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非公開化

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「非公開化」について概説します。

非公開化とは

非公開化とはMBO、上場子会社・関連会社の完全子会社化等により、株式公開企業が上場をとりやめ、株式を非公開とすることである。東京証券取引所における2011年の上場廃止数56社(2012年に上場廃止が決定されているもの含む)の内、およそ半数が非公開化によるものであり、非公開化という戦略の重要性・存在感が増しているといえる(図表1を参照)。なお、非公開化のメリットについては、「ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドザイザリー」の「MBO」および「親子上場」をご参照ください。

図表1:東京証券取引所上場廃止企業(2011年)

非公開化における留意点

MBOは、本来、企業価値の向上を通じて株主の利益を代表すべき取締役が、自ら株主から対象会社の株式を取得することとなり、必然的に取締役についての利益相反的構造が生じる。また、上場子会社・関連会社の完全子会社化の場合も同様の利益相反的構造が生じる。そして、取締役・支配企業は対象会社に関する正確かつ豊富な情報を有していることから、非公開化の場合には、株式の買付者側と売却者側である株主との間に、大きな情報の非対象性も存在することになる。そこで、株主の立場から、非公開化が有する意義から逸脱して不合理な取引が行われ、又は価格が不当に低く設定され、取締役・支配企業が不当に利益を享受しているのではないかといった懸念が発生しうると考えられる。

売却側である株主の保護の観点から、非公開化にあたっては上記の構造的利益相反関係を緩和するための措置を講ずる必要があり、この点につき、実務的には経済産業省より公表されている「企業価値の向上および公正手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」(以下、「MBOに関する指針」、「同指針」)に準拠して行うことが通常となっている。 

MBOに関する指針において求められている具体的対応についての要約

以下においてMBOに関する指針において求められている具体的対応について要約する。なお、同指針におけるMBOは非公開化と読み替えている。

(1) 株主の適切な判断機会の確保
非公開化において、各株主が納得して適切に判断し、その意思を表明できることが重要なポイントとなることに鑑み、各株主の背景や属性等にも十分に考慮して、株主の判断に資するための充実した説明を行い、かつ、株主が当該説明を踏まえた適切な判断を行える機会を確保する必要がある。
具体的には非公開化に至ったプロセス、他のファンド等の出資比率や取締役の役職の継続予定等についての適切かつ充実した開示、スクイーズアウトに際して、反対する株主が買取請求権や価格決定請求権を確保できないスキームを採用しないこと等が挙げられる。

(2) 意思決定過程における恣意性の排除
非公開化には、構造上の利益相反の問題が存在することに鑑み、不当に恣意的な判断がなされないようにするなど、意思決定のプロセスにおける工夫を行う必要がある。
具体的には社外役員や第三者委員会による諮問とその判断結果の尊重、取締役及び監査役(特別の利害を有する取締役を除く)、意思決定に際して弁護士・アドバイザー等による独立したアドバイスを取得すること及びその名称を明らかにすること、価格に関して独立した第三者評価機関からの算定書等を取得することが挙げられる。

(3) 価格の適正性を担保する客観的状況の確保
非公開化は、構造上の利益相反の問題に起因する不透明感が強いことに鑑み、価格の適正性に関し、対抗買付の機会を確保する等の客観的な状況により担保がなされる必要がある。
具体的には非公開化に際しての公開買付け期間を比較的長期に設定すること、対抗者が実際に出現した場合に、当該対抗者が対象会社との間で接触等を行うことを過度に制限するような内容の合意等を、当該非公開化の実施に際して行わないこと等が挙げられる。

最後に

近年、昨今の経済環境の不安定さ、上場コストの増加、意思決定の迅速化の要求等の理由から非公開化を選択する企業が増加傾向にある。非公開化は適切に行えば対象企業の企業価値の向上に資するものではあるが、一方でその有する構造的利益相反関係により少数株主を害する危険もあり、場合によっては訴訟にまで発展する事例も散見されている。非公開化を実際に行う際にはこの点を考慮し、十分な緩和策を講じることが望ましいであろう。

参考文献

経済産業省(2007/09)「企業価値の向上及び公正な手続き確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」
水野信次、西本強(2010/11)「ゴーイング・プライベート(非公開化)のすべて」

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