ナレッジ

モデリング

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「モデリング」について概説します。

1. 予測財務モデルの概要

「予測財務モデル」(以下「モデル」)とは、「さまざまな財務分析の結果を表計算ソフト上で体系化した模型」を指し、企業の戦略的意思決定やM&A等さまざまな目的で作成される。In-Out型のM&Aはエネルギー・資源分野をはじめ、近年活況を呈しており、M&Aの意思決定支援のためのツールとしてモデルが企業に与える影響は増大の傾向にある。一方、モデルが重大な誤謬(エラー)を含んでいる場合も散見され、案件の個別性に対応した堅牢かつ柔軟なモデルを誤謬のリスクを逓減しつつ迅速に構築し、それに基づく十分な検討機会を確保する事がより重要になってきている。

従って、モデルの構築作業(以下「モデリング」)に関与する場合における誤謬のリスクを管理する重要性は高まりつつあるといえる。
 

2. モデリングにおける誤謬のリスク管理施策-その1

モデリングに関わる誤謬(エラー)のリスクを管理するための主要な方策としては以下が考えられる。

(1)モデリングのプロセスの管理

  • モデルの対象となる経済インパクトの規模やモデルの難易度を考慮し、特別なリスク管理の対象とすべきモデルの要件を定義し、案件検討初期に適切に運用するする必要がある。
  • 特別なリスク管理の対象となるモデルについては、初期段階で、ビジネス上の必要性、モデルの目的・使用者の定義、使用可能なリソース等(人、情報、時間等)を整理した上で、精度や複雑さ、柔軟さ、サイズ、構築に要する時間とのバランス等を考慮する必要がある。
  • 特別なリスク管理の対象となるモデルについては一定のトレーニングを受けたモデラー(モデルの作成者)に任せるという方法もある(場合によっては所定の手続を経た上、モデラーとしての認定を行なうことも考えられる)。
  • またモデリングを実施するだけでなく、レビュープロセスをどのように組み込むかも事前に明確に手続化する必要がある。


(2)モデリングにおけるベストプラクテイスの徹底

  • 堅牢かつ柔軟なモデルを採用するとともに、常にレビュアーによる検証を前提に検証が容易な形式でモデリングするように心がける必要がある。
  • ベストプラクテイスをチームで共有したり、一定のテンプレートを利用するなどの方策が考えられる。


(3)外部リソースの活用

  • 社内にて十分なモデリングのリソースの確保が困難な場合には、外部リソースの活用も考えられる。
  • 但し外部リソースを活用する場合でも企業側で外部リソースに依頼する範囲と限界を明確に認識し、主体的にモデリングに参加する必要がある。例えば仕様及び前提条件の設定は企業側の業務範囲となるケースが多い。
     

最後に

M&Aでは利用できる情報、時間に制限がある中で、競合も意識しつつ、各種リスクをどのように扱うかを決定していくことが必要になり、その個別性は非常に高い。M&Aに関連するモデリングでは買収調査・インテグレーションプラン等の結果を統合して定量的分析を行い、その分析結果を契約交渉にも反映し、また契約交渉結果を迅速にモデルに反映をしていくことが求められる。上記のようなプロセスやベストプラクテイスなどによるリスク管理に加え、幅広い業務経験を有し、プロジェクトマネージメント能力にも長けた人材をモデラーとして育成していく事が、より実質的なリスク管理を可能にし、企業の更なる成長に資するものと思われる。

M&Aに関する最新情報、解説記事、ナレッジ、サービス紹介は以下からお進みください。

M&A:トップページ

お役に立ちましたか?