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簡易組織再編

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「簡易組織再編」について概説します。

簡易組織再編とは

簡易組織再編とは、再編対象会社・事業の規模が小規模である場合等、一定の条件を満たす場合に、合併存続会社等の株主総会の承認を省略できる制度をいう。簡易組織再編は、吸収合併(会社法796条3項)、吸収分割(同法784条3項、796条3項)、新設分割(同法805条)、株式交換(同法796条3項)、事業譲渡(同法467条1項2号)、事業譲受(同法468条2項)にて利用される(図表1を参照)。

合併、会社分割、営業譲渡などの組織再編行為では、通常の場合、取締役会での承認、株主総会での特別決議(議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)が必要となる(同法783条1項等)。しかし、会社、株主にとってあまり大きな影響を及ぼさない合併等の場合にまで、株主総会の承認手続が必要となると、事務手続が煩雑になり会社の組織再編にとって不便である。そこで法は、株主総会決議を省略できる要件を定めることにより、株主総会の開催が比較的困難な上場会社等においても迅速に組織再編を行うことができるようにした。結果、簡易組織再編は多くの会社で利用されている(図表2を参照)。

図表1:組織再編手続

図表2:最近の簡易組織再編(存続会社)および通常の組織再編(消滅会社)の主な事例

簡易組織再編が可能となる条件

簡易組織再編によることが可能となる条件は、以下のとおりである。

 1.資産を移転する側の会社(事業譲渡会社、吸収分割および新設分割の分割会社)

 移転する資産の帳簿価額の合計額が、当該会社の総資産額の5分の1を超えない場合

2.資産を承継する側の会社(事業全部譲受会社、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、株式交換完全親会社)

 資産を移転する会社ないしその株主に対して支払う対価(再編の相手方に交付する新株と新株以外の財産の合計額)が、資産を承継する会社の純資産額の5分の1を超えない場合

 なお、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社および株式交換完全親会社については、上記の要件を充たす場合であっても、以下の場合、株主総会決議を省略することができない(同法796条3項但書)。

(1) 組織再編によって差損が生じる場合(同法795条2項各号)

(2) 存続会社等が公開会社ではなく、消滅会社等の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が、譲渡制限株式である場合(同法796条1項但書)

簡易組織再編の手続例

ここで、吸収合併を例として、簡易組織再編の手続フローを示す。存続会社が簡易組織再編の手続、消滅会社は通常の組織再編の手続によった場合の主なフローは以下のとおりである(図表3を参照)。

次の例のとおり、消滅会社では、合併契約の締結、合併承認株主総会、債権者保護手続、反対株主等の買取請求および合併期日等において一連の手続きが要求されるものの、簡易組織再編によった存続会社では、合併契約承認株主総会が省略され、手続が簡易化し迅速な組織再編を行うことが可能となっている。

図表3:組織再編手続のフロー図(存続会社:簡易組織再編、消滅会社:通常の組織再編)

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