった不正行為が増える可能性も高まっています。
収益が圧迫される中で、多くの金融機関は、増え続けるリスク管理コストの削減への取り組みを強化する可能性が高いとみられます。その有望な手段の一つは、先端テクノロジー(コグニティブアナリティクス、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、機械学習、自然言語処理、デジタルツールなど)の活用によって手動タスクを自動化し、コストを削減することです。しかし、いわゆる「デジタルリスク管理」は、コスト削減に留まらず、エラーの削減、制御の改善、潜在的なリスクイベントをリアルタイムで特定し予防措置を講じるなど、リスク管理の有効性の向上に広範な利点をもたらします。
デジタルリスク管理を実現する際に多くの金融機関が直面する課題の一つに、こうしたテクノロジーにとって必要な、包括的で高品質かつ適時のリスクデータが不足しているという事実があります。このようなデータ面の問題は、従業員のリモート勤務によって、より多くのデータがより多くのデータソースから生み出されるようになったコロナ禍の期間に、深刻化しています。
継続的に実施しているサーベイシリーズの最新版であるデロイトの「グローバルリスクマネジメントサーベイ第12版」では、金融業界におけるリスク管理実務や業界が直面している課題を検討します。本サーベイは2020年3月から9月にかけて実施され、世界各国の幅広い金融業界で事業を展開する金融機関57社が参加しており、参加企業の総資産は合計27兆2,000米ドルに上ります。
原文:「Global Risk Management Survey, 12 edition」(PDF、3,305KB)
翻訳:「グローバルリスクマネジメントサーベイ第12版」(PDF、4,582KB)
※グローバル リスクマネジメント サーベイ 第11版と合わせてお読みください。