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ブロックチェーンの相互運用性とプラットフォームの考慮事項
サプライチェーン、国際貿易、およびインダストリー4.0の観点から
ブロックチェーン技術の出現は、サプライチェーン領域に大きな期待をもたらせています。しかし、ブロックチェーンの展開にあたり障壁となるのが、相互運用性に対する懸念です。今回、世界経済フォーラムとデロイトは、サプライチェーン、国際貿易、およびインダストリー4.0の観点から見た相互運用性の課題とその解決案について考察しました。
ブロックチェーンの相互運用性の課題
デロイトと世界経済フォーラムが協働しているインダストリー4.0(外部リンク、英語)センターや、Redesigning Trust:Blockchain for Supply Chains(外部リンク)というマルチステークホルダーコミュニティの調査から、ブロックチェーンの展開を妨げる主な障害として相互運用性が挙げられました。
図1 : 現在のブロックチェーンソリューションは、既存の小規模なエコシステムを中心に形成されています…
図2 : …しかし実際には、グローバル貿易サプライチェーンは複数のエコシステムを横断しています
世界経済フォーラムのマルチステークホルダーコミュニティは、次のような重要な質問を問いかけています。
- ブロックチェーンは相互的な会話に対応しうるのか?
- 業界のスタンダードとなる単一のグローバルブロックチェーンプラットフォームは実現できるのでしょうか?
- どのブロックチェーンプラットフォームを、私たちは選んだら良いのでしょうか?
- 私達の現在の通信プロトコルを、アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)に向上させるだけでは不十分なのでしょうか?
ブロックチェーンの相互運用に向けた枠組み
このレポートは、サプライチェーンの意思決定者向けに設計されたフレームワークを通じて、包括的で相互運用可能で整合性のある意思決定を導き、ミスステップを減らし、主要な慣行を組み込み、責任あるブロックチェーンソリューションの普及を加速するために作成されました。
また、ブロックチェーンの相互運用性の課題を説明し、さまざまなシナリオの課題に対処するためのアプローチを7つのセクションで紹介しています。
- ブロックチェーンの相互運用:その背景と定義
これまでのブロックチェーンソリューションは、比較的単純なユースケースのために、既存の小規模なエコシステムを中心に形成されてきました。複数のエコシステムと交差し、複数のブロックチェーンプラットフォームを利用するグローバルサプライチェーンのブロックチェーンで期待通りの成果を実現するには、相互運用性が重要です。 - ブロックチェーン相互運用モデル:三層のレイヤーによる分類
ブロックチェーンソリューションの相互運用モデルでは、ビジネスモデル、プラットフォーム、インフラストラクチャの三層のレイヤーにまたがって要件を構築する必要があります。本レポート内で提供されるフレームワークは、各レイヤーの課題と考慮事項の分類に役立ちます。 - 相互運用に向けたアプローチ
ブロックチェーンの相互運用に向けて、三種類のアプローチが存在します。相互認証、オラクル、およびAPIゲートウェイです。それぞれのアプローチには長所と短所があり、その使いやすさは、相互運用性を目指すシステムの種類によって異なります。 - 適切なアプローチの選択
組織が適切なブロックチェーンの相互運用性アプローチを判断できるよう、本レポートでは、システムの種類とコンソーシアムの種類に基づいたソリューションを、相互運用性のニーズに応じて事業背景から検討するためのフレームワークを紹介しています。 - 相互運用性ソリューションの現状
企業向けブロックチェーン間ソリューションの相互運用への展望は、未成熟のままです。APIソリューションは一般的に成熟度が高い一方で、他の課題が生じる可能性があります。この節では、相互運用性ソリューションの現状と、最も一般的なブロックチェーンプラットフォームを接続する機能について説明します。 - 相互運用性ケーススタディ
この節では、ふたつの具体的事例で、どのようにブロックチェーンの相互運用性が実現されているかを詳しく説明し、白書に記載されているツールをどのように適用できるかを示します。 - 相互運用性要件チェックリスト
チェックリストは、組織が提示されたブロックチェーンの相互運用性要件を明確にする取り組みを体系化する際に支援するために提供されます。
デロイトの2019 グローバルブロックチェーンサーベイに対する企業幹部の回答者の大多数は、ブロックチェーンテクノロジーが組織にとって重要な優先事項となっており、昨今の焦点は「ブロックチェーンは機能するのか」から「ブロックチェーンを私たちにどのように機能させるのか」に移行したと述べています。この結果から、相互作用は、この課題に対処するための重要なコンポーネントになっていると言えるでしょう。