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2022年グローバルIFRS第17号調査
IFRS第17号の導入の旅は終わりを迎えようとしており、数社の保険会社は2023年に本番を迎えるための準備を行っています。私たちはグローバルな保険会社に対して調査を行い、準備の状況、認識、テクノロジーおよびIFRS第17号が2023年以降に及ぼす影響を観察してみました。
デロイトはEconomist Impactの後援者として、IFRS第17号の導入に関与した保険会社の幹部360人に対して調査を行いました。この調査により、IFRS第17号に関する保険業界のまとまった意見について新しい洞察が生まれています。
私たちの主な発見事項は4つの主なテーマが中心となっています。
- T2023年から100ヶ国以上で導入されるIFRS第17号の適用から生じる財務報告の公平な競争環境に対する保険業界の評価
私たちは、生命保険契約の一部の重要な種類の商品についてIFRS第17号の主な要求事項への準拠を回避するために欧州連合(EU)が決定した選択肢の提供の影響について、保険会社の幹部の方々の意見を記事にしています。この選択肢はEUを拠点とする保険会社のみ利用可能です。 - IFRS第17号のテクノロジーの側面
調査に参加したすべての会社は、これがIFRS第17号の行程において最も重要な側面であることを認めています。私たちは、IFRS第17号により引き起こされたシステム変更の規模を分析しました。保険会社がソリューションの調達および広範なアーキテクチャーの統合にどのようにアプローチをしたのかを見渡すことで、作業がほぼ完了した時点での最終的な見通しを提供します。 - IFRS第17号での新しい財務業績の準備 社内および社外の利害関係者の期待値をマネージするというテーマは、2022年6月における準備態勢および2023年に向けたIR戦略を構成する要素という点で、幅広い見方をもたらしています。2023年、保険会社はIFRS第17号に基づく新しい財務情報を雪崩のように公表する予定です。私たちは、そこで使用されると思われるアプローチについて考察します。
- 導入後
私たちの調査は、保険会社の幹部の方々IFRS第17号により引き起こされた変化の動きを取り入れる場合の意気込みについて質問をしました。保険会社はIFRS第17号を、財務および数理機能の近代化の行程を継続するための触媒として使用するのでしょうか。私たちは、最近の実績や、幹部の方々が財務機能に対して持つ近代化の野望が充足されていないことを実地調査し、認知されている便益について考察します。
さらに、私たちは、調査結果の統計的大要も公表し、Economist Impactから入手したデータをより個別の関心事に深く入り込むことができるようにしています。
1番目の報告書では、Economist ImpactチームはEUを拠点とする参加者からの回答に焦点を当てています。EUでエンドースされたIFRS第17号は、国際会計基準審議会が発行した本来の原文と比較して主な差異が生じています。その差異とは、IFRS第17号の主な要求事項の一つについて任意の免除を追加するもので、EUのエンドースメント・プロセスにおける多くの利害関係者は、EUで広く観察される特定の種類の生命保険商品に強制的に適用されるべきではないと考えています。
本調査では、EUに本部を置く大多数の保険グループはEUの免除を任意に適用することを選択することが強調されています。この選択はIFRS第17号が世界中にもたらす公平な競争環境というメリットを大きく弱めるものではないという圧倒的な感情が示唆されています。調査の参加者は、EUの免除については開示を行う予定であることに言及しています。
全4回シリーズの2番目の報告書では、Economist Impactチームは調査におけるテクノロジーの検討について焦点を当てました。IFRS第17号に準拠するために必要なテクノロジーのために消費した労力は当初の予想を上回ることが多いですが、予想を超えたメリットもあったようです。調査で明らかになったように、透明性が高まり、アジャイルな財務の能力が高まったのは、パッケージ・ソフトが新しい情報を捕捉することで、以前は不可能であった新しい分析が提供されるようになったためです。
IFRS第17号プロジェクトは複雑で、予想よりも長期にわたり、コストも計画よりも高く、より広範なスキルを持った人材が必要であったことがよく報告されます。また、こうした結果は、異なる事業上のシナリオによる差がありませんでした。データの補足と分析は継続的なテーマであり、保険会社はデータの粒度とガバナンスの要求は、パッケージ・ソリューションの統合およびテストが進むにつれて主要な検討事項でありました。こうした課題に取り組むための根本的な能力を構築することの必要性は、財務および事業上の情報の報告と管理を改善するための新しい機会となりました。
全4回シリーズの3番目の報告書では、どのように投資家に対して新しいIFRS第17号の財務言語を使用するのか、2022年グローバルIFRS第17号調査の参加者の意見を報告します。補助元帳の構築、新しい勘定科目の導入、データの準備、数理モデルの更新に焦点が当たることで、IFRS第17号では数字そのものの見方や事業の業績に関するストーリーを見失いがちです。
依然として、IFRS第17号は、従前の保険会計基準で暫定的な解決策として設計されていたいIFRS第4号と比較すると根本的に異なっており、比較することが困難です。その数字は単なる新しいBSやPLに追加的で詳細な開示が加わるといった以上ものです。調査では、IFRS第17号の新しい世界を理解する上で2つの側面が際立たされています。
- 経済的な測定値と保険契約の期間にわたる利益の平準的な解放が混在している。
- 保険収益が予想保険金および費用に継続的に調整されることで、異なる商品間の収益と利益をより直接的かつ理解可能な形で比較が可能となる。
基準書の導入が継続すると将来はどのようになるのか?全4回シリーズの最終回では、IFRS第17号の導入によってコストを上回るメリットがあったのか、2022年グローバルIFRS第17号調査の参加者の意見を報告します。導入のための多額の投資は会計処理の変更により、保険会社は基準書への準拠以上の長期的なメリットを期待できるのか、またそのメリットはどのように享受されるのでしょうか。
半数近くの調査の参加者は、テクノロジーの改善により新しい可能性がもたらされたと言います。変化の結果として新しい機会やメリットの可能性が生じています。調査では、多くの保険会社がIFRS第17号の世界に突入したことを示しており、こうした潜在的なメリットを収穫するために動いていることが示されています。
- 保険会社は導入作業の一部を完了していますが、依然としてするべきことはあり、2023年はこうした残存する側面を完了するために注力しています。
- IFRS第17号の導入はほぼ完了したものの、多くの保険会社はテクノロジーの改善により事業を改善し、データの粒度を上げ、投資家や市場が理解および比較を容易にできるような数字を作成するようにする予定です。
デロイトの後援により、Economist Impactは、2022年5月と6月にIFRS第17号に関する見方について保険会社の幹部360人に対して調査を行いました。本調査は、2023年1月1日に発効する数ヶ月前に実施しています。
調査結果大要は、調査参加者に対する質問と回答を再掲したものです。このデータの結果は、デロイトが講演した4つの側面の基礎となっています。