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英当局を中心とした、オペレーショナル・レジリエンスの最近の動向と対応
オペレーショナル・レジリエンスへの対応事項への準備
2019年12月に英当局(PRA、FCA、BOE)が、オペレーショナル・レジリエンスのコンサルテーションペーパーをアップデートし、対応事項や実施時期を明確にしています。重要業務の決定や影響許容度の決定などが求められており、2021年後半の実施が予定されています。対象は英金融機関ですが、グループベースで実施する事項もあり、また、グローバルに当局が関心を高めており、早めのリスク管理態勢の整備、対応・準備が必要です。
オペレーショナル・レジリエンスを取り巻く状況・環境
2018年7月に英国BOE, RPA, FCAが、「英国金融機関のオペレーショナル・レジリエンスの態勢構築について」の共同ディスカッションペーパーを公表後、2019年12月に「オペレーショナル・レジリエンスの構築:重要業務の影響許 容度について」というコンサルテーションペーパー(CP)を公表し、対応事項や実施時期を明確にしています。また、オペレーショナル・レジリエンスの定義も明確となり、「金融機関等が業務中断事象(Operational disruptions)を、回避・適応・対応・回復・学習する能力」、としています。
オペレーショナル・レジリエンスを取り巻く状況・環境EBAも同時期にデジタルオペレーショナルレジリエンスに関するするディスカッションペーパーを公表した他、バーゼル委員会のオペレーショナル・レジリエンスWGでも引き続き検討が進む等グローバルに監督当局も関心を高めています。
オペレーショナル・レジリエンスを取り巻く状況・環境
英当局公表のCPの内容
英当局が2019年12月に公表したCPでは、適用対象、実施時期、実施内容を明確にしています。適用対象は英国金融機関ですが、影響許容度や自己評価はグループベースで実施が必要としており、実施時期は、2020年中にガイダンスとして取りまとめた後の2021年後半に実施を予定しています。実施事項は、重要業務の判定と影響許容度の決定の2点が主な実施事項となります。重要業務は、顧客、英金融マーケットへの影響、安定性等を勘案して各金融機関で判定する必要があり、影響許容度は、判定した重要業務について、業務の中断が最大限度耐えられる時間(24時間等)として決定する必要があります。
英当局公表のCPの概要
重要業務、影響許容度とは
重要業務とは、金融機関の顧客へのサービスが中断すると、①顧客に耐えがたい損害を与える、②マーケット機能に損害を与える、③保険契約者の保証・補償を脅かす、④安全性・健全性を害する、⑤金融の安定性を害する、ものをいいます。すなわち、顧客保護と金融機能の安定性の維持という観点から重要性を判定することになります。重要度は金融機関の規模や顧客ベース等で異なり、CPでは、例として、テレホンバンキング業務、投資事務業務、証券預かり業務、自動車保険の更新業務、銀行の決済業務、ATM現金引出機能、投資銀行の通貨ヘッジサービス提供等幅広く挙げられています。
影響許容度は、判定した重要業務について、業務マッピング(対応する人員、提供場所、システム、外部委託者、データ内容等)を行った上で、顧客や金融マーケットの視点で当該業務が中断した場合に最大限度どこまで耐えられかを勘案し、耐えられる時間として設定します。テレホンバンキングを例にとると、顧客がオンラインバンキングや近隣の支店が利用可能か等の代替手段の活用を考えて、最大限度業務中断が耐えられるレベルを12時間にする、としています。ここで重要なことは、金融機関側から復旧に何時間かかるかという視点ではなく、顧客の視点で耐えられる時間を決める、ということです。
重要業務の例
今後の対応の方向性
英当局のCPにより、オペレーショナル・レジリエンスの対象範囲、対応事項、実施時期が明確にされました。本邦金融機関を含め、各金融機関は、対応部署、責任部署を明確にした上で、グローバルベースで態勢を構築し、現地で必要な対応事項とグループベースで必要な事項とに分けて役割分担を考えていく必要があります。さらに、英当局は、オペレーショナル・レジリエンスのCPと同時に、外部委託・サードパーティーリスク管理に関するCPも発出して両者を相互に関係付けており、外部委託・サードパーティーリスク管理に関する態勢構築も同時に視野に入れる必要があります。
EBAが英当局の動きに合わせてCPを公表したように、今後、バーゼル委員会の動向をはじめ、米当局、本邦当局の動きを注視していく必要があります。業務の強靭化というテーマは、金融テクノロジーの進展や環境変化を踏まえて生じたもので、そもそも英マーケットのみに特徴的なものではなく、各金融機関においては、グローバルな規制動向への対応とともに、これまで実施してきた外部委託管理、BCM、RRP等を一度再整理して、自グループの業務継続をいかに本源的に強靭にするかを検討する必要があります。
影響許容度の例