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デジタル技術を活用したアジア諸国子会社管理の高度化に向けた取り組み事例~業務の見える化、改善プランの立案から継続的な遠隔モニタリングへの活用~

APリスクアドバイザリー ニュースレター(2021年5月17日)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、アジア諸国では、行動制限、経済停滞、消費者行動の変化など経営環境に影響のある大きな変化が顕在化し、日系企業の事業活動に影響を与えています。経理管理業務においても、日本本社の年度決算発表が遅延した企業も多く見受けられ、主要因として、アジア諸国を含む海外子会社での経理・決算業務の停止、SSC/BPOの業務停止、リモート経理・決算が実行不可能であることが挙げられています。本稿では、多くの日系企業の事業運営上の重要課題である海外子会社管理、経理業務の効率化・高度化について、日本本社におけるデジタル技術を活用した取り組みの一例を紹介します。

COVID-19の経験を基に、経理業務の効率化、高度化におけるアジア諸国の海外子会社の課題として、①多くの紙書類 ②標準化・可視化されていないプロセス ③自動化の不足 などが挙げられます。

上記の課題において、プロセスマイニングの技術を活用して、イベントログを基に業務フローの可視化を行い、逸脱プロセスの発見や、処理件数・時間の定量分析を行い、業務上の問題点を迅速に特定します。当該デジタル技術を活用し、特定した業務上の課題に対し効果的な業務改善を行い、経理業務の効率化・高度化を実現していきます。

なお、プロセスマイニングとは、業務プロセスをマイニング(掘り起こす)という意味で、近年はITを使い、業務データを可視化することで業務プロセスを可視化するという文脈で使われています。

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このように、従前の経理業務改善アプローチと異なり、事実に基づきバイアスがかかりにくい調査、アナログとデジタルの施策の組み合わせ、継続的かつ常時のモニタリングを特徴としております。なお、タスクマイニングとは、操作ログを基にタスクの処理件数、時間の定量分析や処理状況の監視を行い、業務上の問題点を特定する技術です。経理業務を対象にタスクマイニング、プロセスマイニングツールを用いて現状を可視化し、検出された課題に対する打ち手を検討していきます。


<従前の手法とDeloitte Digital Accountingの比較>

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上図「①タスクマイニングによる業務内容・業務量の概要把握」では、タスクマイニングおよび経理目線での分析により、個々のメンバーの作業不効率とメンバー間の役割分担の偏りが、事実に基づく形で可視化できます。また、これまで外部から見えにくい、または、現場として無意識であった課題が明確化されます。


<タスクマイニングにより可視化された課題の例>

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「②プロセスマイニングによる業務手順把握、タスクマニング仮説検証」では、タスク・アプリ間でのつながりや個人間の連携にかかる不効率の可視化が可能であり、外部委託者や部署、メンバーにまたがる一覧化されにくい課題を明確にしております。
 

<プロセスマイニングにより可視化された課題の例>

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この可視化・課題把握の手法を使い、経理業務以外においても社内の様々な部門の業務支援や生産性やリスクの改善支援を可能とする恒常的なプラットフォームとして活用できます。下図がその代表例です。


<プロセスマイニングの活用事例>

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最近の導入事例においても、プロセスマイニングを用いた日常的な業務のモニタリングを通じ、手戻りが多い業務の特定をしたうえで標準手続きの導入とトレーニング実施が行われています。そのような活動から、手戻り作業の削減や工数削減に伴うコスト削減を実現した例や顧客満足度の低下原因となっている業務を改善することで顧客満足を向上させたこと、あるいは購買プロセスのモニタリングにより不正行為を未然に検知し、不正な購買や横領を防止した事例などが報告されています。ある企業ではERPの導入前に現状の業務を分析し、業務上の改善点を洗い出すことや新しいERPに載せ替えた際の効果を検証するような活用をしている例もあります。

特にアジア諸国における日系企業の経営においては、現地の業務の全体像が見えないことや、属人的な業務の内容がわからず、生産性向上や離職に伴うノウハウ継続が難しいため、抜本的な業務改革ができないことが悩みとしてよく聞かれます。また言語やコミュニケーションの問題で、購買業務に対する牽制を充分に効かせることが難しく、不正リスクの把握や対策の検討が十分に進まないという悩みも多く聞かれるところです。

また、現地法人においては、日本人駐在員が現地に勤務することで業務のリスクに気を配り、牽制を利かせていた従来のガバナンス方式が、COVID-19の状況による日本への帰国や、現地への再入国ができないことで大きな見直しを迫られる例が増えてきています。このような状況においては、データを活用した遠隔でのモニタリングの導入は非常に効果的と考えられます。

ただ、現地法人のシステムの導入状況が未成熟で、小規模なシステムがつぎはぎで運用されているケースも少なくなく、データ分析に難しさを感じる経営者も多いはずです。このような状況においても異なるシステムのデータを集約し分析することで、業務全体を端から端までのチェーンとして捉え、どこにボトルネックがあるのかを検証できることは有用ですので、そのような状態でもできることがある、もしくはそこに到達するためにこの際しっかり可視化/清流化をしておくことも肝要であると考えます。

プロセスマイニング・タスクマイニングはこのような問題意識に対して、データというごまかしできない対象を、指定する期間、範囲を置いて全量を分析し、人間が直感的に問題点を把握できるような形式で可視化できることから、現場の業務改善のみならず経営管理の高度化に非常に高い貢献ができる可能性を秘めたツールであるということができます。

デロイト トーマツ グループでは、日系企業のアジア諸国の海外子会社における子会社管理の高度化に向けた支援を、海外メンバーファームと連携し行っています。詳細については当グループのプロフェッショナルまでお問い合わせください。

 

本稿に関連する弊社サービスのご紹介

  • 分析ツール導入によるモニタリング体制強化支援
  • 月次・四半期・年次などの継続的データ分析サービス
  • プロセスマイニングツール導入支援

著者:森本 正一・岡本 保治
※本ニュースレターは、2021年5月17日に投稿された内容です。

アジアパシフィック領域でのリスクアドバイザリーに関するお問い合わせは、以下のメールアドレスまでご連絡ください。

ap_risk@tohmatsu.co.jp

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