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第二会社方式

ビジネスキーワード:ファイナンシャルアドバイザリー

ファイナンシャルアドバイザリーに関する用語を分かり易く解説する「ビジネスキーワード」。本稿では「第二会社方式」について概説します。

第二会社方式の概要

第二会社方式とは、財務状況が悪化している中小企業の収益性のある事業を会社分割や事業譲渡により切り離し、他の事業者(第二会社)に承継させ、また不採算部門は旧会社に残し特別清算等をすることにより事業の再生を図る手法である。

第二会社方式のメリットとしては、1.旧会社が清算されることにより、回収不能になった旧会社に対する債権を税務上損金処理することが容易になるため、金融機関の協力が得やすいこと、2.旧会社に係る想定外の債務のリスクが遮断されるので、新会社に対するスポンサー等の協力を得られやすいことなどが挙げられ、従来の事業再生手法と比較して迅速な手続が可能になると考えられる。

しかし一方で第二会社方式には以下のような問題点があり、企業が当該手法を選択する上での障害となっていると考えられる。

第一に、第二会社方式では、法的には、新たな法人が事業を開始することとなるため、営業上の許認可を取得する必要がある場合には、新会社が新たに許認可を取得することができるかどうか不透明である。また許認可を取得できるとしても手続きにコストや時間を要するため、新会社を設立してから事業の再開までに空白期間が生じてしまう可能性がある。

第二に、第二会社方式においては旧会社から新会社への不動産の移転が生じる場合には不動産取得税や登録免許税が課税され新会社においてコスト面の負担がかかるという問題点がある。

さらに、新会社において運転資金や新規設備投資の資金需要が生じるが、旧会社の既存の取引金融機関からの資金調達は非常にハードルが高いといえる。

上記の問題点を解消するため、2009年「産業活力の再生および産業活動の革新に関する特別措置法(以下、産活法)」の改正により、中小企業における事業再生の円滑化を目的として、第二会社方式を利用した「中小企業承継事業再生計画」の認定制度が創設された。当該認定制度の概要について以下解説する。 

第二会社方式

産活法における「中小企業承継事業再生計画」の概要

2009年産活法の改正により創設された「中小企業承継事業再生計画」の認定制度における認定を受けることにより、第二会社方式における上記問題点を軽減するための以下の支援措置を受けることができる。

第一に、上記制度の認定を受けることにより、第二会社が営業上の許認可を再取得する必要がある場合には、旧会社が保有する事業に係る許認可のうちの大部分を第二会社が承継できることとなった。これにより事業と一体で許認可が承継されることとなるため、事業承継後直ちに営業を開始でき、営業の空白期間が生じるリスクを軽減できるようになった。第二に、第二会社方式の採用により生じる可能性のある資本金、不動産の登録免許税、不動産取得税等の税負担に関しては上記制度の認定をうけることにより一定程度軽減できることとなった。さらに上記制度の認定をうけた場合、第二会社において必要な運転資金、設備投資資金に関しては日本政策投資銀行からの融資、中小企業信用保険法の特例、中小企業投資育成会社法の特例等の支援措置を受けることが可能となった。

上記制度の主要な認定要件としては次の通りである。
■中小企業事業者であること
■事業計画終了時(計画期間は5年以内)に一定の財務、経営の健全性数値基準を満たす事業計画を作成して、提出すること
■労使間での十分な話し合いが行われていること
■旧会社から承継される従業員に関しては8割以上継続して雇用すること
■公正な債権者調整プロセスを経ていること

中小企業承継事業再生計画の利用の現状と課題

上記認定要件で記載した公正な債権者調整プロセスとは具体的にはRCC事業再生スキーム、事業再生ADR、企業再生支援機構、私的整理ガイドライン、中小企業再生支援協議会、民事再生法、会社更生法における手続であるが、費用の面から考慮しても中小企業の私的整理において採用される債権者調整プロセスの大部分が中小企業再生支援協議会であることが推察される。

中小企業庁による「中小企業再生支援協議会の平成23年度活動状況分析」によれは、中小企業再生支援協議会における計画策定支援で債権放棄を含む計画に占める第二会社方式の利用件数割合が2009年度の78%から2011年度は97%に増加しているとのことであるが、「中小企業承継事業再生計画」の認定制度に関しては上記で記載した債権者調整プロセスを経ることが要件であることかから時間と手間がかかるため、現状ほとんど利用されていない状況とのことである。

2013年3月には金融円滑化法の期限が到来することから、企業再生事例における第二会社方式の利用も現状より案件数が大幅に増加することが見込まれる。このような状況下で当該認定制度により必要調整機関として想定されている中小企業再生支援協議会には、認定手続迅速化のため専門的人材の確保、地域金融機関との連携の強化等一層の機能の拡充が求められるところである。

なお、本文中の見解にかかわる部分はいずれも筆者の私見であることをお断りしておく。 

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