最新動向/市場予測

地方公務員が足りない?あり方見直しが求められる地方公務員の現状と課題

地方公務員を取り巻く最新動向を理解する

”憧れの職業”であった地方公務員のあり方が揺らぎ、人材確保に苦慮する自治体が全国的に増加しています。地方公務員を取り巻く環境下で何が起きているのか、最新動向をお伝えします。

複雑化する課題に少数精鋭で対応が求められる地方公務員

少子高齢化を背景とした地方都市の空洞化、気候変動による大規模災害等、行政課題は複雑化・多様化しています。これらに対応するため、地方公務員には課題の本質を捉え、解決に向けて政策を立案して、地元企業等利害関係者を巻き込み、俯瞰した目線からプロジェクトを把握して実現する力が求められています。

その一方で、地方財政の悪化を背景に、行政のスリム化が求められています。このため、限られた人員体制で業務を遂行することが求められています。

一般事業会社であれば、事業に優先順位をつけ、優先順位の高い事業に注力することができるでしょう。ただし、行政は生活に必要不可欠な住民サービスを幅広く提供することが求められています。このため、課題に対する解決のハードルが高まる一方、業務の選択集中が難しく、結果として地方公務員の業務負荷が高まっているおそれがあります。

疲弊する地方公務員

上記を背景に、地方公務員の離職率は近年増加しています。特に若手地方公務員の離職が目立ち、その理由として主に以下が考えられます。

「か・き・く・け・こ」でわかる地方公務員の離職理由

公務員(国家・地方)の離職率の推移

出典:総務省「第2回 ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会(外部サイト)」資料をもとに筆者作成

上記の他、転職市場は売り手市場と化し、多様性をキーワードに一般事業会社において従来よりも地方公務員の活躍機会が高まっていることも、地方公務員の離職率が増加する要因と考えられます。このため、若手職員をはじめとした”地方公務員の魅力・やりがい”や職場環境を改善することで離職率を下げることが喫緊の課題です。

”縁の下の力持ち”として住民の暮らしを支える地方公務員

福祉、防災、地域コミュニティなどの「公共財・公共サービス」を自治体が提供しているからこそ、私たちは安心した暮らしを営むことができます。これらを提供する地方公務員は、自治体職員だからこそ味わえる魅力を持つ魅力的な職業と言えます。

【替えが効かない存在】
地方自治体は競合がおらずその地域に”唯一無二”の存在として、安定的に公共サービスを提供します。言い換えれば、他に替えが効かない職業と言えます。

【地域住民と距離感が近い】
地方公務員は地域住民との距離も近くコミュニケーションもとれるため、「ありがとう」と直接住民から言われることが実感しやすい職業と言えます。

【多様性をもとに成長できる】
”地域づくりのリーダー”として地元企業等を束ねる等多くの利害関係者との利害調整等を通じて多種多様な考えに触れることで成長の機会が広がっている職業と言えます。

地方公務員のあり方見直しに向けて動き出した国

地方公務員の安定的な確保に向け待ったなしの状況下で、総務省は「地方公務員のあり方」を見直し始めています。

具体的な総務省の取り組み

出典:総務省ホームページをもとに筆者作成
ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会(外部サイト)
社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会(外部サイト)

また、一部自治体では独自に地方公務員のあり方を見直す動きもみられます。

次回以降、地方公務員のあり方の見直しに向けてどのような取り組みが必要なのか、何から手をつければよいかを考察します。

お役に立ちましたか?