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大学経営を支援するマネジメントセミナー 開催報告
環境の変化に適応した大学経営について
2024年7月23日、今年も「大学経営を支援するマネジメントセミナー」を開催いたしました。第1部では文部科学省高等教育局私学部参事官錦泰司氏にご登壇いただき、第2部は当法人のシニアマネジャーの恩田と船木が担当いたしました。
【第1部】「私立大学を取り巻く現状と大学経営の諸課題について」
第1部は、文部科学省高等教育局私学部参事官錦泰司氏より、学校法人を取り巻く現状と諸課題をご紹介いただきつつ、今後学校法人が持続的経営に取り組む参考として、政府および文部科学省における各種施策等を解説いただきました。
最近のトピックとして、大学の統廃合の現状、時代と社会の変化を乗り越えるレジリエントな私立大学等への転換支援パッケージを含む令和6年度の私立大学等経常費補助金等の概要、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方等について解説いただきました。
また、私立学校法、学校法人会計基準の改正について、改正の概要に触れつつ、「学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループ」のセグメント情報の配分基準に関する論点スケジュールなどをご紹介いただきました。
さらに、学校法人の資産運用状況や資産運用の取組状況を紹介しつつ、政府による「成長と分配の好循環」を実現するための働きかけの一環として、アセットオーナーの運用・ガバナンス・リスク管理に係る共通の原則(アセットオーナー・プリンシプル)が2024年夏を目途に策定されることをご紹介いただき、その内容を解説いただきました。
学校法人運営に大変有用なお話を多くいただき、今後求められる学校のあり方を改めて確認できる貴重な場となりました。
【第2部】「私立学校法改正施行直前!必ず対応するべき3つの切り口」、 「変革する私立大学~学部の新設・改組、再編をテーマに~」
第2部は、環境の変化に適応した大学経営について、当法人の恩田佑一から「私立学校法改正施行直前!必ず対応するべき3つの切り口」をテーマに、改正法の施行までの9か月の間に対応するべき事項を、①ガバナンスの強化、②内部統制システムの整備、③会計監査人の制度化の3つの切り口をお示しするとともに6つの問いに答える形で、法改正対応を一つの「手段として」今後の大学経営に活かすための具体的な対応例をご紹介しました。
また、当法人の船木夏子から、「変革する私立大学~学部の新設・改組、再編をテーマに~」について、文部科学省としても「時代と社会のニーズに対応する私立大学等への転換パッケージ」として様々な支援を打ち出している中で、大学が中長期的に成長していくための取組みでもある、学部の新設・再編を進めるうえでの検討事項について解説しました。
具体的には、そもそもの前提として新設する学部が建学の精神に合致しているか、大学の既存学部の特色や強みが生かせるのか、これまで大学が築いてきたものが活かせる学部なのか、これらのことが役員間で合意されていることが重要であり、このような本質的な議論の前提として、競合校や先行事例等の外部環境分析やニーズ調査、財務シミュレーション等の調査・分析が重要であり、また、これらの調査・分析を中立な立場の第三者に依頼する有用性などについて解説しました。
学校法人は、多様なステークホルダーが存在すること、補助金等の公的な資金が投入されているという公共性の観点から、企業以上に丁寧な対話を積み重ね、環境の変化に適応した経営をしていく必要がありますが、それに加えて法人としての価値の向上や持続化が求められます。
今回は、環境の変化の一例として私立学校法の改正および学部の新設・改組、再編を取り上げましたが、私立学校法の改正を契機にどのように法人のガバナンス改革に取り込むか、そして内部統制システムの整備を通じて学校法人の価値向上にどう取り組むかはどの法人にも共通する課題かと思います。また、少子化に伴い増加する学部の新設・改組、再編に関する具体的な検討事項の解説もなされ、積極的な法人経営へのヒントを共有する充実した時間となりました。