お知らせ

デロイト トーマツがカーボンニュートラルの達成に必要な投資やボトルネック等の情報について東大との共同研究を開始

今後社会実装していくべきカーボンニュートラル技術の社会的課題の整理を実施

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー株式会社と、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科/田中研究室(准教授:田中謙司)(以下、東京大学)は、デロイト トーマツ グループが日本におけるサイエンス・テクノロジー領域の研究成果の事業化およびそのための産学連携の支援に向け立ち上げたグループ横断のバーチャル組織「デロイト トーマツ サイエンス アンド テクノロジー」(DTST)が作成したカーボンニュートラルに貢献する技術をCO2排出削減量のポテンシャルおよびCO2排出削減コスト、技術成熟度等の観点から大規模言語モデル(LLM) により整理して比較するリスト(以下、技術リスト)について、内容をより充実させるために東京大学との共同研究を行うこととしました。

科学技術を社会実装していく上では、技術として完成していることだけでなく、法律・規制・商慣習、経済合理性、社会受容性といったいわゆるPESTの観点でも完成度が求められます。カーボンニュートラルに用いられる技術はDXやAIといったソフトウェア技術とは違い、広大な土地に巨大なプラントを建設するような大きさのものが多く、プロジェクト期間も長期にわたり、関わる人々の人数も膨大です。それゆえに金額も大きく、クリアすべき法規制や商慣習も複雑です。そうした「今後乗り越えていくべき社会的課題」を技術ごとに整理することにより、各技術が社会実装されていくためのボトルネックを特定し、社会のリソースを集中して解決を図りやすくするべく、「ボトルネックのマップ」を作成していきます。

本技術リストの共同研究が、日本のカーボンニュートラル実現に向けた技術の社会実装戦略の立案や、企業・自治体の取り組み内容の検討の一助となることを目指します。

共同研究の内容と目標

1.カーボンニュートラルに貢献する技術の可視化

カーボンニュートラルに貢献する技術を社会実装するにはCO2排出削減量や削減コスト、技術成熟度などの観点から評価する必要があります。要素技術の特性、性能、量産化・水平展開、機器・システムの導入などに関して目標値・スケジュール・進捗・実績などを公的機関の公開情報から分析することで、各技術を網羅的に俯瞰できるようにしていきます。

2.法律・規制・商習慣、経済合理性、社会受容性などPESTの観点を反映

各技術を社会実装するには技術の高度化・製品/システムの成熟度だけでは難しく、受け取る社会の状況も重要です。これらの課題は1プレイヤーだけでは解決しにくいものですが、同じ問題意識を持つ様々なプレイヤーが増えることで、より効果的な課題解決につながると考えます。

3.「ボトルネックマップ」を用いた社会課題の戦略的解決

技術の可視化とPEST分析を合わせ、将来実装するまでの道筋をえがくことで、実現に向けたボトルネックを導きだします。これにより、実装までに必要な課題と解決に必要な要素が分かるようになり、本分野に参入する各プレイヤー(国・自治体・企業・投資家など)の戦略立案に寄与すると想定します。

東京大学 プロフィール

(1)研究代表者・田中 謙司(東京大学大学院工学系研究科准教授)

東京大学大学院工学系研究科修了後、戦略コンサルティング、投資ファンドを経て、07年東京大学大学院工学系研究科助教、特任准教授、19年より現職。エネルギー、物流を中心にデータ活用型の社会インフラ・サービス設計の研究を行う。最近ではブロックチェーンを用いたP2P型電力融通の実証実験を実施している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書主執筆者、日本電気学会D部門技術委員、日本経営システム学会業議員、人工知能学会員、NIKKEI脱炭素化委員会委員なども担当。

(2)メインアドバイザー・江守 正多(東京大学未来ビジョン研究センター教授)

東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。1997年より国立環境研究所に勤務。国立環境研究所地球環境研究センター温暖化リスク評価研究室長、気候変動リスク評価研究室長、地球システム領域副領域長を経て、2022年より東京大学未来ビジョン研究センター教授(総合文化研究科 客員教授)、国立環境研究所地球システム領域上級主席研究員(社会対話・協働推進室長)。IPCC第5次、第6次評価報告書主執筆者。

デロイト トーマツ サイエンス アンド テクノロジー(DTST)について

DTSTでは、自然科学系の専門研究機関や大企業の研究部門での経験を持ち、現在はデロイト トーマツ グループ内でプロフェッショナルとしてビジネス領域の業務に従事するハイブリッド人材を集め、カーボンニュートラルをはじめとする様々な科学技術トピックについてチームを結成し、社会実装に向けた取り組みを続けています。

日本で2050 年のカーボンニュートラルを達成するためには、CO2排出量を実質ゼロにすることに貢献する技術の社会実装に向けた現実解(道筋)が必要です。政府の方針では、CO2排出削減およびCO2吸収に関する様々な技術を組み合わせて達成する目算となっていますが、今後は計画の具体化と共に、その進捗状況に応じて官民で推進する技術開発と社会実装の取り組みを堅実にブラッシュアップしていくことが重要であると考えられます。

DTSTでは、カーボンニュートラルに貢献する技術をCO2排出削減量のポテンシャルおよびCO2排出削減コスト、技術成熟度等の観点から整理して比較するリスト(技術リスト)の作成を試みており、現在第5弾までを公開しています*。第5弾では、掲載技術数を63件まで拡充するとともに、技術分野に関しても農業分野や再生可能エネルギーの熱利用、産業部門における電化技術を中心に拡張しました。今後は、有望な技術を順次加えて拡充し、データの精査と定期的な見直しを行うと共に、各技術の外部専門家レビューのさらなる拡大、及び統合モデル考慮による各技術の相互作用やダブルカウントの控除、各技術プレイヤーとの紐づけ等を行うことを予定しています。

なお、今回の共同研究ではDeloitte Analyticsのサービス提供を行うアナリストが本研究に参加することでさらなる評価制度の向上を目指します。
 

* 2050年カーボンニュートラル実現に向けた技術リスト第5弾公開:技術ソリューションのさらなる拡充とアカデミアレビューの実施

Deloitte Analyticsについて

Deloitte Analyticsはデロイトがグローバルに提供するサービスのひとつで、全世界で約13,000人、国内では約300名の専門家が従事する、アナリティクスを活用したコンサルティングサービスです。アナリティクス専門家の知見と、監査・コンサルティングによる深い業界知識が、実態に即した分析・実行可能なプラン策定を可能にします。デロイトのグローバルネットワークにおける豊富な事例と経験、そして監査法人トーマツの監査・コンサルティングを通じた業界知識を活用し、データ整備やビジネスインテリジェンスといった過去の業績を理解・評価する支援から、業績管理・将来の見通しを予測するビジネス予測モデリング、企業内外のデータを活用した新規事業・サービス開発支援を行います。また、先進技術の開発を独自に行う研究開発部門を有し、その成果を学会や論文で公開しています。

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