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ペット保険とその周辺の話題について

成長著しいペット保険とその周辺の話題について述べます

ペット保険は、広義には、ペット(愛玩動物)を保険の目的とする保険の総称ですが、実際には、ペットの疾病や傷害を動物病院で治療した際に、飼主が負担した費用の一部を負担する保険です。また、特約等の形でペットが死亡した場合の葬祭費用や、ペットが他人の身体や財産に損害を与えた場合の賠償責任保険を担保する場合もあります。

1. はじめに

本稿では、成長著しいペット保険とその周辺の話題について述べます。
まず、ペット保険の特徴とペット保険市場規模について述べます。次に、2013年6月7日に金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」から出された報告書「新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について」において述べられた「保険引受の実績がない分野」の「保険料算出に必要なデータ収集」とペット保険との関連について考察します。
なお、本稿に記載された意見に関する部分は筆者の私見であり、所属する法人の公式見解ではないことをお断りしておきます。

2.ペット保険とは

ペット保険は、広義には、ペット(愛玩動物)を保険の目的とする保険の総称ですが、実際には、ペットの疾病や傷害を動物病院で治療した際に、飼主が負担した費用の一部を負担する保険です。また、特約等の形でペットが死亡した場合の葬祭費用や、ペットが他人の身体や財産に損害を与えた場合の賠償責任保険を担保する場合もあります。

なお、ペット保険は、保険数理の技術面からは、(人の)医療保険(第三分野保険)に近い面もありますが、保険法上、傷害疾病損害保険契約や生命保険契約は人の傷害・疾病が対象になる(保険法第2条第7号及び第8号)ので、「保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補する」(保険法第2条第6号)と規定される損害保険に分類されます。
保険の目的とされるペットは、犬と猫が中心ですが、うさぎ、フェレット、鳥類、爬虫類等を保険の目的としている会社もあります。 

3.ペット保険市場

ペットの疾病・傷害リスクをカバーする商品は、もともと共済会により営まれていました(2005年の保険業法の改正以前は取扱保険会社はありませんでした)。

2005年の保険業法の改正以降、それらの共済会が損害保険会社や少額短期保険業者に組織変更されるとともに、新たに損害保険会社や少額短期保険業者が参入し、2013年6月末現在、損害保険会社が3社、少額短期保険業者が7社の合計10社が取扱っています。2013年5月27日の株式会社富士経済のプレスリリース「国内ペット関連市場の調査を実施」では、2012年12月末のペット保険の契約件数を733,570件(対前年比119.3%)としています。

また、ペット保険を取扱う損害保険会社のうちの1社であるアニコム損害保険会社が2013年1月29日に発表した「毎年恒例! ペットにかける年間支出調査」によると、2012年のペット保険料の平均は、犬35,005円、猫27,538円となっています。
ペット保険の平均保険料を35,005円と27,538円の単純平均(*)である31,271円として、上記の契約件数に乗じると、市場規模は230億円程度であると推計されます。
(*)一般社団法人ペットフード協会の「平成24年度 全国犬・猫飼育実態調査結果」によると、犬・猫の推計飼育頭数は、犬:11,534千頭、猫:9,748千頭となっています。 

4. ペット保険とデータ入手

上記のように成長著しいペット保険市場ですが、新規にペット保険市場に参入する際の課題の一つとして、データ入手が挙げられます。(人の)医療保険の場合は、厚生労働省の患者調査等の統計を活用することが考えられますが、ペットの疾病や傷害に関しては、それに相当する公的な統計を見出すのは困難です。したがって、データ取得のために、既にペット保険を販売している損害保険会社か動物病院等のペットに関係する事業会社と提携することも考えられます。

5. 共同行為制度の活用の促進について

さて、2013年6月7日に金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」から「新しい保険商品・サービス及び募集ルールのあり方について」という報告書(以下「金融審議会WG報告書」)が出されました。

 そこでは、共同行為制度の活用の促進について

 

"1―3 共同行為制度の活用の促進について

(中略)社会情勢の変化等によって、これまでは保険が提供されていなかったようなリスクについても、保険に対するニーズが高まることが考えられる。一方、これまでに保険引受の実績がない分野については、商品組成に当たって合理的な保険料算出に必要なデータが十分に存在せず、保険引受けのリスクの評価が困難な場合が想定される。

このような場合に、各社が共同して保険を引き受けることができれば、保険料算出に必要なデータ収集に係る時間の短縮やリスクの分散が見込まれ、その結果、これまで保険引受が行われていなかったようなリスクをカバーする商品の開発の促進につながり、社会的に意義があると考えられる。

以上のような点を踏まえ、各社が共同して保険を引き受けるという行為に関して、法的な問題を含めた実務的な検討が進められていくことが適当である。"

 (出典:金融審議会WG報告書7~8ページ。下線は引用者による) 

 

と述べられています。

 上記下線部の「実務的な検討」には脚注17として

 

