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航空宇宙業界の脱炭素化

未来の低炭素・脱炭素社会を実現するためのロードマップ

中長期的に見れば著しい成長が見込まれる航空宇宙業界は今、脱炭素化という難題に直面している。本レポートは、デロイトグローバルが数十名規模の航空宇宙製造業・航空運輸業のシニアエグゼクティブにインタビューを実施し、その分析結果を通じて、将来の航空宇宙産業における脱炭素化・CO2排出量削減に向けた課題と取り組みの方向性について概観したものである。

はじめに

COVID-19の蔓延による旅客需要の大幅な減少を受け、航空業界は甚大な影響を受けている。影響が長期化する中で、業界各社の課題意識はこの未曽有の危機への対応から、危機収束後の“New Normal”における成長戦略のあり方に徐々にシフトしつつあると考えられる。

旅客需要回復後の航空業界における成長戦略を考える上で外せないキーワードになっているのは「カーボンニュートラル」であり、2050年ネットゼロの達成への貢献という目標似向けて業界全体で取り組むべき課題に対して、どのような形で技術革新やサービス・ビジネスモデルの変革を成し遂げるかが収益成長や競争優位性を左右する一つのファクターになると考えられる。実際に、我が国においても個別企業のカーボンニュートラルに向けた取り組みが進むだけではなく、業界各社のコンソーシアムの形成などが進んでいる。

本レポートは、デロイトグローバルが数十名の航空宇宙製造業・航空運輸業のシニアエグゼクティブ向けに実施したインタビュー及び各種定量データの分析を通じて、今後の航空宇宙産業における脱炭素化・CO2排出量削減に向けた課題と取り組みの方向性を概観したものである。特に、自社単独でのコントロールが困難であるスコープ3排出量※の削減に繋がる要素をピックアップした上で、現在取り組みが加速しているSAF(バイオジェット燃料及び合成燃料)と電気推進(電動化)の可能性にも触れながら、航空宇宙業界の未来の在り方を提唱する。

※スコープ3排出量:サプライチェーン全体の排出量のうち、自社の直接排出・エネルギー起源の間接排出以外のすべての排出を指す。
 

 

本レポートの目次

  • キーメッセージ
  • 航空宇宙業界:環境サステナビリティにおけるラストフロンティア
  • スコープ1・スコープ2排出量を抑えることが持続可能な航空宇宙業界の礎となる
  • スコープ3排出量削減の実現に向けて航空宇宙業界が検討すべき破壊的イノベーションの5つの要素
  • スコープ3排出量削減への道
  • 電動航空機:短距離輸送におけるゼロエミッションフライトを実現
    するソリューション

谷本 浩隆/Hirotaka Tanimoto
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー

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