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電気自動車のリスク
自動車保険のリスクの変化を追いかける
気候変動対策は世界全体の喫緊の課題であり、各国は電気自動車(EV)への転換策を繰り広げています。世界的に急速にEVの販売台数が伸びてきており、日本でも今後EVへのシフトが進むと考えられます。EVは大容量のリチウムバッテリーを搭載するなどガソリン車とはリスクが異なっており、事故の発生や損害の態様が変わってくる可能性があります。本稿では、急速に利用拡大するEVについて、そのリスクを保険の観点から追いかけます。
電気自動車のリスク - 自動車保険のリスクの変化を追いかける
気候変動対策は世界全体の喫緊の課題であり、化石燃料からの転換が急がれます。陸上運輸はエンドユーズセクターの二酸化炭素排出量の3分の1以上を占めるとされ、自動車の燃料としてガソリン以外のものへの転換が求められています。世界各国は電気自動車(EV)への転換策を繰り広げ、さまざまな補助や免税を行っています。加えて原油価格の高騰がEVへの移行に拍車をかけ、欧州および中国では急速にEVの販売台数が伸びてきました。日本においてはハイブリッド自動車が主流となっていますが、今後EVへのシフトが進むと考えられます。
EVはガソリン車とは車体構造や機能が異なり、所有・使用または管理に関するリスクが異なっていると考えられます。自動車保険によってリスク転嫁を図ってきましたが、事故の発生や損害の態様が変わってくる可能性があります。その変化を保険データとして計測するには一定のデータ蓄積を待たなければなりませんが、EVの安全に関する実証的な検証が各所で進められています。
EVの利用拡大がもたらすリスクの変化により、保険事業においても次のような点でEV対応が必要となってくると考えられます。
- リチウムバッテリーのリスク
EVのリスクを特徴づけているのはリチウムバッテリーです。保険の観点からは、所有・使用中の自動車保険だけでなく、商品として輸送する際の貨物保険、EVの製造・販売に関わる賠償責任保険などでも、バッテリーの特性によるリスクの増加は注視すべきです。 - バッテリーの交換・リサイクル
保険は事故時の修理・交換コストを担うという点でサプライチェーンに組み込まれています。サステナブルな観点から、より環境負荷がかからないしくみが求められます。 - EVの特性からくるリスクへの対処
重量、静音性、推進力、回生ブレーキによる急停止など、バッテリー以外のEVの特性もリスクに影響を与える可能性があります。同時にEVは安全性を高める研究も進められています。 - 保険会社におけるリスクへの対処
EVのリスクが保険料率に反映されるまでに保険データが蓄積されるには時間を要するでしょう。技術が急速に発達するステージにおいて、自動車メーカーや調査研究機関と連携しながら、変化していくリスクを認識する働きかけが必要となるでしょう。また、EVに特徴的なリスクをよりよくとらえた補償スキームを検討する余地があると考えられます。さらに万が一の場合にスムーズに修理が行えるようサービス網の拡充など顧客利便性の向上が期待されます。
【EV保険の特徴的な補償・サービスの例】
(出所)海外保険各社ウェブサイト