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サステナビリティを支援する金融の新たなカタチ

自然保護債務スワップとポリティカルリスク

債務不履行に陥った途上国の中には気候変動の影響を受けやすい国が多く含まれます。生物多様性確保などの社会的課題に対処するため、各国政府機関が資金を提供していますが十分とは言えず、民間セクターの資金調達が重要になります。自然保護のための債務スワップは、債務を抱える途上国の問題解決と地球環境保護に貢献し得るとの期待があります。また、官民が提供するポリティカルリスク保険が、自然保護債務スワップのストラクチャを支えています。

サステナビリティを支援する金融の新たなカタチ

自然保護債務スワップとポリティカルリスク

生物多様性は地球上のあらゆる地域で減少し続けており、生物多様性の重要性が強く意識されるようになってきています。生物多様性確保のためには大規模な投資が必要となり、各国政府機関が資金を提供していますが十分とは言えず、民間セクターの資金調達がより重要になります。

最貧途上国のうち50カ国以上が債務不履行に陥り、その中には世界で最も気候変動の影響を受けやすい上位50カ国のうち28カ国も含まれています。そこで、気候変動や自然保護のための債務スワップが、債務を抱える開発途上国の問題解決に少しでも貢献し、気候変動や自然保護に追加的な資源を振り向ける方法となるのではないかと考えられています。

「自然保護債務スワップ(Debt-for-nature swaps)」は、開発途上国に対して、自然保護の推進にコミットすることを交換条件として、先進国やNGOなどが当該国の累積債務を肩代わりするものです。近年金額規模の大きな案件が続いており、本稿では自然保護債務スワップの事例を紹介し、そのストラクチャやそれを支えるポリティカルリスク保険について説明しています。

自然保護債務スワップは下図のようなカタチをしています。まず、対外債務を抱える開発途上国の債券を、国際機関やNPO等が債権国や債権者から買い取ります。債務を肩代わりした機関は、自然保護に取り組むプロジェクトの遂行を条件に、債務国の債務を全部または一部帳消しにします。債務国はブルーボンドを発行するなど新たな資金調達を行い、自国の自然保護に取り組むプロジェクトのスポンサーとなり運営費用を負担します。

自然保護財務スワップは財政的に脆弱な開発途上国の対外債務を削減し、同時に自然保護を推進するものです。開発途上国の対外債務は高い金利を課せられていますが、自然保護を推進する国際機関やNPO等による保証やポリティカルリスク保険の提供によりリスクが削減され、金利を押さえた債券への転換を可能にしています。

開発途上国投資におけるポリティカルリスク保険は、リスクが高く、マーケットが未発達であるために様々な困難を伴います。巨額な国家債務のスワップに伴うリスクを引き受けるには、当該国家やその通貨、政治経済情勢などの専門的な知識が必須となります。また、開発途上国が置かれている不安定な地政学的状況があり、ポリティカルリスク保険の分野は容易に参入、事業拡大できるものではありません。

一方で、将来の地球環境を考えれば開発途上国における自然保護の必要性はますます高まっており、民間投資の促進を支援する方策として、官民協調による取り組みが求められています。

 

≪自然保護債務スワップのストラクチャの概念図≫

(参考)Melissa Moye, Debt Relief International Ltd, “Overview of Debt Conversion”, 2001.

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