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公営企業(上下水道事業)の広域化について

公営企業の経営改革シリーズ(1)

公営企業が直面している財政や人的資本に関する問題解決の手法として、広域化があります。広域化の取り組みは近年推進されていますが、ここでは、広域化に関する国の動向、広域化の類型や検討の流れを紹介します。

1. 上下水道の広域化に関する国の動向

 上下水道事業を中心とした公営企業においては、人口減少等に伴う料金収入の減少、更新需要の増大、人材の確保・技術継承といった課題があります。このような様々な課題に対応するため、国は抜本的な改革のなかに「広域化」を位置づけ、その検討を推進しています。
また、上述の課題に対応し水道の基盤強化を図るため、水道法が改正されました(令和元年10月1日施行)。改正水道法においては、基盤強化の一つに広域連携の推進が位置づけられ、都道府県の広域的な連携の推進役としての責務が規定されました。
 このような流れのなか、各都道府県において水道事業における「水道広域推進プラン」及び下水道事業における「広域化・共同化計画」を2022年度までに策定することが国から要請されています。

2. 広域化の類型とその効果

 広域化は経営基盤や技術基盤の強化という観点から、地域の実情に応じて事業統合や共同経営だけでなく、管理の一体化等の多様な形態による広域化(新たな概念の広域化)が提唱され推進されています。広域化の各形態は下図の通りです。

 

図表1:広域化の類型

 広域化により期待される効果は、水需給の不均衡の解消や施設整備水準の平準化などに加え、経営及び技術両面での恒久的な事業運営に向けた運営基盤の強化に重点が置かれています。形態ごとの効果には、以下の通り挙げられます。

  • 事業統合
    施設整備、管理体制、事業の効率的運営、サービスなど広範囲に技術基盤や経営基盤の強化に関して効果が期待できる
  • 経営の一体化
    経営主体が一つになることで、施設整備水準の標準化や管理体制の強化、サービス面での利便性の拡大などの効果が期待できる
  • 管理の一体化
    管理やサービス面で一体化する業務内容に応じて管理体制の強化、サービス面などの各種効果が期待できる
  • 施設の共同化
    共同で保有する施設に関して、施設整備水準の向上、また緊急時対応等の面で効果が期待できる

出典:社団法人日本水道協会「水道広域化検討の手引き」平成20年8月27日 19ページ(外部サイト)

3. 水道事業の広域化の検討の流れ

 広域化の検討の流れは検討フェーズと実行フェーズにわかれます。検討フェーズとは、水道広域推進プラン(または下水道事業における広域化共同化計画)の策定を通じて、各事業体の現状・実態の把握や課題整理、広域連携パターンの検討や効果額算定等、広域化の可能性を検討していく段階をいいます。実行フェーズとは、検討フェーズの可能性調査を踏まえ、実際に広域連携を実行していくフェーズになります。それぞれのフェーズの流れを図で示すと以下の通りです。

 

図表2:広域化の検討の流れ

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 実行フェーズにおける各検討は具体的には以下のような項目が考えられます。

 

図表3:検討事項の内容

4. 広域化検討の方向性

 広域化は課題を解決するための一手法であり、地域の実情に応じたあるべき姿を検討していくことが求められます。あるべき姿を検討していく際にはコストの縮減(カネ)や施設統廃合の要否(モノ)に着目しがちですが、技術継承(ヒト)の観点も含めて恒久的に事業を実施することができる枠組みを整理することが求められます。
 また、当該検討においては、都道府県は推進役の役割を担う一方、各市町村(事業体)の積極的な参画が必要不可欠な要素となります。

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