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ポイント2:変えるべき組織・ヒトを見極め「変わった」という実感を持たせる

組織風土改革を成功させる3つのポイント

組織風土の変革を効果的に進めるためのシナリオを考えるヒントとして、変革のきっかけをどのように仕掛け、先駆けとなる組織・人をどのように見極め、牽引させるかについて述べる。

誰が変わったか、誰が変わろうとしているかが変革の機運に影響を与える

組織風土は組織のメンバーの多くが持つ思考・行動のパターン、癖によって形作られており、その変革は、組織のメンバーの思考・行動を変えて行くことに他ならない。一般的に2~3割のメンバーの思考・行動が変わると、その組織の中でのそれまでの当たり前が崩れ始め、3~4割を超えた頃から、組織風土が変わってきたと実感できると言われている。しかし、その変革が時間のかかる大きな挑戦であることは皆さんの想像に難くないことではないだろうか。

一方で、時間がかかるものだとしても、成り行きに任せたままでは、変革の取組みそのものが、直ぐに忘れ去られ、組織風土改革が実現されないことも容易に想像できるのではないだろうか。変革に継続的に取り組むためには、「変わった」「変わり始めた」という実感を意図的に演出していくことが非常に重要である。中でも、誰が変わったのか、変わろうとしているのかということは組織風土改革の推進に大きな影響を与える。このコラムでは、組織風土の変革を効果的に進めるためのシナリオを考えるヒントとして、変革のきっかけをどのように仕掛け、先駆けとなる組織・人をどのように見極め、牽引させるかについて述べていく。

 

変化はボトムアップで生まれるが、きっかけはトップダウンで作る

組織風土の変化は、組織のメンバー一人ひとりの思考・行動が変わることで、ボトムアップで生じるものである。一方で、経営層自身の言動や考え方、経営層が示す組織のビジョンや戦略および、それらに基づく組織体制や業務プロセス、各種制度が組織のメンバーの思考・行動に与える影響は非常に大きく、経営層の強いコミットメントなしに組織風土改革を進めることはできない。そのため、経営層自らがありたい組織風土の姿やその必要性を自らの言葉で組織のメンバーへ伝えると共に、変わるまでやり続ける覚悟を示し、まずは、自身の意識・行動を変え、率先垂範することは組織風土の変化を生み出すうえでの大前提となる。勿論、経営層からの一方的な発信だけでなく、それに対する組織のメンバーの考えや疑問を聴き、それらにきちんと応答し、対話していくことも欠かせないことであるが、何よりもまずは、経営層から変化のきっかけを作ることが組織風土の変革には必要不可欠である。

 

影響力のあるキーパーソンを巻込む

経営層の次は部長層、その次は課長層など、上位者が変革の意味・必要性を自らの言葉で語り、そして、自ら行動で模範を示していくことは、どのような組織においても、組織風土改革を進めるうえでの最重要ポイントの1つであることは間違いない。一方で、実質的に多くのメンバーに影響力のある層を見極めることも非常に重要になる。例えば、現場のメンバーに対して実質的に影響力があるのは現場のリーダーとなる職長、係長などの非管理職であるケースなど、必ずしも、組織の上位層が組織内の多くのメンバーに対する直接的な影響力を持っていない場合も多い。そのため、企業風土改革を強力に推し進めるためには、組織内の多くのメンバーに実質的な影響力を持っている層を見極めて、彼/彼女らに変化の方向性や必要性を納得してもらい、組織のメンバーとの対話におけるハブとなってもらうことが非常に重要になる。そのため、影響力を持つ層を組織風土改革の方向性や打ち手を検討する早い段階から巻き込み、彼/彼女ら自身が変革の主体であるという意識を醸成しておくことは、その後の変革の推進に非常に有用なこととなる。

 

象徴となる組織から変化を波及させる

また、どこの組織/エリアのメンバーが変わると組織にとってインパクトが大きいかについても一考の価値がある。「あの組織のメンバーのように自分たちもなりたい」という前向きな動機付けのきっかけを作るためには、組織内の花形の組織から変えていくことが有効になる。花形の組織は所属するメンバーも変革に対して前向きであることが多いため、変化を起こし易く、Quick Winの1つとして変化を演出したい場合は特に、花型組織から変革を始めるということが効果的である。また、変革を進めるにあたってのモデルケースとなる組織を新たに立上げ、先進的な取組み事例とすることも同様の効果を期待できる。しかし、同時に「あの人たちは特別だから」などの白けた雰囲気が広がり、期待される組織全体への波及効果が生まれないことが懸念されるため、花型組織にフォーカスする場合は、「選ばれた者たち」というイメージをいかに払拭できるかが重要なポイントとなる。

一方で、危機感を煽る形で、変革の機運を高める場合には、社内で落ちこぼれと思われている組織に的を絞ることも考えられる。そのような組織では概して、変革に前向きなメンバーも少なく、変化を生み出す難易度が高いため、時には、象徴となるような変化を生み出せないというリスクがあるものの、そうであるが故に、変化が生まれた時には、「あの組織が変わったなら自分たちも変わらないとまずいな」などの危機感を生み出し、組織全体への高い波及効果が期待でき、強力な変化のきっかけとなることもある。全てのメンバーを一気に変えることは難しい中で、変化の波及効果が期待できる組織を見極めることは、非常に重要なポイントとなる。

 

対象となるメンバーの特性を踏まえてアプローチする

変革の先駆けとなる組織・人が定まった後には、そのメンバーがどのような志向を持ち、何がきっかけで変革が起こり易いかを見極める必要がある。一般的には、組織風土改革の意義や必要性を伝え、納得を得ながら、小さな変化を見逃さずに賞賛することを通じて、自然と思考・行動の変化に導いていくことが重要である。組織のメンバーは変革に意義を感じながら、変革の目的に沿って自発的に自身の思考・行動を見直していくことができる。しかし、一人ひとりの納得を得るために必要な労力は少なくない。また、思考・行動のパターン、癖は無意識に表れる場合も多く、頭では理解できていても変わらない、自然と元に戻ってしまうなど、“分かっちゃいるけど変えられない”というジレンマを経験することも多い。

一方で、具体的な思考・行動を決めて、まずはそれを強制的にやらせるという方法もある。時には罰則などの強力な強制力を持って変革を促すことで、より短期間で大きな変化を生み出すことができる反面、示された思考・行動以外の変革には繋がりにくく、場合によっては、言われていないことはやらないという雰囲気が組織に根付いてしまうリスクも高い。

 

行動変革のためのアプローチ
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そのため、組織の状況を踏まえて、動機付けと行動強制のどちらかに偏ることなく、バランスよく働きかけを行うことが重要になる。また、特に、動機付けを行うアプローチの場合は、組織のメンバーが何に強く動機付けられるのかについても、考慮することが重要であり、組織風土改革の意義や目的を伝え、納得を得る過程では、注目度の高い動機付け要因と紐づけてコミュニケーションをとることが求められる。

 

組織のメンバーの志向性・価値観・動機付け
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繰り返しになるが、全てのメンバーの思考・行動を一気に変えることはできない。そのため、トップダウンで変化のきっかけを作りつつ、影響力のあるキーパーソンを巻き込み、象徴となる組織のメンバーの特性を踏まえて先駆けとなる変化を生み出し、そこでの成功体験を組織全体に波及させることができるよう、誰に対して、どのような順番で、何を仕掛けていくのかを見極めておくことが、組織風土改革の重要なポイントとなる。

 

筆者:坂本裕樹(デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー)
※上記の役職・内容等は、執筆時点のものとなります。

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