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利益を基準とした在庫最適化アプローチ
在庫は”削減”ではなく、利益を基準に”最適化”させる
古くから在庫削減・最適化は多くの企業で取り組まれてきたが、グローバル競争が激しいビジネス環境下では、経営インパクトを加味した利益視点での在庫最適化の取組みが必要となる。
グローバル競争時代の在庫最適化
近年 多くのビジネスセグメントにおいて、グローバルレベルでの企業間競争が激化し、これまで安定的であった需要が激しく変動する状況となっている。これに加え、商品ライフサイクルが一段と短期化され、後手対応をする時間的余地が削ぎ落とされつつある。このようなビジネス環境下では、旧来の欠品率視点での安全在庫設定では、欠品を防ぐために過剰に在庫を保有してしまうリスクが高くなる。また、競争激化により商品収益率が低下し、過剰在庫の廃棄によるロスコスト発生が深刻な経営インパクトを与えてしまう。
このような環境下で成功を収めている企業は、商品・技術力を頼りに旧来のオペレーションを踏襲するのではなく、投資回収を”仕方”、”スピード”を早めるオペレーションを構築している。特にロスコストを極小化するための在庫削減・最適化を強化しており、従来の方法論に加え商品別の金額視点でのインパクトを加味する手法を構築している。
<オペレーション注力点・在庫コントロールの違い>
-旧来オペレーションを踏襲している企業:
・リターン(売上)重視
・顧客満足重視し潤沢な在庫を保有。余剰在庫はEOL・決算期に向け価格対応・廃却処分
-ビジネス環境で成功を収めている企業:
・リターン(売上)に加え リスク(ロスコスト)を考慮
・顧客満足 + 経営インパクトを考慮し、商品別に保有在庫を”最適化”
過剰在庫による経営インパクトが一層高まる中で、”在庫は悪”として基準在庫を一律に削減すると、売上、及び顧客満足を著しく低下させる副作用を生じさせるため、商品別に”最適化(持つべきは持つ、持たないべきは持たない)”を徹底する必要がある。その”最適化”の基準を旧来の欠品率という視点だけでなく、収益性の観点を踏まえる手法が必要となる。また、単に”最適化”の基準に収益性の観点を加えるだけでなく、刻々と変化する市場・供給状況に対して短サイクルで計画調整を行ない余剰在庫保有のリスクを極小化していくオペレーションの構築が必要となる。
このようにグローバル競争時代には、”リスク”を仔細に評価・コントロールしていく事が「在庫最適化」に求められている。
”収益性”に基づいた商品別基準在庫管理
”収益性”を基準に在庫を最適化する一つの施策としては、商品収益ランクに応じた基準在庫の見直しが挙げられる。これは商品特性、及び商品別収益性に応じ、経営視点で需給上のリスク&リターンを評価し、オペレーション上の注力点、及び基準在庫を定義する方法である。
<収益ランクに応じた基準在庫方法の決定 例>
■Aランク(収益性 高)
実需減少時には価格対応にて余剰在庫を“掃ける”ため、残材リスクは低く、
供給不足による利益の“取りこぼし“抑制のため、在庫水準を高めに設定。
■Bランク(収益性 中)
機能特化型の差別化品種のため、競争激化による需要変動が低く、
標準的な在庫水準で安定的にオペレーションする。
■Cランク(収益性 低)
低利益率のコモディティ品種のため、大胆な価格対応が取れず需要減時の余剰リスクが高い。
最小限の在庫で回転を早くし、量を捌いて売上を確保する。
この手法を実現するためには、商品別の限界利益情報が管理し、グローバル連結での基準在庫を定期的に見直しをかける運用を確立する必要がある。また、単に基準値を定めるだけではなく、刻々と変化する市場・供給環境に対して一品毎に供給・在庫量を迅速に調整する仕組みもあわせて構築していかなければならない。
<必要な取組み 例>
(1)商品別限界利益情報の見える化
最新の商品別売価・変動費の実績、及び見込み情報を収集し、商品横並びで見える化する。
・グローバル共通の品目情報の管理 (商品、設計情報の清流化)
・限界利益を構成する費目の共通定義(国・地域間の費目相違の整理)
・単価情報を収集するための事業企画・管理、営業、設計、製造、調達、物流部門のプロセスの定義
・各種単価情報を横並びで管理するための仕組み(道具立て)の導入
(2)商品別のグローバル連結基準在庫の定期的な見直し
各ストックポイントの基準在庫を商品特性・収益ランクに基づき定期的に更新する。
・事業全体の在庫ターゲット(削減目標)の設定
・商品特性・収益ランクの定義付け
・事業全体の削減目標を満たすランク別基準在庫の決定・見直し(半期 or 四半期)
・商品導入ステージ(NMI・Running・EOL)に応じた基準在庫調整(月次 or 週次)
(3)短サイクルでの需給・在庫調整プロセスの構築
市場変動に応じて、決定した基準在庫を維持する需給計画見直し運用を構築する。
・多頻度での需要管理、及び供給部門への連携プロセスの構築
・グローバル拠点横串で在庫・供給責任を負う機能(組織)の構築
・リアルタイムに保有在庫を掌握する枠組みの導入
・商品別×期間別基準在庫、保有在庫及び需要計画に基づき在庫計算を行なう仕組みの導入
・商品導入ステージ(NMI・Running・EOL)に応じた基準在庫調整(月次 or 週次)