"例えば、上記のように、保険商品組成に当たり、保険料算出に必要なデータ収集のために共同行為を行うことが法第101条第1項第2号の要件に照らして認められるのかを含めて検討することが考えられる。"

 

とあります。

 

 ここで、「(保険業)法第101条第1項第2号」では、航空保険、自動車損害賠償責任保険、原子力保険、地震保険以外の保険種目において、

 "(前半省略)共同して再保険することを定めておかなければ、保険契約者又は被保険者に著しく不利益を及ぼすおそれがあると認められる場合に、当該再保険契約又は当該再保険に係る保険契約につき次に掲げる行為の全部又は一部に関し損害保険会社が他の損害保険会社(外国損害保険会社等を含む。)と行う共同行為

イ 保険約款の内容(保険料率に係るものを除く。)の決定

ロ 損害査定の方法の決定

ハ 再保険の取引に関する相手方又は数量の決定

ニ 再保険料率及び再保険に関する手数料の決定"

(出典:保険業法第101条第1項第2号より抜粋)

 

について、内閣総理大臣の認可の元に私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」)の適用が除外される旨規定されています。つまり、当該規定は、「共同して再保険」することが必要な巨額のリスクを念頭においているものと考えられます。

 ペットの疾病・傷害リスクは、少なくとも2005年までは、(共済はあっても)「保険が提供されていなかったようなリスク」ですが、「共同して再保険することを定めておかなければ、保険契約者又は被保険者に著しく不利益を及ぼすおそれがある」というのは困難ではないかと考えます(実際ペット保険を取扱う損害保険会社及び少額短期保険業者のうちペット保険単独での業績が把握可能な5社については、他の保険者に再保険を出再していません)。

 

また、当該規定は「保険料率に係るもの」を独占禁止法の適用除外となりうる共同行為の対象から除外していることに注意が必要です。

6. 損害保険料率算出団体に関する法律とデータ収集機能について

また、上記5.で述べた金融審議会WG報告書では「各社が共同して保険を引き受けること」の効果の一つとして、「保険料算出に必要なデータ収集に係る時間の短縮」を挙げていますが、「保険料算出に必要なデータ収集」については、損害保険料率算出機構でも行われているものです。
損害保険料率算出機構は、損害保険料率算出団体に関する法律(以下「料団法」)により設立された団体です。
料団法第3条では、

"第三条  二以上の損害保険会社は、内閣総理大臣の認可を受けて、損害保険料率算出団体(以下「料率団体」という。)を設立することができる。"

と規定されています。

ここで、傷害・医療・介護保険等の第三分野保険(保険業法第3条第4項第2号で規定される保険)については、生命保険会社も損害保険会社とみなす旨規定されています。(料団法第2条第2項)

さて、損害保険料率算出団体の業務の範囲としては、料団法第7条の2第1項第1号に「参考純率を算出し、会員の利用に供すること」と規定され、更に、料団法第7条の2第2項第1号には「保険料率の算出に関し、情報の収集、調査及び研究を行い、その成果を会員に提供すること」と規定されています。
ここで、参考純率とは、料団法第2条第1項第5号で、

" 損害保険料率算出団体が算出する純保険料率(次号に掲げる基準料率に係るものを除く。)であつて、この法律に基づく届出その他の手続を経たときはその会員による保険料率の算出の基礎とし得るものとして算出するものをいう。"

と定義されるものです。

参考純率とは保険料のうち保険金の支払いに充てられる純保険料部分について会員が参考にするだけで、実際の保険料は、純保険料に各社の経費(付加保険料部分)を加算して決定されるものです。また、参考純率の算出自体は独占禁止法の適用除外にはなっていないことにも注意が必要です。
上記の規定を受けて、損害保険料率算出機構では、定款第6条(業務の範囲)で「参考純率算出の基礎資料の作成」「参考純率の算出に必要な保険統計の作成」等を業務として行うものとされています。
 

7. まとめ

現在、参考純率の算出を行うことができる保険種類は、

一  火災保険
二  傷害保険
三  自動車保険
四  医療費用保険
五  介護費用保険

に限定されており(損害保険料率算出団体に関する内閣府令第3条)、ペット保険は含まれていません。また、料団法は2005年の保険業法の改正による少額短期保険業者制度創設以前に成立していたものであり、少額短期保険業者は、損害保険料率算出団体の会員になることはできません。
ただし、これまで述べてきたように「保険引受の実績がない分野」の「保険料算出に必要なデータ収集」については、損害保険料率算出団体において実現できる可能性も考えられます。

今後、金融審議会での議論を経て、法律、政令、内閣府令等の改正案が出されることとなりますが、ペット保険のように従来の保険会社であまり扱っていなかったようなリスクの取扱いに対する法令上の手当ての行方が注目されるところです。

著者: 金融インダストリーグループ 相原 浩司 

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