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公営企業の官民連携について

公営企業の経営改革シリーズ(2)

公営企業が直面している財政や人的資本に関する問題解決の手法として、官民連携による民間活用があります。ここでは、官民連携の代表的な手法やメリット・デメリットを紹介します。また、受託者へのモニタリングの必要性について解説します。

1. 官民連携による民間活用手法

 公営企業の多くは今後厳しい財政状況になり、将来の財政負担が増すことが想定されています。また、財政面のほか、人員減少や技術継承といった人的資本に関する課題があります。そうした課題の解決方法の一つとして、官民連携による民間活力の活用が挙げられます。
 民間活力の活用には様々な手法があり、以下の通り挙げられます。

 

図表1:民間活用手法

※点線がPPP(Public Private Partnership)の範囲。民設公営、公設民営もPPPの一つと考えられています。

 なお、PFIと似た民間活用手法でDBまたはDBO方式というものもあります。

  • DBまたはDBO(Design-Build-Operate)
    施設の設計(Design)、建設請負工事(Build、発注する建設主体は公共)及び管理運営(Operate、DBO方式の場合のみ)を一体的に民間に委ねる形態。PFIとの違いは、建設主体や資金調達を公共が担う点。

 それぞれの関係を図示すると以下の通りです。

 

図表2:DBOとPFIの関係

2. コンセッション方式

 PFIの一形態としてコンセッション方式があり、これは、利用料金の徴収を行う公共施設の所有権を地方公共団体が有したまま、運営権を民間事業者に設定する方式です。民間事業者による安定的で自由度の高い運営を可能とすることにより、利用者ニーズを反映した質の高いサービスを提供することを目的としています。
 また、平成30年12月12日に公布された改正水道法により、地方公共団体が水道事業者等としての位置付けを維持しつつ、水道施設の運営権を民間事業者に設定できる方式が創設されました(水道法第24条の4)。
 なお、コンセッション方式を採用した場合であっても、地方公共団体がPFI法に基づき料金の範囲を事前に条例で定める必要があるため、無制限な値上げを抑制する法設計になっています。

 

図表3:PFI法、改正水道法を活用したコンセッション

※クリックで拡大 

3. 民間活用のメリット・デメリット

 民間活用のメリット・デメリットの一例を示すと以下の通りです。
 

図表4:民間活用のメリット・デメリット

4. 受託者へのモニタリング

 公営企業が業務を委託する場合、受託者が適正に業務を遂行しているかを、事業者としてモニタリングすることが不可欠となります。
 モニタリングの実施主体は公営企業ですが、その手法としては、①公営企業による直接モニタリング、②モニタリングの第三者への外部委託、及び③受託者によるセルフモニタリングとその結果報告が挙げられます。
 モニタリングの実施に際しては、委託業務の履行の確認と評価が必要であることから、委託業務の十分な理解が不可欠となります。したがって、当該業務の管理経験者のノウハウを活用したマニュアルの整備が重要となります。また、人員面や技術面から公営企業単独で行うことが困難な場合は、第三者を活用してモニタリングを行うことも有用です。

5. 民間活用の具体的事例

 民間活力の活用については、総務省が「水道事業・先進的取組事例集」、「下水道事業・先進的取組事例集」 (外部サイト)をまとめています。
 現在はPFIよりも包括的民間委託等の方法で民間活用を行う地方公共団体が多く、水道事業では、施設の運営管理・保守点検・水質管理を包括的に民間委託し、経費削減をしている例、下水道事業では、主に終末処理場の管理運営を包括的民間委託した例が挙げられています。
 PFIについては、まだ事例は多くないのが実情ですが、浄水施設等の更新・維持管理や浄化槽の整備などで活用している団体があります。

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