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調査レポート
タレント・エコシステムの「オーケストレーション」
組織の枠を越えた戦略的な業務管理
企業における外部労働力への依存度は高まり、これらを効果的にマネジメントすることがビジネスの成功に不可欠となっている一方、従業員と外部労働力で構成される「タレント・エコシステム」を統合的かつ意図的にオーケストレーションできている企業は少数です。
本稿では、マネジャー対象の調査や、経営者インタビュー等も踏まえ、「タレント・エコシステムのオーケストレーション」先行企業の特徴や、オーケストレーションに不可欠な機能横断的な取り組みについて解説しています。
日本版発行に寄せて
直接雇用のフルタイム従業員が企業の労働力であるという概念は過去のものになっており、フルタイム、パートタイム、兼業、派遣労働、契約社員、ギグワーカー、フリーランス、外部協力会社など、企業の仕事に関わる全ての人が相互に補完・依存しながら価値創造を行う構造(タレント・エコシステム)を如何に確立し牽引していくのかが、事業運営における重要なファクターになってきている。本稿では、このタレント・エコシステムを企業の事業運営の中で真に機能させるにあたっての課題や、これを意図的に牽引し、オーケストレーションしていくために必要なポイントについて、先行企業の特徴や取り組みを含めて紹介している。
調査では、タレント・エコシステムの管理は事業の成功に不可欠であると多くの企業が考えているものの、レディネスはまだ低い状況がうかがえる。他方で先行企業では、外部の労働力が事業にどのような貢献が可能かが理解されており、データやインサイトを活用して、自社のパーパスとのつながりや信頼関係の度合い、育成の状況が捉えられる形になっている。また、エコシステムに含まれる労働力を機能横断で綿密に管理・コーディネートしていることや、そのために必要な人材を社内外で確保していること、さらにはその人材が実際にエコシステムにコンタクトする現場に対してサポートをしているといった特徴がある。そしてその状態の実現に向けて牽引するリーダーの従業員や労働力に対する考え方や行動に大きな違いがあることがうかがえる。
加えて、タレント・エコシステムのオーケストレーションには、各機能の連携・統合が重要であることが示されている。多くの企業では、従業員のことはHR部門が、業務委託者のことは調達部門が、テクノロジーのことはIT部門が、投資や費用の判断・検証は財務部門がといった形で機能分担がなされており、それぞれが接点のない形で同時に運用してしまっている。複雑な構造を持つタレント・エコシステムを効果的に管理するためには、これらの部門間の関係を再構築し、各部門がオーケストレーションのプロセスに関わり、相互に連携していくためのマネジメント手法やテクノロジー、そしてリーダーシップのあり方を根本的に変革する必要がある。機能間の役割分担が強く意識されている日本企業においては、特に大きなチャレンジとなることが想定される。
成功要因として挙げられる要諦の根底にあるものは、リーダー層のリーダーシップのアプローチのあり方である。タレント・エコシステムのオーケストレーションには、企業における各機能がオーケストレートされており、様々な施策が有機連携して機能していることが求められており、それを牽引するのがトップマネジメントであり各機能の責任者の今後の重要な役割となる。本稿ではまさに今後の人材マネジメントのトレンドとなる本テーマに関し、世界各国のビジネスパーソンや経営者・専門家が認識している課題や取り組みをご紹介しており、読者の皆様には十分にご参考にしていただけるのではないか。
関連ページのご紹介
Orchestrating Workforce Ecosystems(原文)
https://sloanreview.mit.edu/projects/orchestrating-workforce-ecosystems/
「タレント・エコシステム」とは?
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/human-capital/articles/hcm/workforce-ecosystem.html